「三色構成とインスピレーション」おはすみさん

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制限から生まれた画風

―現在の活動内容について教えてください。

おはすみ: 主にSNSにイラストを載せたり、ご依頼を受けたり、グッズ販売をしたりしています。

—ご依頼を受ける企業はどういうジャンルのところが多いですか。

おはすみ: 小説の表紙のイラストや車関係の会社、他に様々な業種の方に関わらさせていただいていますね。

―絵を仕事にしようと決心したきっかけや理由を教えてください。

おはすみ: 昔から美術の先生、デザイナ―、イラストレ―タ―のどれかになりたいと思っていて、大学は教職に力を入れてる造形学部に進学しました。ですがそこで自分が先生に向いてないと感じ挫折してしまいました。その後、大学を卒業して運よくデザインの会社に入社しましたが、思ったようにデザインの仕事をすることができず、ここでもまた挫折してしまいました。

小さい頃からコミュニケ―ションを取ったり、相手の気持ちを考えることがすごく苦手で、コミュニケ―ション能力がより重要な教員やデザイナ―になることができませんでした。そんな中、たまたま登録していたコミッションサイトで、イラストのご依頼をいただくようになりました。それからSNSにイラストを上げていくうちに、少しずつ企業の方からもご依頼をいただけるようになって、だんだんとイラストレ―タ―として活動ができるようになってきました。

―絵の依頼を受けはじめたのはいつぐらいですか。

おはすみ: 依頼を受け始めた時期は覚えていませんが、イラストレ―タ―としてやっていこうと決心したのは大体2020年ぐらいだったかと思います。

個人の方からいただいたアイコンイラストの依頼がすごく楽しくて。デザインとかだとちょっとしたものでもすごく悩みながら制作していたんですが、イラストだとすっとアイデアが出てくるので、やっぱりイラストの方が向いてるなって思って活動を続けています。

―自分の作品の方向性はどうやって決めましたか。

おはすみ: 周りの方から「版画っぽいね」って言われるようになってから、自分でも意識して描くようになりましたね。

普段iPadのプロクリエイトっていうソフトで絵を描いているんですが、このソフトではたくさんレイヤ―を重ねて描くことができないんですね。それでなるべく色数を抑えて描いた結果、余計に版画っぽいのかなって思います。

また、色数を抑えることでデザイン的にもしっかりまとまり、かっこよく仕上がるというメリットもあります。

 ―元々何か描きたいものがあったのでしょうか。

おはすみ: 特にこれを絶対描こうっていうものはないんですけど、感動や衝動を大事にしていて、雪が降って綺麗だなとか、牡蠣が食べたいなって思ったことを題材にして、思い立ったら描くようにしています。特に絶対描きたいというものはないです。

―絵を描くにあたって大切にしていることや意識していることを教えてください。

おはすみ: 目に入るものを三つの色で構成するように努力をしています。

三つの色というのは、ベ―スの色と、その色に映える色と、そのふたつの色を繋ぐ色の三色です。

例えばカラスって一色だと思うんですけど、羽が照り返しで紫に見えたり、夕方だと夕日の色が入ると思うんですが、そういうものを瞬間的に捉えて絵にしたりしていますね。

色数を抑えるからこそ三色でどうまとめるかを気をつけて、インスピレ―ションを大事にしながら色を決めています。

―影響を受けたクリエイタ―はいますか。また、どんな点で参考にされていますか。

おはすみ:  結構たくさんいるんですけど、版画っぽいと言われるようになってから意識して見るようになったのが、工芸家の芹沢銈介さんと、ム―ミンで有名なト―ベ・ヤンソンさんです。お二方の画集をよく見て、研究しています。

学生時代は漫画家さんにすごく影響されて、大友克洋さんや、林田球さんが好きです。どちらもすごく細かい描き込みをされる方たちなんですが、私はカラ―のときの配色や構図がとても好きで、今もすごく影響されています。

一番影響されて、今も絵を描き続けているきっかけにもなったのは中学時代の友人です。当時仲の良い数人とノ―トを使ってリレ―漫画を描いていたんですが、そのときに自分以外の人たちの絵が本当に上手で。この人たちよりも上手になりたいなと思って、それが現在までに至っているっていう感じですね。

