「線画が主役になるような描き方」斑鳩-ikaruga-さん

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小学校の図工の授業から、色を塗ることを避けるようになっていた

現在の活動内容について教えてください。

斑鳩:主にSNSを中心に、絵を上げて活動しています。
また、時折、関西や関東でグループ展に出展していて、お誘いがあれば、展覧会にも参加させていただいていますね。

今年(2025年)の1月は東京で個展を開かせていただき、4月には台湾で開催されたグループ展にも出展しました。
それから、4月後半におこなわれたニコニコ超会議でも、作品を展示させていただいたばかりです。

お仕事として始められて、どれくらいになるのでしょうか?

斑鳩:本格的に活動を始めたのは、2017年の頃でした。
と言っても、その時は展覧会など大きなお仕事は取っていませんでしたね。
企業様からお仕事をいただき始めたのは、ここ34年のことです。
遅咲きではあるのですが、最近ようやくお仕事をいただけるようになってきた、というところですね。

 

ありがとうございます。では、イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。

斑鳩:絵を描くことは、子供の頃からすごく好きでした。
僕には姉が1人いるのですが、姉もよく絵を描いておりましたので、その姿を見て、自分も少しずつ描き始めたというのが最初でしたね。
当時は今のようなモンスターや人物キャラクターではなく、車が好きで、よく車の絵を描いていました。

でも、高校時代の校外学習で、卒業後について考えるために、どういう学校や職場があるのか、という体験授業がありまして。
そこで、地元にあった美大の見学に参加して、在校生の方が作品制作をしている授業を見させていただいた時、「自分はこういうことをしたいんだな」と、ビビッときたんです。

その後、お仕事にしたいと思い始めたのは、実際に美大に入学してからでした。
ゲームや漫画などのイラストも好きでしたので、在学中にもたくさんそれらを見ている内に、自分もこういう仕事をしたいな、と考えるようになりました。

 

ご自身の作品の方向性は、どのように決められたのでしょうか。

斑鳩:僕は、色を塗る作業があまり好きではないタイプなんです。
というのも、小学生の頃、図工の授業で『風景画を描こう』といった授業があったのですけど
その時、下描きは上手くいったのに、色を塗るのがあまり上手くいかず、先生から良い評価・反応がもらえなかった、ということがあったんですよ。
そこからずっと、色を塗ることを避けるようになっていました。

その後、今の作風になったのは、SNSを始めてからですね。
最初はInstagramから投稿し始めたのですが、Instagramは海外のイラストレーターの方もたくさん活用していらっしゃるので、よく見ていたんです。
そこで、モノクロだけで素晴らしい作品を描いている方をたくさん見て、「自分もこういうふうに描けたらいいな」と思ったのが、今のスタイルになった要因でした。

それから、今描いているキャラクターも、神様や悪魔、天使などの人外系のイラストが多いのですが前々から、人外キャラクターやモンスターなどを描くのが好きではあったんです。
その上で、作品をSNSで発表した際に、フォロワーさんから「斑鳩さんは神様を描くのがすごく得意なイラストレーターだ」というコメントをいただいて、「そうか、自分の絵のスタイルはそれだ」としっくりきた形でした。

なので、海外のすごく格好いいモノクロイラストを描かれる方の影響と、そのフォロワーさんのコメントが合致して、今のスタイルになった、という流れでしたね。

今描いている作品を、いかに自分自身が好きになれるか

作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。

斑鳩:その作品を描いている時に、自分自身が楽しめているかどうか、ですね。
心の部分を、一番大切にしています。

自分の作品は、どうしても制作が長時間に渡ってしまうので描いている途中で、その作品に自分自身が飽きてしまうと、途中から「もういいや」って投げ出してしまったりして、最後まで進めることができません。
なので、今描いている作品を、いかに自分自身が好きになれるか、というところが一番大事だと思っています。
技術的な部分は後々必ずついてきますけど、精神的な部分は自分で何とかしないと、成長することはないので

逆に技術的な部分では、細部までとことん描き込む、ということを大切にしていますね。
もう、一つの作品のどの部分を切り取っても作品になるようなイメージで制作しています。

 

作品の制作期間は、どれくらいかかっていらっしゃるのでしょうか。

斑鳩: A4A3サイズくらいの作品であれば、2週間ほどで描いております。
最長ですと、半年ぐらいかかった作品もありましたね。
ただ、それはいろんな他の仕事などもやっていた時のことでしたので、その作品だけに集中するのであれば、もうちょっと早くなるとは思います。

今のイラストレーターの流れとしては、やっぱり短時間で描いてたくさん作品を作るのがいいのだろうとは思うのですけど、僕の場合は、そうするとあまり特徴的なものにならないようなイメージがありまして
もちろん、短い期間の中で個性的な作品を描かれる方はたくさんいらっしゃるのですが、自分はそこまで器用な人間ではないので、どうしても長い時間がかかってしまいますね。

影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?

