「スポーツ選手のこだわりを汲み取って表現する」T.ANDOHさん

―クリエイターとしての主な活動内容を教えてください。

T.ANDOH:イラストレーターとして現在活動をしております。

一部ほかの一般のお仕事もやっておりますが、生業としてはスポーツイラスト中心のイラストレーターとして活動しています。

―スポーツイラストが中心とのことですが、活動しはじめの時からずっとそれををメインにされているのですか?

T.ANDOH:独立したのがまだ1年半くらいなのですが、それまではサラリーマン兼業で活動しており、ジャンルを絞ってスポーツの世界に特化したマーケットに携わってきました。

将来的には選手のセカンドキャリアの支援だったりとか、単純に絵を描いたりデザインを提供するだけじゃなくて、色んな仕組みを一緒に作っていきながら、スポーツ業界の底上げを含めた仕掛けを作っていきたいなと思っています。

―兼任していた会社ではイラストと関係のあるお仕事をされていたのでしょうか?

T.ANDOH:独立までに2社勤めた経験があるのですが、1社目は印刷会社のディーラーとして仕事をしていました。

2社目はコピックマーカーを作っているTooという会社に勤めていました。

学生のときにプロ野球の仕事に関わっていたので、本当はプロ野球の世界に入りたかったんです。

ですが、就職氷河期と重なり就職先が見つからなくて、プロスポーツの球団もことごとく落ちてしまったので、元々絵を描くことやグラフィックも好きだったこともあり、独学でクリエイター活動を始めました。スポーツの現場をもっと良くしていこうと思った意識から始まった活動の中で、手に取った武器が絵だったんです。

1社目では印刷会社ということもあり、必要最低限ではありましたが様々な印刷媒体の制作知識が勉強できたのはとても大きかったです。

2社目ではよりクリエイターの方々に触れる機会が増え、クリエイターになりたい気持ちや、独立意識がすごく高まりました。副業に割と寛容な会社だったので、仕事をしながら独立に向けて様々な準備が出来たのも大きかったです。さらにコロナが追い風になり、独立に至りました。

―元々絵を描くのがお好きだったとおっしゃられていましたが、学生時代に進路を美術系にしたいと思ったことはありましたか?

T.ANDOH:当時は美術系で食べていける自信がなかったのが本音です。

デッサンなどの基礎は学び直したい気持ちは今でもありますが、普通の大学に入って出会えたのがプロ野球の現場だったので、がっつり美術系に走ってたら今のような活動の形にはなってなかったと思います。

―一見イラストとは縁遠いスポーツをイラストで盛り上げていきたいと思われたきっかけは何だったんでしょうか。

T.ANDOH:僕の場合はシンプルで、何かしらスポーツに関わりたかったんです。

でも、スポーツの世界は『スポーツに特化した何かが秀でてる人たち』しか関われない世界なんです。例えばスポーツに特化した通訳さんとか、トレーナーさんとか、アナリストさんとか。

なので僕はスポーツに特化したイラストで活動していこうと思ったのがきっかけでした。

スポーツが好きでスポーツの知識があるからこそ、選手のプレースタイルなどを把握したうえで、選手たちのオリジナリティを絵で表現することができれば、選手本人にもファンの人にも喜んでもらえるんじゃないかなと思って今まで描き続きけてきました。以前とある選手のイラストを描いたときにその選手のファンの友人から「何がすごいって、お前このふくらはぎよく描いたな」と言ってもらったことがあって、その言葉が今の活動スタイルにずっと影響を与えてくれてます。

―本当に好きな人しかわからないポイントをイラストで表現するために注目されているところはありますか?

T.ANDOH:スポーツの現場の人間観察が好きで、例えば野球選手が打席に立つときに松ヤニのスプレーを塗ったりするんですけど、野球を知らない人には気が付かない仕草でも、僕の場合はついつい見ちゃいますね。初めて見るスポーツだと特に選手の色んな行動が気になるというか、そういう癖がついている節はあります。

―スポーツ選手をイラストで描くうえで筋肉などの勉強はされましたか?

T.ANDOH:勉強とまではいかないですが、NHKの教育テレビでやってるような人体の不思議みたいな番組とか、専門書を立ち読みしたりして人の体の構造を見て学ぶようにしていました。

―クリエイターとして活動されていてよかったことを教えてください。

T.ANDOH:時々、スポーツ業界のすごい人にお会いできる機会があることでしょうか。僕にとってはご褒美です(笑)あとはイラストレーターとして全国レベルのテレビで作品を紹介してくださったり、自分の名前が出やすいので僕自身を認識してもらえるのがありがたいですね。

―クリエイターとして活動されている中で、苦労されていることはありますか?

