絵は実験と似ている
―現在の活動内容について教えてください。
びねつ:MVの作成や雑誌の挿絵の作成、基本的にはそういったイラストのアートワ―クやちょっとしたアニメーション、ループアニメーションの作成を主に行っています。
他にも、自分で作ったグッズや様々な活動で得た知見も、別途それぞれに合ったプラットフォームで販売していたり、そこから繋がったご縁で、単純な制作活動以外の企画運営の活動などもしています。
―絵を仕事にしようと決心したきっかけや理由を教えてください。
びねつ:描き始めたのが社会人になって2年目のころですね。思ったよりも仕事が退屈というか、一様な日々が続いていくのに危機感を覚えて、何か新しいことを始めようと思ったのがきっかけでちょっと絵を描き始めたんです。
僕は大学は理系で研究活動をやっていたんですけど、絵を描くことは探求していく仮説を立てて実施をして結果を検証してみたいなところが似通っていたので、描くことがすんなりと自分の中にフィットしました。
仕事にしようと決めたきっかけは、2020年のコロナ禍ですね。僕がメインでやってた仕事が営業活動だったので、比較的外に目線が向いていましたが、この期間に自分をみつめる時間ができて、改めて絵を描くことをすごく大事にしていきたいなと思ったので、そこで決心がつきました。
―絵を始められたころから何年経過して決心したことになるんですか?
びねつ:僕が2017年に社会人になって社会人4年目でコロナ禍になったので3年くらいですね。
その期間は営業職で働きながら絵の活動をしていて、コロナ禍になってから絵の活動に本腰を入れました。活動として表に出始めたのは2021年って感じですね。
―絵が実験のステップと似ていたから絵を始められたとのことですが、どうやって絵に行き着いたのでしょうか。
びねつ:Twitter(現X)を結構やってて、絵が強いプラットフォームなので絵っていいなと思いましたね。
当時勤めていた会社は自動車やバイクを取り扱ってるところで、僕もバイクや車に乗っていることもあり、それをSNSで見ていたこともあったんですけど、家で完結するというかSNSの延長で完結するものが欲しいなと思ったんですね。
そこで、絵だと家での作業で完結するし、SNSでかなり盛り上がっていたので、やってみたいなって思ったんです。
—ピクセルアートという方向性をしっかり確立されたと思うんですが、その方向性はどうやって決めましたか。
びねつ:絵を描こうとしたときに、子供のころ没頭していたものってなんだろうなって考えたら、はじめてプレイしたゲームがポケットモンスターでそれがドット絵だったんです。
その記憶が強くて、ドット絵に興味をもって調べてみたらドット絵専用のソフトやアプリがたくさん出てきて、結構スマホで手軽に作業が出来たので、ドット絵をはじめました。
—絵を描くにあたって大切にしていることや意識していることを教えてください。
びねつ:描いてる最中に、自分自身がつまらなくならないようにしてますね。自分が楽しくない絵って見ていても多分楽しくないと思うので。
積極的に楽しいことをしていると感じながら作品を完成させていきたいと思っています。
—影響を受けたクリエイターはいますか?また、どんな点で参考にされていますか?
びねつ:ピクセルアーティストの豊井さんです。豊井さんが描かれるドット絵ってループアニメーションが多かったりとか、普段の生活でよく見かけるような町並みっていうのが多いんです。
僕もそういった町並みとかを描いたり、アニメーションもちょこちょこやっている中で参考にしたりしていて、僕の中に豊井さんのスピリットが流れてると勝手に思ってるくらい影響を受けています。
―作品のクオリティを上げるために実際にやったことやおすすめの勉強方法はありますか?
びねつ:クオリティを上げるための部分ごとの練習はあまりしていないです。
練習だったとしても、ちゃんと作品として通用するように『完成させる』ことが、僕の中で一番クオリティに繋がるのかなって思うんですね。
例えば色を綺麗に作品に表現するという課題を自分で持っていたとして、前に散歩道で見たきれいなサザンカの色幅が自分が持っていない表現の幅だから、サザンカを描くことが色を綺麗に表現する練習になるんじゃないかと思って、しっかり一つの作品に仕上げる!みたいな感じです。それが練習でもあり、本番でもあるみたいな。
―現在、どうやってお仕事をとられていますか?また仕事が増えてきた際にどのような基準でお仕事を選ばれていますか?
びねつ:基本的にはどんなお仕事でもお受けしています。でも、予算と期間、あと質の掛け算で釣り合いが取れていない案件や、今の自分には請け負えないような依頼になってくるとお断りします。
あとは、ターゲティングが本当に合ってるのかなって疑問に思う仕事もお断りしています。
例えば、僕は人物はあまり描いていなくて落ち着いたテイストのものが主なのに、エモさを求められたり、かわいい女の子がヌルヌル動くようなアニメーションをお願いしますと言われると『それは僕の仕事じゃない』と思うので。
基本的には、すでに知ってる方や私の作風を知ってる方からお仕事をいただいています。
―クリエイターとして活動する上で不安はありましたか?また、どのように向き合ってこら
れましたか?
びねつ:不安はずっとありますね。でもそれっていつでも生じるものだし、それなら不安があっても、自分はこれをやるって覚悟が決まれば、常に不安はあるけれど大丈夫だと思っています。
『やるぞ!』って決心したら、もう不安だとかって関係ないんですよね。
広がるつながり
―お仕事をされていて良かったことと大変だったことを教えてください。
びねつ:良い点は様々な方と関われることです。
例えば、グッズを作るとなったときも様々な法人様と関わるじゃないですか。
自分が会社にいたときはお得意先にしか依頼が出来なかったり、お得意先の話しか伺えなかったんですけど、様々なご依頼を通して色々な分野のお話を伺うことができるのが、すごくいいところだと思います。
大変なところは、依頼をいただいた会社の業界も知らなきゃいけないし、関係も知らなきゃならないし、それによって意識しなければいけない範囲が広がることが大変ですね。
―全く知らない業界からお仕事来てそれを引き受けようとなったときに、それぞれの業界の温度感の勉強ってどんな感じでされていますか。
びねつ:人に聞きます。取引先の方との打ち合わせ最中とかにも直接質問を差し込んだりとか、二言三言発言したら一つ質問するぐらいでちょこちょこ質問してくと、徐々に方向性を理解したり、修正出来たりするのでとにかく直接人に聞くようにしています。
あとは同業の友人とかもいるので、この会社の事知ってますかみたいな感じで聞いてみたり。見栄を張ったり、知ったかぶったりしても意味ないし、それで失敗する方がダメージが大きいですから。
不安もあるけど覚悟があるから大丈夫だし、ちょっと恥をかくけれど、知った方が得が多いことってあると思います。
―最後に、今後の目標や展望を教えてください
びねつ:ざっくり言うと、『みんなのためになること』をもっと増やしていきたいなと思っています。
自分が活動していく中で知識や、人とのつながりの大切さは身にしみて感じているので、それらを次世代に継いでいきたいです。
例えば、こういうイベントやコミュニティがあったらいいんじゃないかなって仮説を立てて、実際運営をやってみて、どうだったかを検証してブラッシュアップして回していくみたいなのを今、実際にやっています。
そういったたくさんの人のコミュニティという形と企画っていう形で具体的な行動をしながら、回数を重ねるごとにみんなで少しずつちょっとずつ階段を上に上がってくみたいな活動してるので、何か今後も続けていきたいなと考えています。