脳内にいる子達を、イメージが浮かぶままに出力している
―現在の活動内容について教えてください。
おるかみど:私はまだ、本格的にお仕事をしているわけではありませんので、個人でイラストを描いて、1年ほど前からX(旧Twitter)に投稿しているのがメインの活動です。
あとは、コミティアに参加して、イラスト集やグッズ販売などを定期的におこなっていますね。
イラスト集や、ポストカード・シールなどのグッズは紙媒体がメインなのですが、イベントでは、石粉粘土で作った立体物も販売しています。
―イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。
おるかみど:元々、私は福祉の現場で10年ほど働いていたのですが、ちょっと違うことがしたいなと考えて、転職をしたんです。
絵を描くことが元々好きだったのもあり、何となく「絵を描くお仕事をしてみたいな」と思ったのですが…
ちょうどその頃、コミティアに一般参加させてもらい、たくさんの人が自分の創作物を形にして販売されていることに、すごく魅力を感じたんです。
刺激を受けて、SNSのアカウントを立ち上げてみたのが、最初のきっかけでした。
やってみると、自分が思っていた以上に、自分の作品を受け入れてもらえたことにすごく驚きましたね。
その中で「作品を販売して欲しい」とか、「こういうグッズが欲しいんだ」と言ってくださる方もいたので…1回きりの人生ですし、ちょっとお仕事としてチャレンジしたいなと思い、今活動しているところです。
―元々絵を描くのが好きだったとのことですが、いつから描いておられるのでしょうか?
おるかみど:小さい頃から好きで、絵を描いていましたね。
絵本を結構読んでいたのですが、らくがきでミッフィーの絵を描いたりしていました。
でも、10年働いていた福祉の仕事の中では、やっぱり業務が立て込むとなかなか描けなくて、5~6年ほど絵をまったく描かない時期もあったんです。
ただ、コロナ禍で働き方が変わった時に、外へ出かけられなくなりましたので…
その期間中に「描くの好きだったな」と思い立って、再び描き始めた、という経緯がありました。
―ありがとうございます。では、ご自身の作品のスタイルや方向性は、どのように決められましたか。
おるかみど:動物がすごく好きで、ウサギなどの生き物を手遊びでらくがきすることが元々多かったんです。
その上で、私は動物達が、パッとマスコットキャラクター的なイメージで頭に浮かぶタイプなので、本当にそのまま、私の脳内にいる子達を、イメージが浮かぶままに出力しているという感じですね。
あとは、むっちりとしているものや、やわらかい線や色がすごく好きなので、そういったところから自然と今の作風になったのかな、と思います。
自分が可愛いなと思ったものを信じて、表現する
―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。
おるかみど:自分が可愛いと思ったものを、きちんと描く、という部分をすごく意識しています。
「受け入れてもらえるかな」とか、「これって可愛いと思ってもらえるのかな」など、なかなかに迷ってしまう自分もいますが…
でも、迷ってばかりだと楽しくないので、自分が可愛いなと思ったものを信じて、ちゃんと表現する、ということを大切にしています。
結構、私が描いているマスコット的なキャラクター達は、イベントでも、じっと見てくださる方が多いんですよ。
だからこそ、意味があるのかどうかがわからなくても、自分のイラストに魅力を感じてくださる方がいるんだ、ということを信じて描くようにしていますね。
―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?
