「物心ついた時から、絵のお仕事をしたかった」oroninetさん

index

人間の弱い面も、ポジティブに捉えられたらいいな、という感覚

―現在の活動内容について教えてください。

oroninet:基本的には、LINEスタンプの作成が中心になっています。
あとは、SUZURIさんなどでグッズを作ったり、似顔絵のアイコンをオーダーメイドで描いたり。
他にも、YouTuberさんのアイキャッチなどでイラスト提供もしています。

―絵を仕事にしようと決心されたきっかけを教えてください。

oroninet:本当にずっと、物心ついた時から、絵のお仕事をしたいと思っていました。
幼稚園ぐらいから「漫画家とかになりたい」と思っていたので、そのまま芸術系の大学に進んで、気づいたらイラストレーターになっていました。

軌道に乗ったのは、LINEスタンプのひとつがネット上で軽くバズってからですね。
有名な方が、私のスタンプを使ったLINEのスクリーンショットを載せてくださって。
そこから、徐々に徐々に伸びていった感じです。

―ご自身の作品の方向性は、どのように決められましたか?

oroninet:そうですね…『可愛い+弱い』というか。
人間の弱い面も、ポジティブに捉えられたらいいな、という感覚をベースにしています。

LINEスタンプって、使用することで、コミュニケーションが苦手な人でも、人と接しやすくなると思うんですよ。
言葉で言うとちょっとトゲトゲしくなることや、上手く伝わらないな、という時、代わりにスタンプで返しちゃおうみたいな。私も人と接するのが得意ではないのですが、迷った時に使えるコミュニケーションツールというか。

それと、少し生きづらさのようなものを抱えている人にも、「あ、同じようなことを思っている人がいるんだな」「その生きづらさも可愛い!」みたいな感覚で昇華してもらえたらいいな、という気持ちで描いていますね。
少し言い方が悪いかもしれませんが、ちょっとネタっぽくすることで自分を肯定してもらいたいな、という気持ちの方向性でやっています。

―人ではなく、小さな動物たちを描いていこうと思われたのは、何故だったんですか?

oroninet:人に一番「可愛い」と思ってもらえるものって何だろうと考えた時に、小さい動物かな、と思ったんです。
それに、対象が『人』だと、セリフをつけた時に、代弁ではなく『その人自身が発信している』という感じが強くなってしまうと思っていて。

でも、小さな動物がいることでワンクッションを置けるというか、コミュニケーションの尖った感じが、さらに柔らかくなるのかなと思ったりしています。

―なるほど。他にも、絵を描くにあたって大切にしていること、意識されていることはありますか?

oroninet:『弱い可愛いもの』を描きたいので、線が強すぎないように、というところは意識していますね。
『上手すぎない絵』というか…ちょっと柔らかい、ゆる~い感じに見えるように、何度も線を描き直しています。
綺麗に描けすぎたらもう1回描き直して、ちょっと落書きで描いたふうに見えるように。

あと、色味もあまりビビッドすぎず、パステル調で白を基調に。そのほうが、インパクトが強すぎないのかなと。
割と、文字のほうでインパクトが強いものを選んじゃうことが多いので。
だからこそ、絵のほうはちょっと柔らかい感じで描いています。

『ウラ面の自分』と『オモテ面の自分』をどこまで出していいのか

―影響を受けたクリエイターさんは、いらっしゃいますか? 参考にされた部分などもあれば、教えてください。

oroninet: 『可愛い』に全振りした部分で言うと、サンリオさんがやっぱりすごいなって思いますね。
それと、シルバニアファミリーさんにも今、かなり影響を受けています。

どちらも、「こういう世界観があるんだ」って、毎回テーマが色々変わっていくじゃないですか。本当に長い期間、何十年も続いているのに、同じものが出てこないのがすごいなと思っていて。ネタ切れしないというか。
なので、結構テーマとかは参考にさせてもらっていますね。

あとは…私は昔も今も、ギャグ漫画や、アングラ系の漫画が結構好きなんですけど、特に学生時代に読んだ作品は、精神の核になっているのかなと思っていて。

メンタルに影響を受けたのは、ねこぢる先生ですね。
一見、私の作風とは全然違うのですけど、ねこぢる先生は『子供と大人の狭間の残酷さ』のようなものを、すごく上手に描かれていて。冗談で言っていいことと、いけないことの狭間みたいなものを、漫画として本当に上手に昇華されてる方なんです。
その辺りは今も、LINEスタンプのセリフなどに若干影響を受けているかなと思います。

それから、ギャグマンガ家のうすた京介先生が好きで、セリフ回しなどは影響を受けていますね。
オノマトペを多用したり、ちょっと叫んでいるふうだったりという部分は、うすた先生の影響が核になっていると思います。

ただ、そういった『ウラ面の自分』と『オモテ面の自分』をどこまで出していいのか…という部分では、悩んでいますね。

私は、『メンタルの弱い人が本当に共感できるものを作れたら』という部分と、それから私自身もアイドルが好きなので、『推し活をしている方の代弁ができたら』という部分…この二つの方向性を大切にして、使っていただけるものを作ろうっていう気持ちが大きいんです。
言葉にならないようなことが、いっぱいあるじゃないですか。

