挫折を乗り越え、イラストレーターとして歩み始めた道のり
―現在の活動内容について教えてください。
hachimitsu:今はフリーランスのイラストレーターとして活動しながら、企業にもイラストレーターとして勤めています。
その企業というのが大阪のテレビ局の制作会社で、読売テレビの子会社になります。そこでは自分の色はあまり出せないのですが、番組で使われるイラストを日々描いたりしていますね。
現状は兼業という形ですが、ゆくゆくは個人のイラスト、hachimitsuとしてのイラストでどんどんいけたらなと思っています。
―フリーランスとして活動を始めたのはいつ頃からですか?
hachimitsu:フリーランスの方が早くて、令和になったときぐらいからです。「やります」と言い出したらもう始まった、みたいな感じでしたね。
最初はお仕事も少なかったのですが、少しずついただけるようになって。そこから2年ぐらい経ったときに、たまたまテレビ局の求人を見つけて応募して、今の兼業になっています。
―イラストの活動はどんな内容が多いですか?展示会とかクライアントワークとか。
hachimitsu:基本的にはクライアントワークが多いですね。2019年からhachimitsuとして活動しているので、もうかれこれ7年ぐらいになります。
ただ最近はちょっと展示とか、出演したりする方にも力を入れていて、イラストレーターとしてだけじゃなくてアーティストというのも作っていきたいなと思っているので、去年ぐらいから展示にも出させてもらったりしていますね。

―では、現在の活動をお仕事にしようと決心したきっかけを教えてください。
hachimitsu:絵を描き始めたきっかけは、小さい頃から絵を描くのが人よりちょっとだけ上手かった、みたいなところから始まっています。
中学生ぐらいの時は漫画家になりたいと思っていたのですが、中学高校とものすごく絵の上手い子がいたんですよ。
中学ではおじさんがプロの漫画家さんですごくデッサンが上手い子がいたのと、高校では親御さんがデザイン系の仕事をしていて、デフォルメで似顔絵を描くのがめちゃくちゃ上手い子がいました。
その2人を見て、「絵を仕事にする人ってこの2人みたいなことを言うんだろうな」と思って、ちょっと諦めてしまったんです。それで美術系の大学とかも行かずに、高校卒業と同時に普通に就職しました。
それから絵は全然描かなくなって、工場で働いたりとか、その次に不動産の営業をしたのですが、それが正直すごくしんどくて。
辞めた後にハローワークの職業訓練があって、そこで本当にたまたまAdobe Illustratorに触る機会があったんです。それを見たときに「もしかしたらこれを使えばイラストレーターできるかもしれない」と思って。
それまでデジタルで絵を描いたことなんて全然なかったのですが、
始めたのが2017年ぐらいで、そこから2年ほど独学で描いて、その間にお仕事をいただけるようになって、hachimitsuと名乗りだした、という経緯です。
なのできっかけとしては「絵を仕事にしたいという昔からの夢があった」というのが1つですね。
もう1つは、営業職でしんどくなったときに、「もう全部やめちゃいたいな」「消えちゃいたいな」と思ってしまったことがあって。
仮に自分がいなくなったら、この世からちょっとしたら完全に消えちゃうんだろうな、と思うぐらい何も残せていないなと思ったんです。だから絵でもイラストでもデザインでも、何か残しておけば忘れられてもそれは残るなと。
「イラストを仕事にしたい気持ち」と「何か自分の痕跡を世の中に残したい気持ち」この2つが合わさってイラストレーターをやりたいなと思いました。
1000日描き続けて見つけた、自分らしいカラフルな表現
―ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?
hachimitsu:2019年、令和になった瞬間に「hachimitsu」と名乗りだして、SNSのアカウントを作ったんですね。
その頃はまだ専門学校に行っていないし、実力もないなと感じていたので、とりあえずイラストをいっぱい描いて投稿しようと思って始めました。
それが結果的に1000日間続いて、1000枚描いて毎日投稿するのを繰り返してる中で「自分はこの描き方が好きだな」というのがだんだん見つかってきて、それが徐々に形になって、今のhachimitsuの絵柄になった、という感じです。
今のポップな感じの絵柄になったのは「何か痕跡を残したい」と思っていて、こういういろんな要素が詰まったものが好きだなと気づいたからです。
色使いや配色を褒めていただくことが多いのですが、そこもそんなに知識がないまま始めているので、最初はたぶん色使いがめちゃくちゃ強かったと思うんですよ。
描いていくうちに「もっとこうしたほうがいいな」というのが分かってきて、ガチャガチャしてるけどなるべく見やすく作れるようになっていったのかなと。とりあえず描きまくった、というのが大きかったと思います。
最初は描きたいものがいっぱいあって、人のイラストや漫画、アニメを見ていたので、「こういう作品いいな」というのを描いていました。
それを続けていくうちに描きたいものがなくなる時があったのですが、その時に結構シリーズでやっていたのが、一曲聴いてそれをCDジャケットとして描くとしたらどう描くか、というのを続けていたことがあって。
いろんなアーティストの曲を聴いてインスピレーションを得て描く、というのが1年近く続きました。それをやっていくうちにまた次のやりたいことが出てきて、違うものを作ったりしていましたね。