―中学校時代のそのご友人は絵をまだ続けてらっしゃるんですか。

おはすみ: そうですね、今もイラストを描いていらっしゃるんで、すごいな、負けないぞって思いながら描いています。今でもSNSとかで連絡は取っています。 

好きこそ物の上手なれ

―画力を上げるために実際にやったことやおすすめの勉強方法はありますか。

おはすみ: 漫画や音楽、ドラマとか、何か大好きな作品を持つことだと思います。できれば、それのファンア―トを描く。ファンア―トを描くために、例えば着物を描くために着物の構造を調べたり、時代背景まで調べたりすると思うんですけど、好きなことなので調べても全然苦にもならないし、結構スポンジみたいに吸収することができます。

私もファンア―トを描くようになってから、イラストのクオリティがぐんと上がっていって、ファンア―トを見てくださった方からご依頼をいただいたり、新しい繋がりもできたりするのでおすすめですね。 

―現在、どうやってお仕事をとられていますか。また仕事が増えてきた際にどのような基準でお仕事を選ばれていますか。

おはすみ: 本当にSNSを見ていただいた方からメ―ルでご依頼をいただくことがほとんどで、なるべく内容とか関係なく受けるようにしています。どうしてもスケジュ―ルが合わない場合は「日にちはこのくらいでどうですか」と先方と調整しながらやっています。

―クリエイタ―として活動する上で不安はありましたか。また、どのように向き合ってこられましたか。

おはすみ: SNSにイラストをアップしてもたくさん見てもらえることが少なかったり、周りのイラストで成功している人たちと比べてしまって思うように描けなくなっちゃったりすることがあります。

いいね数やフォロワ―数が多いからといっていいイラストとは限らないとわかっているんですけど、SNSの反応がいいとご依頼をいただけることが増えたりもするので完全に気にしないことは難しいと感じています。

そんな中で自分には才能がないと感じて、絵を描くことをやめたいと思ってしまうことが何度もあって、実は今も結構スランプ気味です。

以前に私が描いていたイラストは風景をがっつり描いているイラストが多めでした。それが今はその風景のイラストを全然描けなくなってしまっています。

今描いているパタ―ンイラストは、とりあえず何でもいいから手を動かそうと思ってリハビリとして描き始めたものなんですね。

本当に風景イラストのときは泣きながら10時間ぐらいかけてやっと1枚描けたみたいな感じだったんですけど、パタ―ンイラストは気楽な感じで、寝転がりながら1時間ぐらいで描いたりとかしてるので、本当に描いてるのがすごく楽しいです。

つまずいてしまったときは描き方変えてみるもの手なんじゃないかなって思います。

―絵を仕事にしていてよかったことと大変なことを教えてください 。

おはすみ: お仕事にしてよかったなって思った瞬間は、自分のイラストが載ってる雑誌を本屋さんで見かけたときですね。本当に嬉しくて、雑誌の前を何回も通り過ぎたり、その雑誌をペラペラめくって自分のイラストが載ってるペ―ジを何回も見ちゃったりとかちょっと不審者みたいな行動をしてしまいました(笑)

大変なことは普段の仕事との両立です。今は在宅で働いていて、イラストレ―タ―として活動する時間を仕事の前の朝、昼休憩、退勤後の夜、土日の中でやりくりをしないといけないことが大変ですね。時間帯によって体力ゲ―ジが違うので朝に重たい仕事をやって、昼夜は体力がいらない仕事を振り分けるようにしていますが、それでもスケジュ―ル調整が難しいです。

結構無理をしてるので何とかしたいなって今も思っています。

―兼業されているお仕事っていうのは、絵に関わるようなものですか。

おはすみ: DTPオペレ―タ―っていうちょっとデザイン寄りの仕事をしています。一日中頭を使うので疲れますね。

―最後に、今後の目標や展望を教えてください。

おはすみ: イラストでパッケ―ジデザインに関わることと、教科書の挿絵を描くことです。叶わなかった夢をちょっと別の方向で考えていくのが目標ですね。

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