「絵本の裏にいただいた『頑張ってね』のサインが、すべての始まり」むらまつしおりさん

index

「あ、それでいいんだ」と背中を押されて、肩の荷が下りた

―現在の活動内容について教えてください。

むらまつしおり:2025年の後半くらいからは、『三頭身』のグッズ販売、イベント出展がメインになっています。
現在ちらほらと、商品パッケージやコラボグッズなどのクライアントワークもさせていただいています。

それ以前は、個人の方の似顔絵を描くところから活動を始め、他にも『三頭身』ではない、汎用的なシンプルな絵柄で、書籍やWebなどのクライアントワークをお受けしていました。

―紆余曲折を経て現在の『三頭身』の活動にたどり着いたということなのですが、似顔絵を描き始めてから今に至るまで、どれくらいの期間があったのでしょうか。

むらまつしおり:私は2021年の3月まで、特別支援学校の教員の仕事をしていたんです。
でも4月に仕事を辞めて、以降は個人の方からの依頼で似顔絵やアイコンをひたすら描きつつ、毎日SNSに絵を投稿をする、という時期を過ごしていました。
そうしましたら、その年の12月に初めて書籍のイラストのお仕事をいただきまして。

そこから、書籍やWebなど、企業様や個人事業主の方からの依頼が次第に増え、2022年の12月に、初めて『三頭身』のイベント出展をおこないました。
以来、イベント出展を繰り返し、2024年、2025年と出展数がどんどん増えていって今に至る、という感じですね。
昨年の2025年は、対面販売を年間33件おこないました。
かつ、対面ではない、ポップアップなどの委託販売が7件ほどありましたね。初めは自分で応募する形式のイベントを見つけてはひたすら出展していたのですが、出展回数を重ねるうちに百貨店催事やPOPUP企画に声をかけていただけるようになり、お陰様で、現在は忙しくさせていただいております。

―ありがとうございます。では、絵をお仕事にしようと決心したきっかけを教えてください。

むらまつしおり:絵は元々ずっと好きで、幼い頃から描いていましたし、教員になると決める前も、イラストで仕事ができたらいいな、という想いはありました。
でも、周りに1人もそういう人がいなかったので、絵で仕事をするというイメージが全く湧かず、できないと思っていたんです。
ですから絵ではなく、もう1つのやりたかった仕事である『先生』を選んだのですけれど、勤めて6年目ぐらいで本当に精神的に疲弊してしまって、続けられなくなってしまったんですよ。

それで「次の仕事をどうしようかな」と考えた時に、改めて「絵を仕事にしたいな」という考えが浮かび、でもやっぱり無理だなという想いもすごくあり…
なので、最初から絵を仕事にするというよりは、まず在宅でできる仕事を探し始めたんです。時代的にも、ちょうどコロナ過で在宅ワークが打ち出されていた時期でしたし、Webデザインとか、コーディングとか、そういった方面だったらできるかな、と。
でも、壊滅的に向いていませんでした。
もう、収入面がすごく不安だったのですけれど、そんな時、同じタイミングで仕事を辞めていた夫がすごく軽い感じで「じゃあ、しおりの来年の年収は20万くらいかな」と言ったんです。冗談だったと思うのですけど、お陰で私は「あ、それでいいんだ」と思えて。
それならバイトでも賄えるし、それくらいの気持ちで始めてみるのもいいのかもしれないと、背中を押されたというか、肩の荷が下りた感じがしました。
そこでようやく、「絵をやってみるか」と活動を開始した、という感じです。

―なるほど。そうして、当時も商業でのお仕事も受けておられたということですが、そこから改めて『作家活動』に移行されたのには、どういった流れがあったのでしょうか。

むらまつしおり:元々、絵を描くなら商業で、本の挿絵や表紙、広告などのお仕事をしたいという憧れがすごくあったんです。
なので、当初は『三頭身』を仕事にする気は全くなく、『三頭身』は自分の心の拠り所というか、お金のことを考えなくていい絵みたいに、1つの趣味として持っておきたかったんですよ。
そのほうが、どちらも楽しいから、どちらもやっていきたい、と思える時期もありましたし。自分の好きな絵を描いてイベントなどに出て満たされる時間もあれば、力を入れて集中的に依頼を受ける時間もあり、両方あるのがいい、と。

