全てなくなって強制リセットされてからが、僕のスタートだった
―始めに、クリエイターになったきっかけを教えてください。
Hayato:少し長くなるのですが、まず今の活動の前にギターを作る専門学校に通っていました。情熱大陸でやっていたのを見て憧れて。専門学校で勉強してギターを作ろうと思っていたのですが、楽器ってヴィンテージものがベストで評価されるんですよね。だから今の自分が作ったものが絶対にベストにはならなくて。それがわかった時にギターを作ることへの興味が少し減ってしまって。
だったら楽器を売る人になろうと思って、一度楽器の販売員になりました。その時のお客様からバンドに誘っていただいて、そこでの仕事を辞めて、バンドに専念することになりました。4年間くらいはバンド活動をしていましたが、人間関係が大変で疲れてしまって。そのタイミングがちょうどコロナ前だったので、職も音楽もなくなって一旦全部リセットされたんです。その時に、だれかと一緒にすることではなくて、一人で全部できることをやろうと思って、絵を描き始めました。
―すごく驚きなのですが、コロナ前までは絵は描かれていなかったのですか?
Hayato:そうなんです。もともと小さいころに褒めてもらえたのは絵を描くことでした。
そこから自分で絵を描くことは好きだなっていう認識はありましたが、周りを見ていると「アニメ絵=上手い」という認識があって描かなくなっていきましたね。アニメ絵を描いていたわけではないので。
社会人になってからは時々絵を描くくらいでした。
自分の環境が一旦リセットされて、自分の好きなことを探してみると、そういえば絵を描くことだったなって感じです。
―絵を習った経験はありますか?
Hayato:ないですね。昔は模写が好きでずっと模写をしていました。実は今も模写が得意で、その延長線で絵を描いています。
―現在の主な活動を教えてください。
Hayato:今はフリーランスで絵描きをしています。あと動画制作等の依頼を受けています。
パフォーマンスとしてライブペイントで絵を描いたり、DJのクラブイベントにも参加しています。
―活動の中でよかったと思う事を教えてください。
Hayato:家の中で1人で絵を描く事は向いていなくて。ライブペイントみたいに限られた時間の中で人に見られているような、制限のある縛られた空間で絵を描くほうが、その時感じたものをアドリブで描くことができます。自分の潜在意識の中で絵が描きやすくなるんです。
家で描いているよりも、もう一歩自分の中でこういうことができるんだという可能性に気が付けます。
それを次のライブペイントで新しい引き出しにする流れを組めているので、ライブペイントが性にあっていますね。
―ライブペイントで描かれる作品の準備はどうされているのですか?
Hayato:基本的に女性のイラストを描いているのですが、その画像を探すことから始まります。ピンとくるものがあったら、色味を加工して模写する。描きだしたら集中できるので、そこからいろいろ展開していきます。
―ではライブペイントの前にイメージしたものと、完成した絵が違うこともありますか?
Hayato:僕もびっくりするくらい変わります。サイケデリックなイベントだとすごくカラフルに、お寺とかだとシックな感じになります。
―自分でも出来上がりが分からないものを描くことがすごいです!
Hayato:そうなんです、なので荷物がすごく増えます(笑)
―苦労していることを教えてください。
Hayato:作品のクオリティを上げていくっていうのはもちろんありますが、自身のスタイルもある程度確立されてきているので、自分のクリエイターとしての地位を上げていくにあたって、自分の作品が何十万円としたときに、それを買ってもらえる層に自分が会いに行かないといけない。そこのギャップを僕が上手く活動して埋めていかないといけないというのが今の悩みです。
―実際どういった方が買われるのですか?
Hayato:もちろん絵を気に入った人が買ってくれることが多くて。
個展を開いた時にずっとその絵を見ていた人が後から買ってくださることもあります。
「内なる自分」を作品に
―女性をモチーフにされるのは何か理由がありますか?