―それは全部オリジナルですか?模写とかはなくて?
hachimitsu:模写はなかったのですが、二次創作、それこそ曲を聴いて絵を描くというのはほぼ二次創作に当たるかなと思います。アニソンだったらそのキャラクターを自分のテイストで描く、というのもやっていたので、半オリジナル半二次創作みたいなところは結構ごちゃ混ぜになっていましたね。
―絵を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。
hachimitsu:大きいテーマとして「世界にカラフルを 心にポップなバグを」というのを掲げています。
自分もかなりしんどかったときに、本当に世界がちょっとモノクロに見えていたんです。
彩度がすごく低く見えていたのですが、その中でいろんな方のイラストやアニメ、創作物ってすごく彩り豊かに見えて。
自分もそういうふうに世界をカラフルにしたい、せめて創作の方では明るくカラフルにしたいな、という気持ちで「世界にカラフルを」を掲げています。
もう一つ、「心にポップなバグを」というのは、自分もいろんなアニメやイラストを見て「こういうの描きたい」とポジティブな衝動を与えてもらったので、自分の作品を見て「何か描きたい」「自分もやってみたい」と思ってもらえるような衝動を与えたいなと。
見た人が楽しかったり、前向きにポジティブになれる絵、というのを第一に掲げていますね。
―モチーフの部分で気をつけてることはありますか?
hachimitsu:可愛らしさというか柔らかさになるかもしれないですが、内容によっては衝撃とかインパクトを与えたいと思っているので、パッと見は可愛らしいんですけど、意味合いはなるべく刺さるように考えています。尖った内容でも、なるべくポップに、柔らかく伝える、というのを意識していますね。
描く上で言うと、楽しさとか、一つ一つのキャラクター性を持たせるイメージです。自分が影響を受けているのが、鳥山明さんの『ドラゴンボール』とか『Dr.スランプ アラレちゃん』、高橋留美子さんの『うる星やつら』とかで、ポップの部分ではかなりイメージを受けています。何かに顔や目、手足をつけて、可愛らしさ、楽しさを意識して絵を描くことが多いです。

―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?どんな点で参考にされていますか。
hachimitsu:さっき例に挙げたお二方はもちろん影響を受けているのですが、一番、営業時代のしんどかった時に、たまたまアニメのPVでイラストが使われていて衝撃を受けた方に「Utomaru」さんという方がいます。
ベテランのイラストレーターさんで、カートゥーンチックでもありレトロポップでもある、色使いがすごくポップでカラフルな方です。最初の頃は本当にこの方のイラストをめっちゃ見て、描き方も参考にさせてもらっていたので、たぶん一番自分のイラストの基礎になっている部分の代表がそのUtomaruさんのイラストだと思います。
初期の頃はかなり影響を受けていたので、Instagramで「これあなたの作品ですか」とUtomaruさんの絵をDMで送られてきたりしていました。今だと結構色使いも違いますね。
だんだん離れていくという言い方があるかもしれないですけど、皆さんいろんな方から影響を受けて、最初は真似や模写をして学んでいって、どんどん描いていくと離れていく。いろんなものを吸収しながら、最終的に残ったのが自分のものになる気がするので、皆さんたくさん描いてそれを見つけてらっしゃるんだろうな、と思います。
―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?
hachimitsu:スポ根じゃないですけど、やっぱり描かないと分からないこと、見つけられないことがすごくあると思います。
もちろん枚数や速さは人それぞれでいいと思うんですけど、描くという行為をずっと続けることがすごく大事かなというところがあります。それを意識していくと、普段の生活でも「あれはどう描いたらいいんだろう」と考えることが増えたので、描く行為自体を意識的にすることを組み込んでいけば、実際描かなくてもイラストに対しての知識がどんどん増えていくんじゃないかな、と思います。
最近「AIで上手くなる」みたいな話もあり、それもいい試みだとは思うのですが、結論、描かないと本当に上手くならないな、というのは感じています。
ディズニーのアニメーターの方が、インタビューで「あなたみたいに上手く描くにはどうしたらいいですか」と聞かれたときに、「人間誰しも1万5千枚描くまでは下手だから、それを描ききってしまえばいい」と言われて、皆さん絶句していたそうなんです。極論そういうことだと思いますし、描かないと上手くはならないというところがあるので、描いていくことで自分の描きたい方向がどんどん定まっていくと思います。
効率をどこまで考えても、結局は物量でどうにかするしかないところはありますよね。おそらく自分は1万時間はギリギリ超えていると思うんですよ。営業もしているイラストレーターとしての、企業人としての仕事の方も含めてですけど。でも1万5千枚はまだ描けていないので、今はAIのこともあったりするので、いろいろ難しい部分はあるかと思います。