でも、続けていく内に『三頭身』を描いている時のほうが、心が落ち着くというか、自分の満足度が高くて、すごく幸せだなと思う瞬間が多かったんです。
なので、この気持ちを大事にして『三頭身』1本に絞ってみるのもいいのかな、と思い始めました。
とはいえ、まだ完全1本に絞る勇気はないので、今は「他は断ります」というわけでもありませんから、比率を増やしてみよう、と昨年の半ばから始めた感じです。

『三頭身』の出展は、それまでは自分が個人として出たくて出る、という結構自由な感じでやっていたのですけれど…
百貨店さんなどからお声がかかり、そういった中の一員として出るようになってからは、売り上げなどについても考えることが出てきました。
初めは、お金のことを考え出したらしんどくなるのではないか、と思っていたのですけれど、最近、本当に「欲しい」と言ってくれる人がいるということが、きちんとわかるようになってきましたので。
以前は、物を売りつけることが苦手、という意識がありましたが、今は、本当に欲しいと言ってくれる人がいて、その人に喜んでもらえるのであれば、きちんとやらなければ、と考え方も変わってきたところなんです。素敵な機会を与えてくれる企画運営の方々に貢献したいという気持ちもあります。
お陰で今は、もう少し胸を張って『三頭身』を出していこうかな、という気持ちになれてきました。

―ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?

むらまつしおり:技法とかのことで言うと…私は、美術系の高校や大学などには行っていませんから、水彩などを趣味ではやっていたのですけれど、絵の具を使ったり、それを続けたり、ということができず…
結果、消去法みたいな感じで、自分ができることから始めての今、という感じです。

かつ、今のシンプルなスタイルになったのは、教員を辞める少し前の時期に、何かしないとな…と考えた時、毎日SNSに絵を投稿しようと思ったことがきっかけでしたね。
毎日の投稿になると、描き込んだ絵では絶対に続かないな、と。でも、挿絵などを描きたかったものですから、最小限の線で人間だとわかるタッチを1つ作りたいな、と。
あと、毎日時間がなくても、少し気持ちが落ち込んじゃったとしても、1人は描ける、というすごくシンプルなタッチでやろう、と考えたのが、始まりでした。
なので結構、最初から今のような感じでしたね。

とはいえ、最初に毎日投稿したいなと思った時には、画風が3つあったんですよ。
1つが『三頭身』で、もう1つが、それこそ書籍などにも使われやすい人間の頭身のイラストで、あと1つはエッセイイラスト、みたいな。

最初にぐんと伸びたのが、エッセイのアカウントで、一番お仕事をいただいたのが、シンプルで汎用性の高いイラストのアカウントでした。
『三頭身』は本当に、ずっと淡々と続けているだけのアカウントだったんですよね。
お仕事につながることはほとんどなかったのですけれど、だんだんとアカウントを見てくれる方の数は増えていき、今はトップに来ている、という感じです。

「喜んでもらいたい」も含めて、自分のために絵を描く

―絵を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。

むらまつしおり:前職の時に一度、かなり体調を崩した、というところがあるので、やっぱりそうなるとすごく嫌だというか…
好きなことをやっているのに、絵を描いてしんどくなるのだけは避けたいです。
なので、最初からずっと、自分のために描いているという意識を強く持っていますね。

自分のためというのが、最初は本当に自分だけを喜ばせるための自己満足として描いていたのですけれど、今は人に会ったり、見てくれたりする方がいると、その人達に喜んでもらいたいなという感情も出てきています。
ただ、それも結局、自分が喜ばせたくて描いているから、自分のために描いていることに変わりはないじゃないですか。
だからこそ、その『軸』というか、私は私を喜ばせるために、自分を大切にするために、自分を幸せにするために描いている、というところを忘れないようにしています。
その軸がぶれると、やっぱり、どうしたら売れるんだろうとか、ちょっとよろしくない方向ばかり気にしてしまうようになるので、それは避けるようにしたいですね。
ちゃんと、今描いていて楽しいかとか、描き上がったものを見て幸せかな、という部分は、確認するようにしています。

―では、影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?

