ギャルの推し活が原点
―現在の活動内容について教えてください。
Bata零: SNSにオリジナルの『ギャル』をコンセプトにしたイラストを投稿しています。他にも、イベント出展でイラスト集を販売したり、ご依頼を受けてイラストを描いています。
現在、活動の割合としてはクライアントワークのほうが多いですね。自身の作品をもっと発信したい想いもありつつ、ご依頼を受けて描くのも好きで、ちょっとしたジレンマに苛まれています。
―なるほど。ちなみにクライアントさんは、どのようなジャンルが多いのでしょうか?
Bata零:VTuberやVsinger関連が多いです。
私自身VTuberがすごく好きで、登場時に「なんて素晴らしい概念なんだろう」と思っていました。
そもそも、ギャルを好きな理由が『自分が好きな自分を体現している』というところにあるんですよ。
同じようにVTuberって、例えば外見にコンプレックスがあったり、心身の性の不一致に悩んだりしている場合でも、自分の好きな見た目で活動ができるし、それを受け入れてもらえる部分があるじゃないですか。
それってすごく素敵だし、私が好きなことだなと思っているんです。
だからこそ、そういったご依頼を受けるのも好きで。
自分がデザインした方々もいるんですけど、同じ界隈の方に見ていただけて、お仕事もそこからの延長でもらうことが多いですね。
―イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。
Bata零:きっかけは、完全にコロナの影響でした。
絵自体は幼い頃から好きで描いていたのですけど、私は個人活動前から、現在も引き続き、グラフィックデザイナーとして会社員勤務をしているんです。
でもコロナ禍の時に仕事が減って、在宅の時間が増えて…結構暇な時間が増えたりして。
コロナ禍の初期の頃って、外に出たら死ぬ、みたいな感じだったじゃないですか。
その時に、人って死ぬんだなという、すごく当然なことに改めて気づかされたんです。
それで、自分が本当にやりたいことをしっかり見つめ直したいなと考えていった時に、「イラストレーターをやってみたい」「自分の世界観を作って、作家として活動してみたい」という想いを持ちました。
―そうだったんですね。元々好きで絵を描いていた状態から、どのようにグラフィックデザインのほうに転向されたのでしょうか?
Bata零:中学までは地元の学校に行っていたのですが、高校は「芸術系に一旦行って、それを生活の中心に置いてストレスにならないかを早い内に確かめておこう」と思い、京都の銅駝美術工芸高等学校(現:京都市立美術工芸高等学校)に行きました。
その学校は8分野の特別授業があって…陶芸や彫刻などの他に、デザインもあったんです。
全部ひと通りやってみた中で、私は文字のレタリングなどの『造形美』に惹かれました。
そうして色々なデザインや、過去の色々な有名デザイナーたちに触れたり出会ったりして、本格的にデザインの世界に興味を持った形です。
―ありがとうございます。では改めて絵を描くほうで活動を始められた中、ご自身の作品の方向性は、どのように決められましたか?
Bata零:これも、ひとつのきっかけがありまして。
最初、半年から1年ぐらい、どういう方向性でオリジナルの世界観を創っていくかを探っていた期間があったんです。
自分の絵柄や個性がなんなのかも考えつつ、一番は「作家として何をモチーフに描くか」に迷っていました。好きなものがたくさんあって、一番を決められないような時期でした。
そんなタイミングで、自分の近しい人間が依頼をくれたことがあり、当時参考になるものをWeb上で一緒に見ていた中で、やまんばギャルの方のSNSが出てきたんです。
私が「可愛い!」と言ったら、「え…?」とドン引きに近い反応があって。
私は小さい頃から「ギャル可愛いな」と純粋に思っていたのですけど、だからこそ引かれた時、逆に「え!?」と驚いたんですよね。
もちろん何に対しても、好みじゃないひともいる、ということは気づいていたんですけど…
自分の好きなものに対して、こんなにも近しい人間から、価値観が合わずネガティブな評価を受けている、ということを知ってしまって。
だったら、「私から世界はこう見えていてとても素敵なんだよ」と、私というブラウザを通して世界を見てもらうことができたらいいのに。、そしてそれを絵に描き起こせたらそれが自分の世界をシェアすることに繋がるんじゃないかと思ったんです。
キャッチーに言ってしまうと、ギャルの推し活から始まったみたいなところがありますね。
見たものをそのまま描く力と、見たものを自分流に描く力
―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。
Bata零:クライアントワークでは再現しきれないところもあるのですが、オリジナルで描いている時、私はエネルギッシュさを感じるキャラクターを描くことが多いんです。
そのキャラクターの、媚びない部分というか…強い意志や信念みたいなものがある、という部分を感じてもらえるように、気をつけていますね。
―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?