作品で世界を彩るために。クリエイターとして描く未来
―現在は、どのようにお仕事を取っているのでしょうか。また、お仕事を受ける際の優先順位などもあれば、教えてください。
hachimitsu:基本的にSNS経由や、ウェブサイトからいただくお話がメインで、新規の方はそこからいただくことが多いです。
最近は割とリピートでのご依頼が増えてきていて、過去に作らせてもらった方から「もう一度作っていただけませんか」というお話をいただくことが増えてきています。
お仕事が重なったときは、「世界にカラフルを 心にポップなバグを」というところにどこまで沿っているか、という形で選ばせてもらうことが多いです。基本的に断ることってなかなかしないのですが、片方が自分の理念とすごく合うものだった場合には、そちらをやりたいなと思うので優先させてもらったり、自分の芯にぶれないか、というところで選ばせてもらっています。
―どういったご依頼が多いですか?
hachimitsu:媒体を問わずいろいろあります。例えば、バーチャルシンガーのリメさんのファンクラブのメンバーシップで配布する壁紙のイラストを、これもリピートで作らせてもらったり。
あとは大学受験する方向けのDMの動画で、芸術系の大学の紹介用イラストを描いたり、それもリピートが多いです。ボードゲームのパッケージデザインもありますし、公演のようなものやデジタルでのライブペイントの依頼もあったり、結構媒体を問わずにいただいています。自分がそこまでジャンルを絞っていないというところがあって、印刷でもウェブ媒体でもリアルな公演でも対応できるので、いろんな方にお声掛けいただくことが多いかと思います。
メンバーシップ向け、ファンの方に向けて作るものなので、半端なものは作れないなと思って、毎回楽曲を全部聴いて、PVも全部見てから作ったりしています。
―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?どのように向き合ってこられましたか。
hachimitsu:全く知識もないまま「やりたい」という気持ちだけでフリーランスをやり始めて、独学で描き始めて、ポートフォリオができてから、企業に営業をかけてお仕事をいただいた、というのが最初なんですけど。
自分が思っていたよりもイラストの仕事って低単価なんだな、と思ったりして。イラストだけでご飯を食べていきたいと思っているので、お金の面で不安を感じたり、この活動で安定するのかな、というところが一番不安でしたね。
そんな時に、たまたま職業訓練で出会った方から「クリエイターがいっぱい集まるサロンのようなコミュニティがあるからそこで相談してみたら」と言っていただけて。ビジネス系のことがあまり強くないクリエイターに向けて、ビジネス論とクリエイターとしての生き方をみんなで情報共有し合う、というところがあって、そこでいろんな方の話を聞いて向き合えた、というところがあります。
今も、有料のコミュニティなんですけど所属していて、イラストレーターだけじゃなくてデザイナーもカメラマンも動画クリエイターの方もいろいろいて、それぞれの業界のことを聞けたりするので、クリエイターの友達みたいな形で、結構安心材料になるかなと思いますね。
―今の活動をしていて良かったと思うことを教えてください。
hachimitsu:もともと「絵が好き」から入っていて趣味の延長上にあるものなので、ものすごく楽しいですね。絵を描くこと自体が好きなので、その仕事自体がすごく楽しくて、それに時間を費やせるのが嬉しいです。
―逆に、大変なことはありますか?
hachimitsu:ありがたいことに明確にこれというのはないんですけど。皆さんがよく言われるのは、雑務周りと確定申告のこと、あとは体のケア、腰や肩のケアが大変です、ということが多いですかね。
イラストの仕事っておそらく年齢的な限界がスポーツ選手みたいにはないので、一生できると言えばできるんです。なので健康面は気をつけないといけないなというところがあって、なるべく運動をしたり健康には気をつけています。やっぱりずっと描いていたいので、大変というより、これから頑張っていかないとと思います。

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。
hachimitsu:直近で言うと、アーティスト面のhachimitsuというところも強化していきたいなと思っています。キャンバスにステッカーを自作して貼る、という作品作りもしています。
「自分のイラストを世の中にどんどん広めていきたい」という想いがあるので、例えば空間をステッカーだらけでデザインしたり、アート作品として作るというところにも力を入れていきたいです。もっと展示やアートフェアのようなイベントに出していきたいな、というのが直近の展望です。例えば、イベントでいろんな人にステッカーを持ち寄ってもらって、一つの大きいキャンバスに貼っていくイベントをやっていきたい、というのもあります。
大きいところで言うと、自分のイラストがいろんなところに使われて欲しいです。
夢としては、タイムズスクエアのLED画面みたいなところに自分のイラストがいっぱい飾られたらいいな、と思ったりしています。日本だと渋谷や、大阪だと梅田の地下鉄の大きなビジョンとか、そういう大きいところにどんどん自分のイラストを出すことができれば、自分のやりたい「世界をカラフルに」というところが体現できるんじゃないかな、と思うので。自分のイラストで空間を作ったり、世界にどんどん広げていきたいなと思っています。