むらまつしおり:尊敬しているクリエイターさんは、うのきさんというイラストレーターさんと、『おひげのポン』を描いておられる、かなざわまことさんです。
うのきさんは、私が絵を頑張りたいなと活動を始めた時から拝見しています。作品が可愛くてユーモラスで魅力的なのはもちろん、とても活動的な方で本当に尊敬しています。SNSに上げられた熱い言葉にも、いつも勇気をもらっています。

かなざわさんのおひげのポンちゃんは最初、うのきさんが「おひげのポン」ちゃんの絵本を紹介していたのを見て「可愛いな」と思い、そのタイミングでかなざわさんがイベントに出ておられたので、行ってみた、というのが始まりです。
そうして、かなざわさんご本人からおひげのポンの絵本を購入した時に、ちょっとお話しができたんです。私も絵を描いているんです、みたいな話を聞いてくれて。
そこで「最初はポストカードだけとか、ステッカーだけでもいいから。格好悪くてもいいんだから、絶対に出たほうがいいよ!」と言っていただいたんです。
当時の私は、自分がもしイベントに出るとしても、ずっとずっと先のことだと思っていました。
でも、その時にそんなふうに言ってもらえて、絵本の裏にサインと一緒に「イベントがんばれ〜!!」という言葉をいただいたことで、「これはもう次回出なきゃ」と思い、「出ます」と宣言して、出た、というのが初めてのイベント出展でした。

なので、すごく恩人というか、お陰様で今があるので、お2人の活動を拝見して、勝手ながらいつも励まされています。

―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?

むらまつしおり:最初にしたことが、私はやっぱり『本の絵』が描きたかったので、本屋さんに通って「いいな」と思った表紙とかをとにかく見る、そしてそのイラストを描いた方を調べて、真似して描く、ということでしたね。

やってみると、すごくシンプルなイラストでも、真似をするのはすごく難しくて。
でも、バランスが取れない、という問題に直面すると、人体の構造がわかっていないからこんなにもバランスが悪いんだ、とか、パースがわかっていないからこんなに違和感のある物体になるんだ、ということにだんだん気づくようになっていったんです。
そこから派生して、「この絵が描けるようになりたいから、人物クロッキーをやってみよう」とか、「説得力のある物の絵が描きたいから、パースの絵を練習してみよう」というふうに広げていった感じでした。

やっぱり「こういう絵が描きたい」と具体的に考えると、何をしたほうがいいっていうのが見えてくると思うので。
その時その時の、描きたいものに合わせて練習を探してやっている、という感じです。

一時期ずっと続けていたのは、人物クロッキーですね。
クロッキーは、1回2回だと全然実感がないのですけど、何ヶ月か続けると、急に全然違うように見えてくるというか、わかってくる時があるんですよね。
今はやっていないのですけれど、私自身、最低1年は続けていたかなと思います。
なので「絶対これができるようになりたい」と思ったら、継続して続けないと身にはならないな、とも思いました。

あと、上手くなる前って、絶対に描けないわけじゃないですか。
それまで中途半端に描けていた分、上手に描けないことにストレスを感じますし、それまで描けず逃げてきたものを描くとなると、絶対に下手で嫌だ、みたいな気持ちが出てしまいますけど。
でも、それを経験することで上手くなる、ということも、練習を繰り返す中でわかってきたので、苦しむことへのネガティブなイメージが次第に少なくなっていきましたね。
練習には苦しいものがあるんだな、と自覚しておくと、結構はかどるなとも思いました。
絶対に上手くなるから大丈夫、と。そのマインドでメンタル面がかなり助かった部分はありますね。

想像も、挑戦も、絵を描くことも、とにかく楽しい

―現在は、どのようにお仕事を取っているのでしょうか。また、お仕事を受ける際の優先順位などもあれば、教えてください。

むらまつしおり:その辺りは明確にないというか、探り中なのですけれど…
『三頭身』の前にメインでやっていたクライアントワークでは、リピートが一番多かったなと思います。一度仕事をしてくださった編集者さんやデザイナーさんが、もう一度依頼をくれる、というのがどんどん増えていった形でしたね。
なので、お仕事を取るという営業をしていなくても、知っている方が声をかけてくれる、というパターンが多いです。

でも、イベント出展をどんどん増やしてしまったので…
イベントってもう、何ヶ月も先の予定が埋まっていくじゃないですか。
なので、時間的に受けられないことが増えてきて、時間があったら本当にやりたいけれど時間がないから断る、という基準で次第にそちらのクライアントワークを断ることが増えてしまいましたね。

『三頭身』のお仕事は、イベントに出た時に見てくれた企業様が声をかけてくださったり、ご自身で雑貨屋を運営している方が「うちに置きませんか」と声をかけてくださったり、他にも「今度こんなイベントがあるんですけど出ませんか」と声をかけてくださったりとか。
そんなふうに、『三頭身』はイベントとSNS経由でのご依頼が多いかなと思います。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?

