洋服ブランドからインスパイアされて、絵柄を一気に変えた
―現在の活動内容について教えてください。
わちち:現在は、ガーリーテイストなお洋服などをメインに、ファッションイラストを制作しています。企業様のプロモーションイラストだったり、時には塾のワークスペースなどのメインビジュアルイラストだったり。
あとは、配信者様のイラストなども、多く手がけさせていただいております。
個人としては、イベント出展などリアルイベントの露出を増やして、たくさんグッズ制作をおこなっていきたいなと思っているところです。
―絵を仕事にしようと決心されたきっかけを教えていただけますか。
わちち:昔から絵を描くのが好きだったのですが、それを『仕事』として見始めたのは、デザインの専門学校に入ってからでした。
学生時代から、個人依頼という形で配信イラストなどを手がけさせていただくこともあり、その延長線上で一度、就職もしました。
ですが、会社で色々な経験を積む中で『今後』について考えた時、やっぱり自分が得意としているジャンルのイラストを手がけていきたいと思ったんです。
何よりも、私自身が一番、自分の絵のファンであった、ということもあって。
今後も『自分らしい絵』を描いていきたいと強く思ったことが、現在に繋がっています。
―ご自身の作品の方向性は、どのように決められましたか?
わちち:私自身、最初はどちらかというとゲーム系のキャラクター制作をしていて、今の絵柄とは違うイラストを描いていたんです。
ですが、SNSで出会ったブランドさんがありまして…
『Treat ürself』という、今は本当に有名になったブランドさんなんですけど、当時はまだ個人でやっているような、小さな洋服ブランドだったんです。そのブランドさんの服が、すごく可愛くて。
そして『Treat ürself』さんが立ち上がったぐらいの頃から、『フレンチガーリー』という言葉がすごく浸透してきたんです。『ガーリー』というカテゴリの中から、ファッションの振り幅がさらに広がっていった印象でした。
でも当時、コロナ禍だったこともあり、なかなかファッションを外に出して行けない、という状態が続いていました。
だからこそ私は、それらを絵に起こしていきたいなと。
強いインスピレーションを受けて、「ガーリーなテイストでいこう!」と、絵柄を一気にガラッと変えたんです。
―偶然の出会いだったんですね。では、絵を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば、教えてください。
わちち:これはジブリの『崖の上のポニョ』という作品からインスパイアされたことなんですけれど。
定規などを使わずにフリーハンドで描く、というのを、すごく大切にしています。
『崖の上のポニョ』は、建物なども含めて定規を使われていない、フリーハンドで描かれている作品なんです。それによって、あたたかさが出るような作風になっていて。
私のイラストも、そういうあたたかみを感じてもらえるように、どれだけ細かいレースや装飾があっても、必ずフリーハンドで描くようにしています。細かすぎるものであれば、今はペンツールなどを使ってコピーされる方も多いと思うんですけど、私の場合はそれをせず、全てフリーハンドで。
絵をアップにして大きく見ていただいた時にも気づきがあるようなイラスト、というのを意識して、大切にしています。
『実物』を基に、頭の中で服を作る
―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?
わちち:イラストレーターとしては、『餡こたく』さんから影響を受けました。
『可愛い女の子』を描く方は多いと思うのですけど、餡こたくさんはその中でも、『ファッショナブルな女の子』を描く方なんです。イラスト本を開いた時にも、女の子の顔つきや体つきの可愛らしさ以上に、その女の子のファッションにすごく目を惹かれて。
ちょっとした装飾などの、細部から受ける「可愛いな」という刺激は、こたく先生から強く受けていますね。本当に可愛いんですよ。
―画力やクオリティを上げるために試したことや、おすすめの勉強方法があれば、教えてください。
わちち:これは学生時代、私がすごく尊敬する先生から教えていただいたことでもあるんですけど。
『絶対に実物を見て描く』ということは、徹底しています。
全てを想像だけで描くと、ちょっとした不格好さがどうしても出てしまう部分があると思うんです。
私の場合、お洋服を描いているので、やっぱりファッションに関わる方への敬意を示すという姿勢も大切だと思いますし。
レースひとつだったり、生地のディティールだったり。そういったところは、必ず実物を見て描くようにしています。
―絵の中のお洋服に使用されている装飾は、実際、実物に近しいものを持っていらっしゃるということですか?
わちち:おっしゃる通りです。
自分が持っている物だったり、持っていない物は調べたりもしているんですけど。
そういった『実物』を基に、頭の中で服を作って…という感じで描いています。
最終目標は、自分でブランドを作ること
―現在は、どのようにしてお仕事を取っているんでしょうか?