Hayato:なんとなくですが、海外の女性って誰か特定できないというか。
ただただ美しい人だなって思うだけで。誰かというより人間そのものの象徴になってほしいです。
―モチーフを選択する時に、その方の背景や価値観を大切にされる方が多いと思うのですが、Hayatoさんはどうですか?
Hayato:僕は仏教が好きで。禅の姿勢ってあるじゃないですか。
禅って自分と座禅しながら向き合い続けることなんですけど、絵を描くってそれに近いものがあると思っていて。描いていくうちに没頭して、気が付いたら出来上がっていて。できあがった作品から、自分ってこう思っていたんだって知ることもあります。それが僕の中で気持ちが良いことですね。
人のモチーフをあてて、自分のイメージを取り込んで整理して、後で自分自身を確認するみたいな。
―HayatoさんのHPにも掲載されていた「内なる自分」というのは自分でも感じていない何かを作品を通して見てみるような感覚ですか。
Hayato:そうですね。
仏教用語でいうと末那識と阿頼耶識というのがあるんですが、末那識は僕が認識している僕で、阿頼耶識は呼吸や心臓が動いているなど、僕自身が意識していないことです。ライブだと阿頼耶識の部分が投影されます。自分の知らない自分を見つけることができるツールが絵だと思っています。
そういう意味での「内なる自分」です。
―音楽にはなかった感覚ですか?
Hayato:音楽ではそこまで掘れなかったです。音楽は理論があって、その縛りがあるので、その部分は向いていなかったです。絵が一番自由に感じる事ができます。
―Hayatoさんにとって絵を描くことは単に自己表現ではなく、他者に評価されたいという想いもあるのですか?
Hayato:あんまり他人の目は意識していないです。
ただ作品を作るにあたって、僕の好きなもの100%で作るということは意識しています。そこに他人の要素が入ると、自分のものではなくなります。
自分100%の作品が評価されることがとても面白いですね。自分と同じ感覚の人がいることを知れるので。だから作品を買ってくれた方には心の繋がりを感じています。
―売れるために今のトレンドを取り入れようと考えたことはありますか?
Hayato:ないですし、していないですね。どれだけイベントでテーマを与えられても、自分で解釈したものを出そうと考えています。
―作品を作る上で大事にしていることは何ですか?
Hayato:ライブペイントについてはパフォーマンスなので、その場にいる人が「お!」ってなる瞬間をたくさん残すことですね。立体作品も作るので、絵を描く以外のところの展開を作っていったりします。
せっかくパフォーマンスをやっているので、ずっとひたすら描くのではなくて、見せ場をつくってみんなを食いつかせる。最後になんかやばいねって思わせるような流れを自分が作っていかないといけないなと思っています。
―ただ作品を作るのではなく、パフォーマンスとして見せる場を作っているということですよね。
Hayato:そうじゃないと、お客さんはさっと見て出ていっちゃいますからね。制作過程の時間軸をお客さんも一緒に感じてくれたら、一個の作品をもっと見てもらえると思っています。
作者とお客さんの時間軸を体感ベースで一緒にすることが僕の目標です。
―今後やりたいことは何ですか?
Hayato:先程もお話したのですが、学生に仏教について講義したこともあるくらい仏教が大好きでして、その延長で自分の作品をお寺に奉納したいです。
なので、お寺の中でイベントをしたいとも思っています。僕がライブペイントをしていて、お坊さんが護摩行とかしているみたいな。友人に音楽関係の人もいるので、ライブペイントと音楽とお坊さんの修行を掛け合わせて、みんながただそこにいるだけって空間を作りたいです。
いかに短い時間の中でたくさんの情報を得るかっていう社会の中で、何も考えず没頭する時間ってすごく大事だと思っています。
それを作ってあげることによって、お客さんが自然とアートに興味を持ち、それで僕の作品を見てもらうことによって、もっと親和性のあるものができるのではないかと思います。
―作品だけでなく空間でも訴えかけるものがあるということですよね。最後に、ファンの方に一言お願いします!
Hayato:是非、作品を見る時にどこから描いたんだろうとか、何を使って描いたんだろうとか、自分の中で探検して見てほしいですね。