「2つの表現がセットで作品は完成する」Denさん

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高2までは絵が嫌いだった

―現在のアーティストとしての主な活動を教えてください。

Den:主に絵を描くこと、中でも水彩画をメインにしています。あとはイベントでライブペイントしたり、子供たちと一緒に絵を描くようなイベントやワークショップなどを主催したり。最近は展示させてもらう機会が増えてきました。個展とかもちょっとやっていきたいなと考えています。

―元々は油絵をされていたとお聞きしていたのですが、現在水彩画を主にされている理由を教えてください。

Den:油絵以外での表現方法に挑戦してみたいと思い他の画材を使っていました。

最近はコンテをカッターナイフで削って、粉だけ画用紙に落としてそれを指でちょっとこすってぼかすとか、水彩とはまた違う画材を加えたり混ぜたりしてみながらやっています。

―表現方法にあまりこだわりはない感じですか?

Den:制作をやっていく中で、その都度自分に合ったものを探しながら、自分の芯となる物に紐づけていってます。

―クリエイターを目指し始めたきっかけを教えてください。

Den:絵をやりたいって思ったきっかけは高校生の時、展覧会で発表した絵で賞をもらったことですね。そのとき初めて世の中と繋がったというか世間に自分のことを見せられた。身内だけじゃない、自分が全く知らない人が自分のことを評価してくれたっていう。そこに自己肯定感や、喜びをすごく感じられて。絵が自分を発信するためのものとして、徐々に僕に必要なツールになっていきました。

実は僕、高校2年生まですごく絵が嫌いでして、中学のときなんか絶対クラスに1人はいる典型的なうるさい奴だったんですよね。もう美術の授業で全然話を聞かないし。僕はずっとサッカー部で、そんな芸術なんて、みたいな感じでした。

とは言っても、なにかを表現するっていう事にはすごく関心を持っていました。映画がすごく好きで、いつか僕は映画の制作をしたり、映像をいじるような世界に入りたいなって思っていました。

あるとき高校の先生に相談をしたら、「映像を作るなら絵を描け」って言われて、気づいたら美術部に入っていました(笑)

―サッカー部から美術部に…?

Den:高校2年生からはサッカー部と美術部を兼部していました(笑)

その後は制作を並行しつつ、美術系の専門学校から大学に編入して教員免許を取りました。

今は支援学校で働いているんですけども、生徒たちの作品を見させてもらったときに、学校外のいろんな公のところで発表できる機会を作ってあげられないかなって思いました。身内だけじゃない、本当に開かれた場所で。

それが発展していって大きなイベントになっていくうちに俺もやりたいな、何で僕はこっち側(展示をサポートする側)なんだろうなって段々思ってきたんです。それも悪くはないけど、今度は作品を作る側でちょっと本腰入れてやろうって思って、今は作家をやっています。

2つ揃ってこそ作品は完成する

―Denさんにとって「話して表現すること」と「絵を通して表現すること」になにか違いがありますか?

Den:僕は「話すことでの表現」と「絵だけの表現」の2つがあって1つの作品だと思っています。こういう絵をどういう思いで描いたのかっていうことを話すと、「よりアートというものを身近に感じられました」って言ってくださる方もいらっしゃいます。僕自身もやっぱり作品の前に立ってその作品のことを話すことでやっとそこで作品が完成すると思っていますので。

―2つ揃ってこそ作品が完成するということですね

Den:そうですね。これは受け売りの話なんですけども、書道って漢字あるじゃないですか。

書道というのは書く道で、完成に行き着くまでの過程っていうところにやっぱこの価値はあるんやと。僕はまさしく絵もその完成してどうぞじゃなくてここに行き着くまでの経緯と思いがセットになって初めて作品になるかなって思うところがありますので。

―クリエイターとして活動していてよかったことはありますか?

Den:いろいろと敏感に感じられるようになってきたことですかね。

4月から必ず毎日1枚は絵を描いているのですが、それだけ描いていたら日常の中で人と出会ってお話させてもらった事や、今までなら曖昧で片付けていた考えだったり、受け取ること、捉えることを繋ぎ合わせることができてきました。

1個の出会いが自分の中で瞬間的に去っていくようなものではなく、1つ1つに意味を持つようになった気がします。

―1つ1つの体験や交流が感覚的にすごく濃く深いものになっているんですね。

Den: 自分の考えを大事にしてきたら、他人と比べなくなりました。 

何を大切にしているのかを自分に問いかけて冷静に考えられるようになってきました。

―制作する上で苦労されていることはありますか?