わちち:お仕事を取る、というのが私は本当に下手くそなので、もう、舞い降りてきたものをいただいているような形にはなってしまうんですけど。
SKIMAさんやココナラさんなどの中間会社さんに登録しておりまして、主に配信者様のご依頼は、そこからがほとんどになっています。
それから、企業様はInstagramからご連絡くださることが多いですね。
インスタに載せているイラストを、実際に見ていただいてのご依頼で。
あとは、2023年のデザインフェスタに参加させていただいたのですけど、そこで名刺をいただいてお仕事に繋がる…ということもありました。
なので、やっぱりリアルイベントの大切さも身に沁みて感じましたね。
―なるほど。では、お仕事を受ける時の優先順位はどう決めているのかも、教えてください。
わちち:そうですね…私は、プロモーションのお仕事によく声をかけていただくのですけど。
反面、絶対にしたくないと思っているのが、「自分が経験していないことをプロモーションする」ということです。
プロモーションは、本当に色々なお仕事があるのですが、中には美容医療系のものだったり、体に何かを注入したり…というものもあります。でも、そこは私には責任が取れないですし。
やっぱり、私自身が未経験ゆえに大事なフォロワーさんを傷つける可能性のあるものは、基本的にお断りしていますね。
あとは、体への無害を謳っておられる電子タバコなども、ご依頼いただくことがあるのですけど…自分の作風とは合わないな、と思う場合も、基本的にお受けしていません。
―わちちさんの作風は、Instagramとの親和性がとても高そうですよね。
わちち:ありがとうございます。でも実は、ちょっと伸び悩んでいます。
2022年ぐらいにアカウントを開設したんですけど。タグをつけて投稿してもなかなか伸びないなと思ったので、X(旧Twitter)を始めてみたら、インスタよりXのほうが伸びました。
インスタのフォロワーさんは今、私の場合、海外からの方がすごく多いんです。
私がデザインフェスタに参加した時、海外の有名なYouTuberさんが取り上げてくださって。お陰様で、海外のフォロワーさんがとても増えたんですけど、結果、私のフォロワーさんの60%以上が海外の方になっています。
今後は、Instagramのほうも改めて伸ばしていきたいですね。
―クリエイターとして活動する上で、不安に感じたことはありましたか。
わちち:最初の頃、伸び悩んだ時は色々と考えましたね。
この方向性で合ってたのかなとか…私の場合は、本当に急に絵柄をガラッと変えて、方向性も変えたので。
「イラストでもフレンチガーリーは絶対に来る!」って、当時すごく思っていたので、結局は突き進んで描き続けましたけど…。
数字が全てじゃないというのも理解はしていますが、やっぱり、見てもらうには人がいる、というところで、どうやったら伸びるんだろう、と試行錯誤していた時期はありましたね。
―では、イラストをお仕事にしていて良かったことはありますか?
わちち:「自分の思う『可愛い』は認めてもらえるんだ」と実感できたことが一番ですね。
自分が可愛いと思うものを、自分自身で認めてあげる、というのもすごく大事だと思うんですけど、それを誰かと共有できるっていうのは、本当に素敵なことだなと思っていて。
ネット上でも、褒めていただけるととても嬉しいんですけど…リアルイベントなどで生の声を聞くと、さらにすごく嬉しい気持ちになります。
自分がこだわって描いているような、細かな部分などを見ていただけると、本当に嬉しくなって「やめられないな」と思いますね。
直接モチベーションをいただける感じが、本当に「頑張ろう」って励みになります。
―逆に、イラストをお仕事にしていて大変なことはありますか?
わちち:そうですね…描き続けなければいけないこと、でしょうか。
描くこと自体、もちろんとても楽しいんですけど、やっぱりフォロワー様が増えるっていうことは、それ以上に期待されてるってことだなと、思ってしまうので。
数字に囚われたくはないんですけど…自分の中でも、「過去の作品を超えたい」というふうになってくるんですよね。
でも、そう思ってくると、やっぱり前以上にレースの描き込みをするようになる、とか。最終的には自分の力にも繋がるので、どちらかといえばポジティブな追い込み方かなとは思うんですけど、プレッシャーに近いものは感じます。
あと、私のフォロワーさんは海外の方がすごく多いので、ある程度は英語にも対応できないと、というのが最近の一番の悩みではありますね。
―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
わちち:最終目標は『自分でブランドを作る』というところです。
私自身がブランドからインスパイアされましたから、それを逆に届けたい。誰かに「いいな」と思っていただけるようなブランドを作りたいと、強く思っています。
今も「こういった服のブランドがあったら着てみたい」とお声をいただくことがありますので、それが実際に叶ったらいいな、そのための活動をしていきたいなと思いますね。
あとは、今年中にしたいのが、個展です。
グッズとか即売会ではなく、絵だけをメインで見てもらえる展示会には、まだ一度も参加したことがないので、力を入れたいですね。
他には、やっぱりリアルイベントに出て、自分のオリジナルグッズをたくさん作りたい、というのが今一番の目標です。