会社員をしていた時は、ディレクションの立場だった
―現在の活動内容について教えてください。
七草きのこ:お仕事としては、ミュージックビデオのイラストやアニメーションの制作やVTuberさんのイラストなども描かせていただいております。
個人の活動としては、現在SNSで発信をしています。
2024年の春頃から活動を開始しましたので、現時点ではイベントなどには出ていないのですが、これから検討していきたいと思っている段階です。
―ミュージックビデオは、ご自身で映像も作っていらっしゃるんですか?
七草きのこ:いえ、動画制作は専門の方がしてくださっています。
私はメインのイラストを描いて、表情や手を動かす簡単なアニメーションだけを担当したり、そのための素材を作ったりしています。
―(インタビュー時)活動開始から1年ということですが、絵を仕事にしようと決心されたきっかけが、何かあったのでしょうか。
七草きのこ:自分が描く中で、人が楽しんでくれる、人の心に残る作品を作りたい…作って届けたい、と思ったのが一番ですね。
元々、小さい頃から絵本などで絵を見るのが好きでしたし、描くのも好きだったんですよ。
会社員をしていた時も、実は少し絵に関わるような仕事をしていまして。その時は、ディレクション的な立場だったんですけど。
素敵なイラストレーターさん、音楽家さん達と一緒に作り上げるのも好きでしたが、やっぱり元々、描くことが好きだったので。
「自分も前線に立って、人に見ていただけるような絵を描いていきたいな」という想いが強くなって、お仕事にしようと思い至りました。
―幼い頃からこれまで、ずっと絵を描き続けていたんですか?
七草きのこ:そうですね、今と描くペースは全然違いますけど。
ふと描きたいなと思った時に、ちょっと描いてみるだとか…画風の模索をしたりだとか、企画でちょっと絵コンテを描いたりだとか。そういった意味では、ずっと描き続けていましたね。
―ご自身の作品の方向性は、どのように決められましたか?
七草きのこ:活動を始めたばかりの頃、友人が絵を見てくれた時に、「七草の絵って、こういったところがいいよね」と褒めてくれたことがあったんです。
それが、自分では売りになるとか、意識をしていなかったポイントだったんですけど…客観的に見てみたら「確かに特徴的かも」と気づくきっかけになりました。
例えば、私の絵って線はパキッとしているんですけれども、まっすぐな線というのはなくて、全部やわらかい形にしているんです。
なので、『ポップでハッキリした絵なのに、線からやわらかさが感じられる』という相反するようなものを、自分のタッチにしていこうと考えました。
そこに、自分がユーザーとして楽しんでいる色んなコンテンツの表現も参考に取り入れつつ…。
「自分自身が好きだと思って描いていけるようなタッチにしたい」と思って、今の絵柄になっています。
―絵を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば、教えてください。
七草きのこ:大前提として、自分が「描いていて楽しい」と思えるように、というのがあります。その上で…
『見る人は誰か、誰のためのものなのか』
『何に使われるものなのか』
『見た時に、どう思われるのか』
この三つは意識していますね。
これらは、特に『バランス』という点で絵に活かすようにしています。
例えば、色とか。
「3色をベースに絵を描く」となった時に、全色を均等に使うのではなく、「一番強く入ってくる印象を赤にしたい」と決める。でも、赤はあくまで7割で、その赤をより印象的にするために、他の2色を、残りの3割の中でアクセントや補助にするなど意識しています。
あとは、視線誘導とか。
イラストが使用される画面の中で、どういったところに何の要素があったら見やすいかなという部分を考える。
そういう『バランス』を、気にするようにしています。
物を観察するのも、すごく大事
―影響を受けたクリエイターさんは、いらっしゃいますか?
七草きのこ: HACCANさんと、竹さんです。
お二人の絵を、子供の頃に見て。その時まで、絵を『描くもの』として認識したことがなかったんですけど、「絵で、こんな表現があるんだ!」って感じたのが、当時すごい衝撃だったんです。
ですから当時HACCANさんや竹さんを、それぞれ「こんな絵を描けたらな」と思って参考にして絵を描いていました。
そういう意味で、やっぱりこのお二方の影響っていうのは、今も強く受けていますね。
寺田てらさんという方の影響も受けていて。
自分が着彩で悩んでいた時に寺田さんの作品を見て、「絵ってこんな風に塗って描いてもいいんだ」って、大きな衝撃を受けました。
色使いを考える大きなきっかけになりましたね。
―他に、画力を上げるために試したことや、おすすめの勉強方法があれば、教えてください。
七草きのこ:私は完全に独学で描いているんですけど…クロッキーやデッサンは、学生の頃、時間が空いたら、とにかくずっとやっていました。
あとは、先ほど挙げた好きな作家さんの絵を、「この人はどうやって絵を描いているんだろうな」と、よく見て真似をするとか。
よく見る、という意味では、他にも…実際の人の顔や服、物などを「この服はこういう素材だから、こんなたるみ方をしてるんだな」とか、普段から注意深くモノを観察する、というのは今もずっとしていますね。
おすすめの勉強方法としては…そうですね。社会人の方や、忙しい学生さんだったら、なかなかデッサンする時間がないと思うんですけど。
物を注意深く観察して、それを頭の中でデッサンする、っていうのは今もずっとやっています。
―なるほど、イメージデッサン。面白いですね!