Den:「続ける」ことですね。続けるって1人じゃ難しいんですよね。でも仲間や応援してくれる人がいたら、背中を押してもらって前に進めることができるんですよね。 

あとは今後自分がどういう方向性で作品を発表するかとか、作品をどうしたら利益に繋げられるかっていうところに悩んではいますが、協力してくれる人が現れたりして少しづつ前進できてます。

―ご自身が描きたいものや、表現したいものはどんどん出てくるタイプですか?

Den:そうですね。僕が今メインで描いているのが動物なんですけど、これまで「なんで動物を描いているの」って聞かれたときに、「何となく」としか言えなかったんですよね。なんかそれがすごく嫌だったんです。でも最近わかったんですよ、僕が動物を描いてる理由が。

ある時こんな話を聞きまして。人の目を引く配色の黒色と黄色。その配色は例えばトラやハチだったりなんですけども、一説によると、ハチって人間がお猿さんだったときの敵対象だったんです。こいつらを叩いたり食べたりしたら危ないというのは、お猿さんの中で黒と黄色に対する共通認識であったんですって。今の人間にも本能的なところで黒と黄色は危ないという意識が残っているから、その色を見たら目を引くって。

それを聞いたときに多分、本能的な好みとは、自分でないそっちで何か見ていたものや気に惹かれるようなものや親近感が受け継がれているものなんだなと思って。

動物に気を惹かれるところがあるのは、自分の祖先が動物が身近にいたとか何か動物に関する経験が、今の僕に反映されているのかなって思っています。

―遺伝的な興味みたいな?

Den:そうですね。だからその人によって違いますけど、海の生き物より陸にいる生き物の方が何か親近感湧くとか、犬猫とかがすごく身近に感じるとかっていうところも、もしかしたらお猿さんが陸にずっといたからとか目に触れる機会が多かったからなのかも。

だからそういう遺伝的な興味もあるのかもしれないなと思っています。

絵も恋愛に似ている

―クリエイター活動をする上で大切にされていることを教えてください。

Den:作品を見る人のことを考えて制作するようにします。僕の好きなようにするのは、ある意味それはちょっと暴力的かなと思っています。作品は見る人もいるわけなので。作品を見て心地いいと思ってもらえるかどうか。

だから僕がもう少し筆を加えたいなって思ったところで、1回止めて引いて見てみることを大事にしています。自分主観になりすぎないように。

―相手がいるという事、相手の目線大切にされているんですね。好きなように描きたいと思うことはないのですか?

Den:それは、高校生のときにほぼ全てやりきっているんですよ。そもそも学生のときは人の目に触れることを気にしていなかったです。

―今後やりたいことはありますか?

Den:月に最低1回は展示の場、発表の場を持つことですね。そのためにもいつでも作品があるようにしています。日々作品が出来上がっていて、1日1枚完成させています。

絵ってある意味、人間関係や恋愛に似てるかなって思っているんです。同じことをネチネチやりすぎるとしつこくなってくるんですよ。自分が納得できないからってしつこく描いていたら、あとから見たときに重かったり、結局何を言いたかったのか分からなくなったりするので。なので、僕は制作する時間の中で最初に頭の中で作品を完成させるようにしています。

―完成形をイメージされて描かれることが多いんですね。

Den:そうですね。筆が進まない時もありますが、描かない=制作してないではなく、筆を持たない時間は思考を整理し描く事を明確にする時間です。 

―最後に、Denさんの作品が好きなファンの方へ一言お願いいたします!

Den:最近、僕の絵を購入していただいた方が何名かいらっしゃるのですが、本当にその人たちはラッキーです!数年後、同じ値段で買えることはもうないので(笑)それぐらいの気持ちで制作しています。

作品を何気なく目に入る場所に飾ってあげてください。この子たちは真っ直ぐにあなたにしかわからない事を問いかけているはずです。絵を通して自分の気持ちを確認してみてください。

本当に僕の作品を手にとっていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいです!

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