斑鳩:1人は、金子一馬先生ですね。女神転生シリーズや、ペルソナ12のキャラクターデザイン、悪魔のデザインなどをされた方で、日本のアーティストの中では一番影響を受けています。
金子先生の描くイラストのデザインセンスは、ずば抜けて異質というか、他にはないデザインで本当に大好きなんです。金子先生のイラストを見たことも、今のような絵を描きたいなと思った一端でもありましたね。

もう1人は、Aaron Horkeyという海外のイラストレーターさんです。
今の自分の作品の描き込みに影響を与えてくださったのが、この方ですね。
Instagramでお見かけして、「すごい。この人のイラストすごく好き」とビビッときたんです。
この方のイラストのような作品を作りたい、と思ったことで、今の自分のスタイルになっていますね。

 

画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?

斑鳩:最初は、まず好きなイラストレーターさんを見つけることが大事ではないかと思います。
自分の目指したい絵柄と言ってもいいのですけど、それを見つけないと右往左往してしまいますので、そういった目標をまず見つけることが一番かなと思いますね。

僕自身が、画力を上げるためにやったことになりますと
今の作風においては、長時間かけてひとつの作品を作ってみる、というのが良かったように思います。
2週間や3週間など、それなりの時間をかけてみて、その期間の中で自分がどれぐらいの作品を作ることができるのか、ということを一度経験してみると、その後の指標になるのではないかと思います。

線はとことん入れなきゃ気が済まない

現在は、どのようにお仕事を取っているのでしょうか。また、お仕事を受ける際の優先順位などもあれば、教えてください。

斑鳩:SNSに『ご依頼があればこちら』とGmailアドレスを記載していますので、そのSNSから作品を見ていただいて、直接Gmailでご依頼をいただいているのが、今の主な状態ですね。
お仕事が増えてきた際の優先順位については、やっぱり「面白そうかどうか」という部分を意識しているかもしれません。
あとは、自分が今までやったことがないようなスタイルのお仕事も優先していますね。
今まで自分がやってきたこととは違うようなお仕事は、それも最終的に自分の経験になりますので、積極的にお受けしています。

とはいえ、基本的には来るもの拒まずみたいなスタイルではありますね。
もう「僕の絵で出来ることなら何でもします」みたいな感じです。

 

クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?

斑鳩:作品をSNSに上げた後、評価や反応がなかったらどうしようとか他にも、いろんな作家さんがどんどん生まれている状態ですので、自分の作品が埋もれてしまわないかどうか、という不安はありますね。

あとは、仕事の部分で言えば、納期です。
どうしても、ひとつの作品に時間をかけてしまうところがありますので、納期に関しては結構細かく、「何日までにこれをして、何日までにこれをして」と振り分けています。

 

なるほど。ちなみに、ひとつの作品の完成までに、どのくらいの作業工程があるのでしょうか。

斑鳩:基本は、ラフスケッチの後に、一度クライアントの方に見ていただかないといけないので、提出をして
そこからお返事をいただくまで数日かかる場合がありますので、その間にOKをいただけるという仮定で描き込みと線画を進めて、あとは着彩ですね。
基本的に、四つの工程になっています。

一番時間がかかるのは、やっぱり描き込みですね。
人間のキャラクターであれば、髪の毛なら艶ですとか、服であれば服のしわですとか、装飾があれば装飾にも
線はとことん入れなきゃ気が済まない、みたいな性格なので、どうしてもその部分に時間がかかってしまいますね。
描き込んだ部分に関しては、基本的には単色や淡い塗りで終わらせて、あまり深く塗り込んではいませんので、線画が主役になるような描き方をしています。

ありがとうございます。では次に、絵をお仕事にしていて良かったことを教えてください。

斑鳩:例えば、グッズ用の作品を描かせていただいた後、実際のイベントで、そのグッズが即完売になったというご報告をいただいたりとか。
ゲームのお仕事だった場合は、描いた後に「すごくいい作品になると思います」というようなお褒めの言葉をいただいたりとか。
そういった、自分が思いがけないような、想像以上の結果を得られた時には、やっぱり絵を描いて、仕事をして良かったな、と思いますね。

 

逆に、大変なことはありますか?

斑鳩:先の回答と重複しますが、やっぱり納期の部分ですね。
結構急な修正がきたりとか、納期が1週間早まってしまったり、なんてこともあったりしますので。
それでも、あくまでもお客様のご要望に応える、というのがイラストレーターとしてお仕事をする上で一番大事な部分ではありますから、そこは大変かな、と思うことがありますね。

 

最後に、今後の目標や展望を教えてください。

斑鳩:今後の目標としては、商業画集を出したいな、というのが一番にありますね。
イラストレーター・作家人生の最終目標として、やっぱり一生に一冊は出してみたいです。

あとは、今年東京で個展をさせていただいたのですけれど、次は関西で個展をしたり、最終的には海外でも個展を開いてみたり、というのはやってみたいですね。
お仕事の部分では、何かしらアニメ作品のキャラクターデザインなどにも参加できたらな、と思います。

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