研究で身に着けた能力を使って絵を描く
―現在のクリエイターとしての主な活動を教えてください。
Hiroya Sumoto:ゲームのキャラクターデザインと立ち絵作成、SDキャラ用のバトルに使う武器の素材を作ったりしています。
それと、美少女ゲーム用イラストの彩色をいずれ任せたいと言われていて、そのための基礎練習課題の最中です。課題をクリアしたらお仕事を回してもらえる予定です。
―ゲームがお好きでなのですか?
Hiroya Sumoto:そうですね。小さい頃から記憶にある限り、色んなゲームをやっていました。
PICOっていう知育用のゲームがあるんですが、そういうゲームを2、3歳からやっていましたね。家にもゲームがあったので、4、5歳のころからRPGやレースゲーム、戦略シミュレーションなど色々なゲームをやっていました。
―クリエイターになったきっかけはありますか?
Hiroya Sumoto:もともと旧帝大で有機化学を学んでいて、いわゆるインテリの道を進んでいました。
ですが、化学の実験って意外と体力仕事な上にすごく頭脳も使うし、例えるならばずっと料理しているような感じなんですよね。途中でやめられないし。そういう環境のなかで、体力的にきつくなってきて過労とうつ病になってしまって、ある日家でぶっ倒れて起きられなくなってしまったんです。
それで「このままではだめだな」と思って。一旦、大学進学の時に迷って選ばなかった「自分の好きな芸術で生きていく」という選択肢を今のうちに一回試してみようと思って。
そこから、芸術系分野のほうに人生の舵をきったという感じですね。
―ちなみに高校生の時に芸術の道を選ばなかったのはどういう理由でしょうか?
Hiroya Sumoto:好きなことで生きてそれを嫌いになったら終わりとか、芸術で食べていくのは厳しいという世間的な一般論を真に受けていたほうだったので。
大学を選ぶ時も一応芸術系の大学の説明会とかも行ったんですが、就職とかを考えると安全そうなインテリの道を選びました。結局は「リスクの少なそうなほうを選んでこけた」みたいな感じになっちゃいました(笑)
―研究の仕事はすごく大変だと聞きます。イラストと研究では内容が全く違いますが、何か共通することはありますか?
Hiroya Sumoto:研究室に入ってしごかれたときに、説明する能力は全部に通ずるなと思いました。イラストもコミュニケーションも、研究成果や勉強の話も相手の知識に応じて、実際に話す言葉を変えたりしないといけない。
例えば、教授の知識と学生の知識だったらレベルの差が段違いなので、教授目線の話だと専門用語が多くて、学生は全く理解できないこともあります。
絵も「自分はこう表現したい」っていうのを全面的に押し付けるんじゃなくて、「こうだったら大体の人はこう受け取ってくれるだろう」と考える。客観視という言葉にまとめられそうな感じですけど、そういうところを意識すると相手に伝わりやすいなっていうのはありますね。
―Sumotoさんにとって研究されていた時間は今イラストを描く上では無駄ではなかったと思いますか?
Hiroya Sumoto:全然無駄ではなかったですね。大学へ行ったことは全然後悔していないですし、ぶっ倒れたことが絵を仕事にするきっかけだったなと思っています。
結果的に今は全く何も後悔していないですね。
―流石です。努力される方は何でも努力できますもんね。
Hiroya Sumoto:そうですね、頑張ること自体はできるほうの人間なので。
まあ頑張りすぎて倒れたんですけど(笑)
好きなことを好きなままでいる努力
―クリエイターとして活動している中で良かったことを教えてください。
Hiroya Sumoto:いろんなものを調べる機会が増えました。
例えば「アーチェリーの弓のような武器をデザインしてください」といった依頼があった場合、「アーチェリーの弓ってどうなってるの?」というところから始まって、「この部品はどういう意味でつけているんだろう」とか、「どういう風に弓を射るんだろう」とか、アーチェリーをやる人じゃないと知らないような知識を拾えるっていうところですね。
そういうところでは、クリエイターって意外と博識になりがちみたいな。雑学とか色々、専門分野の人から見て「え、俺それ大学で勉強したことなのになんで知っているの?」みたいなところを知っていたりもして。
世界が広がっていきますし、人と話すときに話題が合う可能性が高まりますね。
人間の体の筋肉の名前とか関節の動き方とか、クリエイターにならなかったら知らなかったですから。
―イラストを描く上で苦労していることはありますか?
