思い切った転身
―現在の活動内容について教えてください。
えびみりん:個別依頼を受けてイラストを制作したり、オリジナル作品を展開して販売したりして、フリーランスのイラストレーターとして活動しています。 ご依頼は個人、法人どちらからもご依頼をいただいていて、企業案件はLINEスタンプやミュージック関連が多いです。

―イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。
えびみりん:思いつきで絵を仕事にする方向に舵を切りました。絵を描くことは学生時代に一度やめていましたが、社会人になってから二次創作の絵を描き始めました。今ではインターネットが普及し、描く環境も整えやすくなってきたため、今の時代なら自分もイラストレーターになれるのではないかと思い、それまで勤めていた会社も辞めて、絵の世界に飛び込みました。
― 一大決心をされて退職されたのはどれぐらい前ですか。
えびみりん:大体3年ぐらい前です。学生時代に描くのをやめてから10年ぐらいのブランクを挟んだ後、二次創作活動を5年くらいしていました。その中でオリジナル作品も作りたくなり、『せっかくなら依頼をもらえるようになりたい』と思って気がついたら勤めていた会社を辞めていました。
可愛さにコーティングされた毒
―ご自身の作品のスタイルや方向性は、どのように決められましたか。
えびみりん:方向性をしっかり考えたことがないのですが、表現したい物はしっかりあります。それは『かわいい中に毒がある』というもので、自分の作品全てに共通しています。ここでいう毒というのは、ポイズンじゃなく闇の部分や人間の隠してる部分、欠点のことで、そういう部分を作品に含めて描いています。ただかわいいだけの絵じゃなくて、化粧のように表面にコーティングをしているけれど中に毒がある感じが好きで描き続けています。

―そのような表現をしたいと思われたきっかけや出来事、もしくはルーツはありますか。
えびみりん:女の子が表面だけ綺麗にして、かわいさを表に出していこうとする姿がすごく好きです。すっぴんがどうであれ、化粧して可愛ければいい。 化粧雑誌を見るのが元々好きだったので、持っていないながらにいろんなものを駆使して挑む姿を全面的に推しています。
―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。
えびみりん:イラスト全体のバランスと色です。イラストを遠くから見たときに意図しないイメージにならないよう、微調整をしながら制作しています。描くのが楽しくなりすぎると細かく描き過ぎてしまい、その部分だけ浮いてしまうので全体のバランスに注意して描いています。
私の作品に対してカラフルなイメージを持ってくださる方がいるのですが、実はそこまで彩度が高くないんです。むしろ彩度が高い色はできるだけ量を抑えつつ、彩度が低い色をメインに使って、多くの色を使っているように見せることを意識して制作しています。
―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?
えびみりん: 一番影響を受けているのは、FGOのキャラクターなどを描かれている黒星紅白先生です。 サモンナイトというゲームの一作目のときに初めて黒星先生を知ってからとても好きになって、参考にしたくて模写もたくさんしました。女の子の細さやバランスなどが参考になっています。
知らないものは描けない
―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?
えびみりん:『考えながら描くこと』と『完成させること』は大切だと思っています。資料を集めて、インプットして、アウトプットするという当然のことの繰り返しが、一番勉強になりますし、上達の近道になると思います。
例えば1枚の写真を参考にその構図を描こうとしても、そのたった1枚の参考画像だけでポーズを決めてしまうと上達しにくかったり、自分の壁にぶち当たっちゃったりするので、描くための資料はたくさんあった方がいいと思っています。インプットしてアウトプットできなければ駄目なので。
また、今の時代はインターネットに記事やメイキング動画があるので、勉強方法もたくさんありますが、自分が普段描かない手法も知識として知っておくのは大切だと思ってます。使わない技法だったとしても知ってるのと知ってないのでは、作品の幅が全然変わってきます。

―えびみりんさんの場合は作品を描かれるときに、資料はどのくらい集めていますか。
えびみりん:例えば自分のアイコンにもなっているゾンビちゃんだと、服装の資料と臓器の資料ですね。写真やイラストを集めて、それをインプットして、必要なものだけ選んで、描き起こしてしていく感じで描いてます。臓器に関してはイラストや写真、解剖学の図解などを集めて、ひとつの部位当たり10〜20枚ぐらい用意しています。逆に服の方が少なくて10枚以下のことも多いです。
なので、一つの作品を描くのに全部で20〜30枚は少なくても資料を集めてます。背景の有無も関係なく、キャラクターイラストとして描く場合もそのぐらいは集めますね。
―現在のお仕事の取り方や受ける際の優先順位などがあれば教えてください。
えびみりん:ありがたいことにお声かけいただく場合が多くて、お声掛けいただいたお仕事はできる限り受けたいんですけど、どうしてもご依頼が重なったりして選ばないといけないときは、面白さで選んでいます。自分が体験したことのない内容だったり、その企画の内容が『面白そうか』で判断します。なので、面白そうだったらスケジュールいっぱいでも、無理矢理ねじ込むこともあります。面白さには勝てないですね。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?
えびみりん:ずっと不安しかないです。でも、作品が見てもらえなかったとしても自分の絵が駄目だからとは思っていないです。まだ発展途上中なところもありますが、そこも含めて自分の絵が好きなので、不安をごまかすために、『自分の作品は人類にはまだ早かったな!』と思うようにしてて、言い訳しながら進んでいってますね。笑
―では、絵をお仕事にしていて良かったことや大変なことを教えてください。
えびみりん:完成したときに、クライアント側にすごく喜んでもらったり、作った作品を販売したときにお客さんにすごく気に入ってもらったりなどが1つあるだけでも、やっていてよかったなって思います。
大変なこととしては固定給ではないので、仕事がないと収入がないですし先の予定も見えないことですね。ただ、とても大変ではあるけれど、好きって一言を言われるだけでその不安がどうでもよくなっちゃうんです。『何とかなるか』という気持ちになれるので。
最悪、絵描きで生活ができないとなれば他の仕事やりながらすればいいし、大変なことは何とでもなることの方が多いので、この先も嬉しいことと楽しいことを優先したいです。

―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
えびみりん:自分が生み出したキャラクターを軸に、グッズやコラボ企画など、世界観を作って展開していくことを目標にしていて、『えびみりん』と言えばこの作品の人だよねって言われるようになるのが理想ですね。
そのためには自分の作品を知ってもらわないといけないですし、アンデット系の展開はもちろん、もう一つ系統を作っていく予定なので、その二つの世界で今後オリジナル作品を進めていきたいなと思っています。