だから、『可愛い』に全振りしても面白くないですし、ウラ面を出しすぎても、ただ尖りすぎるというか…嫌な気持ちになっちゃう人もいるのかもしれないので。
バランスをとるのが、すごく難しいですね。

―では、画力や作品のクオリティを上げるために試したことや、おすすめの勉強方法があれば、教えてください。

oroninet:絵を描く人の中では、私は本当に画力が低いほうだと自分で思っていて…

ただ、描いた枚数は、めちゃくちゃ多いほうだと思うんです。
幼い頃、3歳ぐらいからほぼ毎日絵を描いているような状態なので、そこは大きいのかなと思っています。

それと、落書きし慣れているからこそ、アイデアを思いつくスピードだけは早い。

画力に関しては、一応デッサン教室に通ったり、大学でも授業を受けたりしたんですけど。そうですね…これからも地道に続けていけたらいいなと思っています。

もう、過去の自分のスタンプを見たら、恥ずかしくて「ワーッ!」てなりますよ。
そう思うってことは、その頃と比べれば、画力もマシになっているのかなと思ったりはするんですけどね。

幼い時の自分に「仕事にできてるよ」ってめちゃくちゃ伝えたい

―現在は、どのようにお仕事を取っているんでしょうか? また、お仕事が増えてきた時、どんな基準で優先順位を立てておられるかも、教えてください。

oroninet:今は基本的に、全部のお仕事を受けさせていただいてます。

今後、もしキャパオーバーした場合は、その会社の方向性が、自分のやりたいことと重なっているというか、同じ考えの方と一緒にお仕事したいなとは思います。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか? また、その不安とどのように向き合ってこられましたか?

oroninet:私にとって、これが一番大きなテーマですね。

常に「いつ描けなくなるか」みたいな不安を抱えながら描いているんですよ。
「もう辞めたい…」と思う時もあるんですけど、描ける時は12時間、スタンプ40個ぶっ通しとかで描けることもあるんです。
でも本当に差が激しくて、駄目な時はどんなに描こうとしても、まともな線が描けない。で、1個も描けずに終わる。
そういう、自分の気持ちのムラが不安定なので、安定して続けていけるのかなっていう不安があるんです。

あとは、先の質問でもお答えした『方向性』ですかね。
このまま『可愛い・ゆるい』だけでやっていっていいのかどうか。もう少し、自分の深い部分を出してもいいのか。それで引いちゃう人がいたらどうしようとか。
もう少し色んな方向性で出したいなと思いつつ、受け入れてもらえないんじゃないのかな、という不安があります。
自分の『中心の部分』を出すことで、メンタルの昇華にはなるのですけど。
完全に描きたいものを描いているというよりは、ちょっと世の中に合わせた可愛いもの、みんなが好きになってくれるものを描こう、という気持ちでやっています。

向き合い方も、私自身、本当にどうしましょうと考えながら、その他の趣味を摂取しつつって感じで。
アイドルを推したり、映画を観たり、音楽を聞いてライブに行ったりするのが好きなので、その辺りで発散しつつ、すっきりした時に絵を描く、という感じで何とかバランスを保っています。

悶々とした時は、もう絵と関係ないことをしよう、みたいな感じでライブとか行って。
でもふと、アイデアをもらえたりもできるので、新しい感情になって描けたりもしますね。

―絵を仕事にしていて良かったことは、何ですか?

oroninet:私は元々、自己肯定感がめちゃくちゃ低いんですけど。
SNSで絵を上げたり、新しいスタンプを出したりという時期に、コメントや反応をいただけると、「描いてていいんだ私」と、ちょっと自己肯定感が上がりますね。
食べていけるぐらいのお金をいただけるようになった点でも、続けていて良かったなと思います。

やっぱり、喜んでくれる方がいると自信に繋がりますね。

あとは、幼い時の自分に「仕事にできてるよ」ってめちゃくちゃ伝えたいです。

―逆に、大変なことはありますか?

oroninet:同じ回答ばかりで申し訳ないのですけど、本当に、自分の不安定な気持ちとの向き合い方や、どこまで出していいかっていう悩みの部分ですね。

見てくださってる方とのコミュニケーションみたいな感じじゃないですか、イラストを描くことって。
だからこそ、どこまで出していいのか、どこまで受け入れてもらえるのかっていうのが、不安になります。

今後はもっと安定して、毎日描けるようになれたらいいなと思っています。

―最後に、今後の目標や展望を教えてください。

oroninet:今は、スタンプなどの『1つの絵』しか描けていないんですけど。
幼い頃からの「漫画っていう形で描きたいな」という想いが、ずっと心にあるので、いずれは漫画の形で出せたらいいなと思っていますね。

これも、どこまで出していいのか、どういう絵柄でいくのか悩みどころなので、別名義でやる可能性もあります。
結構『可愛い』だけでは済まない感じになってしまうと思いますから、今の作風を好きだと思ってくださっている方が「ワーッ!?」てなっちゃうのは、怖いので。
今の名義では、少し疲れちゃっている人や、心が不安定な人、あと推し活している人に向けて描いていますから。
「可愛い」っていう気持ちは、心の安定に繋がると思うので、そういう癒しに特化させているんです。

なので、別の名義では、自分のやりたいことを全部出す創作をやりたいなと思っています。

SHARE
  • URLをコピーしました!
index