Bata零:アニメ漫画系統、特にジャンプ作品などは、小さい頃に真似してよく描いていました。
他にも、作家名を挙げられないぐらい、自分が見てきた『インターネットにいらっしゃる絵を描く方すべて』の影響を受けていると思います。
具体的なお名前をあげると、望月けいさんと、それーゆさんは特にそうですね。
あとはデザインの勉強をしている時、色々なデザイナーの方からも影響を受けました。
特に亀倉雄策さんという、以前オリンピックのデザインをされた方の影響も大きいです。
自分はグラフィックデザインも好きなので、背景などを描く時には、そちらのスキルが活かされていると思っています。
なのでグラフィックデザインの魅力も結構多岐に渡るのですが、ざっくりお伝えすると、色面の割り方や、造形の美しさによく惹かれるんです。
シルエットや形の綺麗さみたいなところに対して、「いいな」と思える方を参考にしていることが多いのかなと思いますね。
―では、作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?
Bata零:私は、画力には2方向あると思っていて。
見たものをそのまま描く力と、見たものを自分流に描く力が、恐らくそれぞれ別であると思っているんです。
いわゆるデッサンなどは、わかりやすい指標の一つなので、絵が上手いと言われがちだと思うんですけど…歪んで描いたりしても、それが素晴らしく魅力的に見える絵も、たくさんあるじゃないですか。
オリジナリティは、そういう部分に出てくることもあるのかな、と思います。
なので、基礎的な部分を鍛えたいのであれば、模写などの『見たものをそのまま再現できる練習』をするといいと思うんですよ。
その上で、オリジナリティの方面に関しては…
難しいのですが、『見たものを見たまま描かなくていい、という部分に気づく』ということが第一段階なのかなと思います。
ダリやピカソなど、いろんな名画の先輩たちからも色々学んで、「正しく描くことが、必ずしも魅力的ということではない」という点に気付くことが、重要だと思います。
自分の「好き」と同じ「好き」を持った方が、集まってくれる
―現在は、どのようにお仕事を取っているのでしょうか。また、お仕事を受ける際の優先順位などもあれば、教えてください。
Bata零:恐らく、SNSを見てくださる方からのご依頼が大半ですね。
特定の営業をしているというよりは、普段の活動がそのまま営業になって、そこからお声をかけていただく、ということがほとんどです。
仕事が増えてきた際の優先順位に関しては、もう「楽しそうかどうか」ですね。
あとは、クライアントと相性が合うかどうかだと思います。
―ちなみに、SNSへの投稿で気にされていることや、投稿スパンについてのマイルールみたいなものは、あるのでしょうか?
Bata零:今はあまり実現できていないのですが、オリジナル作品を投稿し始めた時には、1ヶ月毎日投稿していましたね。
その時はどんどん右肩上がりにビュー数が増えたので、今でも更新頻度はある程度大切にしたいと思っています。
あとは一応、毎回投稿する前に、どういうふうにサムネイルが表示されるかなどを非公開のアカウントで検証していますね。
それと、スマホの液晶で見るのと、パソコンのモニターで見るのとでは色の出方が全然違うので、まだちょっと解消はできていないものの、そこも気にしているという感じです。
―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか。
Bata零:不安は、ないですね。
「これをやってみたらどうなるかな」という検証をして、その結果を踏まえた上で「じゃあ次は違うアプローチでやったらいいんじゃないか」とか、そういうことを繰り返している感じなので…
不安がどうというより、「やってみたらいいんじゃない?」というタイプです。
―では、絵をお仕事にしていて良かったと思うことを教えてください。
Bata零:自分の「好き」と同じ「好き」を持った方がすごく集まってくれる、という部分を実感できたのが、めちゃくちゃ一番良かったなと思っていますね。
私は、原動力が『近しい人間から、自分の「好き」に対してネガティブな意見が返ってきてショックだった』というところにありますので…
自分と同じ「好き」を持った人がこんなにいるんだと知れたことや、そういう人からラブコールを受けたり、応援をいただいたりすると、元気になってやる気が満ちてきます。
―逆に、大変だと感じたことはありますか?
Bata零:確定申告かな(笑)
あと、クライアントからの要望に対しての、自分のオリジナリティの出し方のバランスは難しいなと思いますね。
普段から気にしている部分として、何でも屋さんにならない、という意識があるんです。
ある程度柔軟に対応する、ということはすごく強みだとは思うんですけど…
その上で、自分の色を表現して欲しくてイラストレーターさんに頼んでいる、という部分がクライアント側にはあると思うので、絵柄を寄せすぎたりして、誰でもいいみたいな絵にならないように、というのは気にしています。
こういう絵を描く人だからお願いする、と思っていただける存在になりたいですね。
―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
Bata零:直近の目標として、今年英語を話せるようになりたい、というのがあります。
というのも、結構海外の方に作品を見てもらうことも面白いなと感じているからなんです。
もちろん日本の方に見ていただけるのも嬉しいですが、ギャル文化に興味や好意を持ってくれている中でも、特に海外の方ってすごく「好き」をダイレクトに表現してくれる方が多いんですよね。
逆に日本にはない『ギャルの捉え方』をしている部分もあって興味深いですし、そういう人たちに絵を見てもらうのは、すごく面白いなと思っています。
絵に言葉はいらないからこそ、出会えた人ともっと話したいんです。