「いつから始めても遅くない」まきみちさん

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手探りで始めた作品制作

―現在の活動内容について教えてください。

まきみち:現在は個展が中心で、昨年から百貨店での展示にも参加しています。

あとは時々書籍の挿絵や装画の仕事をしたり、企業の商品のイラスト依頼を受けたりです。数は少ないです。

―どのぐらいの頻度で展示やイベントに参加していますか?

まきみち:グループ展も含めて今年は月に1回ほど。でもこうなったのはこの1、2年のことです。

―絵を仕事にしようと決心したきっかけは何ですか?

まきみち:夫の失業がきっかけになりました。

夫が失業して私も何かしなければと思いましたが、50歳を前にして、自分には「これが出来る」と言えるものが何もないことに気がつき、たまたま、絵に関係するラッキーなことが重なり、「これは絵を描きなさいと神さんが言うてはる」と思い込んで、スケッチを始めました。当時は「明日の生活をどうしよう」という切羽詰まった状況で、絵を描くことに心のよりどころを求めたのかも知れません。

そのためか「将来必ず絵でお金をもらう!」と決意しました。

夫の失業がなければ、今も絵を描くことは仕事ではなく趣味だったかも知れません。

それからは長時間居られるカフェを見つけてスケッチしたり、電車に乗り周りの人をスケッチしたり、ひたすら絵のスキルアップに努めました。

―現在の作品の方向性になるまでの経緯を教えてください。

まきみち:最初はいろんな絵を描きました。自分の絵が定まらなかったので、どんな絵を描いていいのかもわからず、手当たり次第描いてました。

耳鼻科のパートをしていた時は、理解のある同僚や先生の奥さんが絵を褒めてくれるのを良いことに、患者さんが少ない時はせっせとクマの絵を描いてました。それが後に絵本「くまのボウボウ」として出版されることになりました。

その後も色んな技法、画材を試しながら、今のスタイルの絵に辿り着いた感じです。

―主に黒と白と赤が絵に使われていますが理由はありますか?

まきみち:一つは彩色が苦手ということがあります。黒と赤の組み合わせは失敗がないので使うようになりました。

ただ、基本的に黒と赤という組み合わせが好き、ということもあります。

―画力を上げるために実際にやったことやおすすめの勉強方法はありますか?

まきみち:ある人に「こんな年齢からイラストって描けるでしょうか?」と聞いたところ

「1000枚も描いたら、なんとかなるんちゃうか?」と言われ、すぐにコピー用紙を1000枚買って机に置いて描き始めました。

とにかく1000枚、と思って描き始めましたが、量をこなせば上手くなるという自信になりました。

後は、色んなものを見ます。好きなイラストレーターのイラスト、おしゃれなポスターのデザイン、日本画、洋画、写真、陶芸、何でも見まくり、そこからヒントをいただきます。

譲れない想い

―絵を描くにあたって大切にしていることや意識していることはありますか?

まきみち:クライアントの希望がある仕事以外は、プロとしては考えが甘いかも知れませんが、「描きたい絵」を描くようにしています。

私は画歴が浅いのでまだ自分の絵が定まってない気がします。

けれど、必ず、自分が描きたい絵の方向に進んでいこうと思っています。

それが結果的に見た人の心に何か残せるようになれば、嬉しいし、そういう作品が描けるところを目指したいです。

―影響を受けたクリエイターはいますか?

まきみち:元々抽象画が好きで、具体美術の画家だったり、写真家だったり、陶芸家だったり、佐野繁次郎は大好き。イラストレーターでは村田篤司さんやジャン=ジャック・サンペのイラストが好きですし、影響は受けていると思います。

線、構図、存在感、大げさかも知れませんが、私の作品の血肉になっていると思います。

―現在、どうやってお仕事を取られていますか?

まきみち:本当にありがたいことですが、自分で営業するというより、ご縁でお仕事に繋がっています。

最初の仕事は、無料で展示させてもらってた喫茶店で私のイラストがブックデザイナーの目に留まったことがきっかけでした。その方から装画のお仕事をいただくことができ、それがイラストレーターとしての初仕事となりました。以来、少しずつ書籍の装画や挿絵のお仕事をいただくようになりました。

また、個展を見にきた方の会社から、ハンカチや扇子のイラスト制作を依頼されたり、出版社の方に声をかけていただき、絵本を出版する機会もいただきました。

―仕事が増えてきた際、どのような基準でお仕事を選ばれていますか?

まだ、お仕事を選べるほど仕事をしていません。

―クリエイターとして活動する上で不安はありましたか?またどの様に向き合ってこられましたか?

まきみち:経済的に不安がある時期もあったし、画材を買うためにパートで働いても来ました。

ですが、一番苦しかったのは、何をして、どこに向かったら良いかわからなかった時です。『絵を描く』という方向が決まってしまえば、そこに向かって努力するだけだったので、精神的にとても楽になりました。

―絵を仕事にしてよかったことと大変なことを教えてください。

まきみち:私の場合、絵を描き始めたのが遅かったので、若い人が絵の道を目指されるのとは違うかも知れませんが、「絵を仕事にしてよかったこと」というより、「絵を描く」という「好きなこと」を見つけられて、その道に進むことが出来て、本当に幸せだと思います。

絵のことで悩んだり苦しんだりすることもありますが、それも含めてとても楽しいです。

新しい出会いがあったり、新しい世界を知ったり、刺激的な毎日です。

大変なことは、とにかく絵を描く場所の確保です。

8坪の家のリビング兼台所が私のアトリエで、そこで何時間も描き続けています。一緒に暮らす夫と猫にはいつも迷惑をかけています。大変なのは私ではなく、夫と猫のほうかもしれません(笑)

―最後に、今後の目標や展望を教えてください

まきみち:失敗を恐れず、自分のやりたいことを厚かましく貫いて行こうと思っています。

この先死ぬまで上達し続けるよう、描き続けたいです。

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