T.ANDOH:苦労は本当に『産みの苦しみ』っていうところですね。
一生懸命考えたけどクライアントのイメージと合わなくてデザインを全部変えることになってしまったりするのはもちろんですが、自分自身のその時の状況によってデザインが安定しなかったりするので、細かいところでの苦労も多いです。

―スポーツイラストレーターとして大事にされていることや、気を付けていることを教えていただきたいです。

T.ANDOH:自分自身のスポーツセンスを大事にしながら、見たもの・感じたもの・気づいたものをちゃんとイラストで表現することですね。スポーツに特化したイラストレーターとして活動しているからこそ、基本的にスポーツに関してはジャンル問わず、色々なものを見るよう心がけています。

選手の似顔絵などは場合によって面白おかしく誇張して描くこともあるんですけど、選手が喜んでくれるポイントって普段の自身の癖がイラストに描かれていることだったりするので、選手の特徴をしっかりとらえて描写に落とし込むことも大切にしています。どこまでデフォルメ化するかのバランスってすごく難しいんですけど、そこも含めて『産みの苦しみ』だと思っています。

―ただの似顔絵ではないものを表現して、どういうことを伝えたいと思われていますか。

T.ANDOH:スポーツの選手のすごいところって十人十色なので、すごいところを引き出してあげるのはもちろんなんですが、一般的な似顔絵なら描かずにスルーしてしまうような身体的な特徴も、逆にスポーツ選手にとっては売り物になっているので、そういった部分まで描き切るようにしています。

ちょっと話が脱線するんですけど、社会人野球のアマチュアのチームのデザインをさせてもらったときに、選手からアンケートを取ったんです。そのときに面白かったのが、選手たちって身長も盛るけど体重も盛るんですよ。メジャーリーグへ行くと、日本人って顔が幼く見えがちなのでみんな髭生やしてみたりもするんですが、アスリートって体に対してのこだわりが人一倍強いんですよね。

そういった細かい部分のこだわりまでしっかり汲み取って『これがチームの魅力だよ』『これがこの選手の魅力なんだよ』っていうのをスポーツ系のテレビ番組と同様に絵で伝えていきたいと思っています。

スポーツ選手たちにとっては自身の特徴って顔だけじゃないんですよね。

女子選手でも脚力に自信のある選手だったら思い切り太く描くと逆に喜んでいただいて「そうそう私ね、下半身に自信あるんですよ」と言って喜んでくれるんですよ。本当に近いところでスポーツを見させてもらって選手たちを描いているからこそ、細かいところまで表現していきたいと思ってます。これはまだAIにも出来ないことなので。

―お話を聞かせていただいて、ただ美しく描くのではなく、リスペクトを描いていらっしゃるんだなと感じました。

T.ANDOH:めちゃめちゃいい言葉ですね。やっぱり命かけてるとまで言うとちょっと大げさですけどそれに近いですね。やっぱり身を捧げてスポーツに邁進してる方々なので、だからこそ現役を引退した後でもそのスポーツに携わって幸せになってほしいと思っていますし、そういう思いで描いています。

―個展など様々な活動をされていますが、そこに対しての思いを聞かせてください。

T.ANDOH:来月の個展は、合同展示会に参加したことがきっかけです。

今回参加させていただくにあたって色々な方にご協力いただいたのですが、自分でしっかり意思表示するためには、パブリックな場で皆さんに見てもらう環境は大事だなっというのを感じました。

東京での反応が思っていたより好印象だったので、調子に乗って関西でやってみようかと(笑)

せっかく今回掲載許可をいただいた選手の方の作品は表に出してなんぼだと思ってるんで、これからもきっかけを作って表に出していきたいと思っています。

―今後の展望などはありますか?

T.ANDOH:自分が当然余裕も持ってからの話ではあるのですが、スポーツ支援のようなことをしてみたいです。
今現在もその一環で選手のためにオリジナルグッズ作ったり、1つの学校をブランディングしてみたり、選手と一緒にチャリティー活動を行って、そのツールを作ったりしています。

いろんな方面の方々やビッグネームのアスリートの方に共感してもらえるような活動をしていきたいです。スポーツをやる人は減ってるわけではないし、世の中が思うほど危機感を持たなくても良いとは思うんですけど、正しく価値を継承できるようにはしたいなと思っています。

―最後に安藤さんのイラストが好きなファンの方へ一言お願いいたします!

T.ANDOH:いつもすごく褒めてくださる方には『本当に細かいところまでよく見てくれてるね』って喜んでいただけるので、今後も他の人には真似できないようなデザインやイラストの提案をさせていただきたいと思っています。楽しみにしていただけると嬉しいです。

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