七草きのこ:はい、想像なら、いつでもできますしね。
服でも、「こういう素材と構造だから、見えないところはこんな描き方をするんだろうな」と思いながら、頭の中で描いて覚えておくんです。そうすると、後で形にする時に思い出しながら描くって、意外とできるので。
物を観察するのもすごく大事だなと思います。
―クロッキーとデッサン、大事ですよね。でも、学生時代という早い段階から、どうやってその『基礎』に行き着くことができたんですか?
七草きのこ:インターネットでどんな練習をしたら絵が上手くなるのかを調べると、「基礎はデッサンだよ」というのは、色んなところで書かれていたんです。
好きな絵を描くほうが絶対に楽しいのは、わかってるんですが、やっぱり基礎って大事だよねと思って、本を買ってきて。人体構造の本とか。
それをひたすら描き写したり、そこから学んだことを活かしつつ人や物を描いたりはしましたね。
描くこと自体が大好きなので、そういった練習時間も、楽しんでいました。
やりたいことは、ありすぎるほどある
―現在は、どのようにお仕事を取っているんでしょうか? お仕事がいっぱいになった時の優先順位をどう決めているのかも、教えてください。
七草きのこ:今はまだ駆け出しなので、基本的には全部受けるようにしています。
スケジュール的にどうしても難しくて、お断りせざるを得なかったこともありますが…今のところ特にお断りする基準というものは、設けていません。
お仕事自体は、SNS掲載のメールでご依頼いただくことがほとんどです。
近々ホームページを開設予定ですので、今後はそこに作品をまとめたり、イベントにも出たり…そういったところからも、見つけていただけるようにしていきたいなと考えています。
―絵を仕事にしていて良かったことは、何ですか?
七草きのこ:実は絵のお仕事としてすごくやりたかったことのひとつが、ミュージックビデオのイラストだったんですよ。
そうしたら、最初にいただいたお話がミュージックビデオのイラストで。
ラッキーで本当にありがたかったです。絵を描いて、依頼主の方からも「いいね」と言っていただけて…それだけでも、本当に嬉しかったんですけど。
歌や映像ができ上がって、1本の作品にまとまった時、「これに自分が参加できたんだ」って本当に感動しました。
多分この感動は、今後も自分の基盤として、ずっと覚えてるんだろうと思います。
それ以降も、ミュージックビデオは何本かやらせていただいていますけど、毎回新鮮な感動を覚えていますね。
あと、どの仕事でも…本当に「喜んでくれている」というのが伝わるメッセージをいただいたり、相手や、その作品に触れる人に喜んでいただけるのが、やっぱり何より嬉しいですね。描いて良かった、と思います。
―逆に、大変だったことはありますか?
七草きのこ:そうですね…これは、自分自身の戒めにしなきゃいけないんですけど。
私は兼業でイラストのお仕事をやっていて。以前、「受けられる」と思って受けていたお仕事が、複数重なっていた時期があったんです。
そうしたら、絵ではないお仕事で緊急トラブルがあった時に、スケジュール的にいっぱいいっぱいになってしまって。削れるものが自分の睡眠時間しかなかったので、そこでちょっと無理をしすぎてしまったな、ということがありました。
無理を続けて、どちらの仕事にも悪影響を及ぼしてしまうのは良くないので…もっとスケジュール管理をして、余裕を持ったお仕事をしなくちゃいけないな、と思っています。
―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
七草きのこ:もう、やりたいことは、ありすぎるほどあります。
音楽関係だったら、好きなアーティストさんのジャケットイラストやMVイラスト・ディレクションなどに関われたら、嬉しいですね。
それから、これから誕生するVTuberさんのお姿を描かせていただくとかも、是非やりたいので、募集しています。
あとは、元々『本』も大好きなので、小説の挿絵や装画なども、目標としてお仕事をしていけたらなと思っています。
個人では、イベントでグッズを色々作って、ブースを出して…色んな人に見ていただいて、直接そういった方と交流することも、すごく楽しみにしています。