Hiroya Sumoto:思ったようにいかないときですね。「こういう塗りがしたい」と思ってはいても、アウトプットが上手くいかないときがどうしても苦労します。
インプットは正直詰め込むだけですが、アウトプットって感覚的な部分や実際の努力値とか時間が解決する問題が多いし、目に見えてしまうところなんですよね。なんというかテストの点数みたいに返って来ちゃうので、上手くいかなくて落ち込んだりすることはあります。
そして、そういうときに妥協するのか、頑張って解決するのか、うだうだ悩んで完成しないみたいな(笑)
で、結局その間にモチベーションが消えちゃうっていう(笑)
仕事では締切もあるのである程度割り切って作業を進めますが、オリジナルで時間無制限で作っているとそういうのがちょくちょくありますね。
―Sumotoさんは、絵を描くことが人生のすべて、というイメージを感じないですね。
Hiroya Sumoto:そうですね、「自分には絵しかない!」みたいなそういう人間ではないですね。もともとは「普通に勉強して、普通に会社員になるんだろうな~」みたいな人生を思い描いていたんで。
結局イラストレーターになったのも「趣味の延長線上で仕事をしよう!」という考えのもと、糊口をしのぐ手段のうちのひとつとして「絵を描くこと」を取った結果っていうだけですね。
絵を描くこと自体は好きですけど、自分の人生をかけて描くところまではできなくて。研究をしていた時に1回それをやりかけて失敗したので、もう絶対にしない、自分を甘やかすことを常に念頭に置いて活動しています。
―楽しみながら描くことはSumotoさんにとって重要なことですか?
Hiroya Sumoto:楽しみながら描くというよりかは、そもそも苦痛になった時点でそれはやりすぎなので、苦痛に思ったら止めます。
仕事中も絵を描いていてちょっとしんどくなってきたなと思ったら、遠慮なくギターを弾いています。フリーになって一番いいなって思うのはこういうリフレッシュのタイミングを自分の体調最優先でできるようになったっていうところですね。
―好きなことを好きなままでいる努力をされているのですね。
Hiroya Sumoto:そうですね。別に絵だけでクリエイティブなことをしたいと思っているわけでもないので。
曲も作ってみたいし、なんならその曲にMV作ってみたりもしたいなとか思っているので、別の趣味に逃げるというか、献立を回すような感じで生きています。
―ありがとうございます。すごくポジティブになれるお話でした。
Hiroya Sumoto:いやあ、ポジティブにしてないと心が破滅してしまうので(笑)趣味の時間を1分たりとも取れないみたいな生活は地獄でしたね。
相手の意見を尊重すること
―クリエイター活動をする中で大事にされていることはありますか?
Hiroya Sumoto:まずは相手の好き嫌いを尊重することですね。結局万人に好かれることって絶対にないので、相手が自分と違う意見でも「そうか」で流します。
僕の絵柄をどうしても受け付けられない人もいますし、人間性や価値観が合わない人もどこかにいるんで、そういう時は「何が何でもわかってもらおう」じゃなくて、「相手も自分と同じように考えを持っているんだ」と尊重するようにしています。
あと、考えを共有することも大切にしています。
前に、仕事でコミュニケーションエラーが発生しそうになったのですが、僕が一つ確認することでエラーを未然に防げた、ということがありました。僕自身も安心するし、クライアントにも伝わっているなって確信できるので、そういう基本的なところを大切にしています。
絵を描くうえで大事にしていることは、目的やテーマをはっきりさせることです。最終的にこの絵で何を伝えたいのか、この絵は何に使うのかというところですね。
―それは創作イラストでも意識されていますか?
Hiroya Sumoto:しています。キャラクターの第一印象をどう思ってほしいか、どういう方向性の絵柄なのか、など伝わるように描きます。
例えば、ぱっと見て「かわいい」って思えるような絵柄にしようとか、第一印象を最終目的に設定して、その印象を外さないように制作することは大事にしています。
―今後の目標や、やりたいことを教えてください。
Hiroya Sumoto:いっぱいありますが、とりあえずLive2Dをもうちょっと練習したいです。
これ(アバターでインタビューを受けるSumotoさん)もまだ作りかけなので、もっと練習してモデルを作ったり、VTuber関係の仕事が来たらいいなと思っています。
それと、曲もちょっとだけ作れるのでそれでMVを作ってみたいですね。
あとお金が貯まったら3Dプリンターを買って、立体造形にも手を出したいです。
ビジネスの面では、普通の会社員の収入に届くように頑張ろうっていう感じです。収入の余裕がないと他のジャンルにビジネスとして突っ込めないので、今の仕事で生計立てられるように頑張ろうっていうのが短期的な目標です。
―最後にSumotoさんのファンの方に一言お願いします。
Hiroya Sumoto:本当に好き勝手作って好き勝手発表するタイプなので、誰かの気に沿わないものも作ると思いますが、それはそれとしてなにか味変として。
目に付いてちょっと味見してくれたら嬉しいなとは考えているんで、気長にゆっくり見守ってくれたら嬉しいです。