むらまつしおり:考えてみた結果、3つあるのですけれども。

1つは、お金の不安です。やっぱりそれが最初大きかったので、生活費をすごく下げました。
安いアパートに引っ越して、買っているものとかもきちんと金額が見えるようにしたり、サブスクを解約したり。次にいくら必要かがわかると、これぐらいなら最悪バイトをすればいける、というところまで持っていって。
そこが明確に見えるようになると、割と大丈夫でした。

2つ目が、仕事をもらえたとしても今後続けていけるか、という不安ですね。
これに関しては今も不安なのですが、1つ1つの仕事やイベントに誠実に向き合ってやっていれば、それが自信になるというか、安心材料になるな、とも思っています。
手を抜いてしまったりすると、それこそもう、いつ切られてもおかしくないと思いますし、負い目も出てしまいますけれど、本当にできることをしたし喜んでもらえるように努力した、という自負があれば、まだ自分の中で安心できるので。
当たり前のことなのですけれど、1つ1つきちんとやる、ということを大切にしています。

最後の1つが、ファンの方や、今「好き」と言ってくれている方が、いつまで傍にいてくれるのだろうか、という不安ですね。これも、常にあります。
ただ、イベントに出て直接会って顔を見ると、すごく嬉しくて安心するので、イベントに出ることでかなりの不安軽減になっています。会場で直接声をかけていただけたり、SNSでもコメントやDMなどをいただいて人のあたたかさを感じられることで色々回復するので、気にかけてくれている方には本当に感謝しています。

―ありがとうございます。では、絵を仕事にしていて良かったと思うことを教えてください。

むらまつしおり:やっぱり、楽しい、ということですね。
お陰で、メンタルが安定している時が多いです。

「こういうタッチをやろうかな」とか、「こういうお仕事ができるようになりたいな」とか、できていない時点でも想像するのがすごく楽しいんですよ。
新しいことにも結構身軽に挑戦していけるので、自分で決めるとか考えるとかができると、本当に楽しいです。
もちろん絵を描くのも楽しいですし、人に見てもらえたら本当に幸せだなと思うので。
とにかく、楽しいです(笑)

―逆に、大変なことはありますか。

むらまつしおり:時間の配分が難しいことでしょうか。
どうしても、朝起きてから夜寝る直前までずっと仕事の時間にしてしまうので…それを前提で仕事を受けたりしてしまうことがあるのですけれど、そうすると、全く他のことができなくて。
娯楽というか、落ち着く時間が1日の中に全くない、みたいなことが続く場合がありますから、そこが今の課題ですね。
人間活動がちょっと薄れてしまうというか…
自分自身もそうですけれど、周りの人とか家族とか、もっと大切にしたいものもいっぱいあるよな、と最近我に返っているところです。
詰め込みすぎず、やっぱり余白の部分も必要ですよね。

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。

むらまつしおり:今年(2026年)は、初めて『三頭身』で営業をかけることをやっていこうと思っているんです。
これまでは、自分が生み出したもので好きにやる、ということを大事にしていたのですけれど、その軸は持ちつつも、企業さんとかと繋がってみたら、きっと自分一人ではできないことができるじゃないですか。
そういうふうに、『世界』をちょっと見てみたいなと思っています。
明確にこの仕事がしたい、とかはまだ、わからない部分もあるのですけど…
少し甘い考えかもしれませんが、まずは商談会に出て、見つけてもらえたらいいなと思っています。何というか、「仕事を依頼できる人」としてのコマの中に入りたいですね。
まずは、その辺りからやっていきたいなと思っています。
今はイベントに出向くことがほとんどで、イベントを経由しないクライアントワークの時間が少ないのですけれど、そこの比率を上げていきたいな、そうなるといいなという感じです。
あと、初めての個展が10月に決まっているので、納得のいく表現ができるように作品とも向き合っていきたいです!

現在販売中の
むらまつしおりさんの新着グッズ

SHARE
  • URLをコピーしました!
index