おるかみど:漫画や絵本から影響を受けているのではないかな、と思います。
本を読むこともとても好きなのですが、『ちいさなちいさな王様』という絵本の作画を担当されているミヒャエル・ゾーヴァさんがすごく好きで、その方の画集は何度も読み返しましたね。
あとは、子供の時に読んでいた『サイボーグクロちゃん』という漫画です。
可愛い絵柄なのですが、実は暴力的だったり、人間の寂しさだったりが描かれているんです。
それがすごく好きなので、自分の作品にも、可愛い中にどことなく、そういった寂しさなどの様々な感情が込められたら嬉しいなと思っています。
『サイボーグクロちゃん』は、初めてお小遣いで買った漫画で、結構可愛いのに、ダークなところがあって…私は多分、そういう作品がすごく好きなんですよ。
自分の作品を見てくださった方からも、「可愛いけど、どことなく寂しさがあってすごく見ちゃいます」とか言われると、すごく嬉しいですね。
先ほど挙げた『ちいさなちいさな王様』の表紙も、どことなく感情を揺さぶられるような、可愛いだけじゃない魅力をすごく感じて、好きなんです。
―なるほど。確かに、そう伺って改めて作品を拝見すると、ブラシ跡など、ミヒャエル・ゾーヴァさんの色の塗り方をリスペクトされているのかな、というのが伝わる気がします。
おるかみど:本当ですか、嬉しいです!
画集なども何度も読み返していますし、そういった気持ちを自分の絵にも込めたくなるのかなと思います。
とはいえ、まだまだ今も勉強中ですが…
結構、美術展などにも行くのですが、油絵など、絵の具や筆のタッチが残っているイラストもすごく好きなんです。
私は今、オールデジタルで描いているのですが、絵を見てくださった方からも「アナログで描いているのかと思った」と言われることがありますので、自分の気付かない内に、そういった筆のタッチなども意識して描いているのかもしれませんね。
―背景も、ベタ塗りでなく、筆跡というか、ムラが残されていますよね。
おるかみど:そうですね。
背景を描くのは勉強中で、なかなか上手く描けない、というところもあるのですが…
モチーフがたくさんあるよりも、モチーフひとつをドンと描いて、それがただそこにある、みたいなイラストもすごく好きなんです。
なので、今は背景も一色だけ、という作品が結構多くなっていますね。
―ありがとうございます。では、画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?
おるかみど:画力を上げるためには、とにかく描かなきゃ、と強く意識していますね。
動物を描くことでいえば、結構、動物園に行ってスケッチをしています。
形を捉えるだけではなくて、自分だったらどう可愛く描けるかな、という点を意識して、初めからデフォルメしてスケッチすることもすごく多いですね。
あとは、今は別の仕事もしていますから、日々の疲れが出ると、なかなかインプットができなくなってしまうので…インプットとアウトプットを、意識的に行うようにしています。
イベントで「次はいつ出るんですか」と聞かれることもありますから、求めてくださる方がいてくれる、ということをいつも思い出しながら練習をして…「自分だったら、この絵が部屋にあったら嬉しいかな」とか、そういう部分も結構考えつつ描いていますね。
こういった作品なら、ちょっと可愛くて癒されるかな、とか。
何か少し嫌なことや寂しい気持ちがあった時に、この絵を見たら、少し癒される人もいるかもしれない、とか。
そういった、感情面も意識しながら描く、ということをやっています。
―別でお仕事をされつつですと、動物園などに足を運ぶのも、大変ではないですか?
おるかみど:実は私、家から車で10分ぐらいのところに動物園があるんです。
そこに、1ヶ月に1回ぐらいは行っていますね。
水族館も、車で行ける範囲内にあるんですよ。
土日に行くと、やっぱり人も多くて大変です。
でも、今の仕事は平日に休みがありますので、そこで朝から行って、じっと見て描いたり、ということができる環境ですから、恵まれているなと思います。
大人も子供も楽しんで喜んでもらえるような、作品創りをしたい
―現在、クライアントワークは未経験ということですが、もしご依頼を受けるなら、やってみたいお仕事などはありますか?
おるかみど:絵本や本を読むことが好きなので、いずれ自分でも絵本を作ったり、本の表紙を描いたり、といったお仕事がしたいなと思います。
あとは、個展を開いたりもしてみたいですね。
それから、フィギュアやぬいぐるみなど、立体の作品を求めてくださる方もいらっしゃるので、そこもどうにかして実現させたいなと思っています。
―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?
おるかみど:私は、絵などをきちんと勉強したことがなくて、独学でやっているんです。
ですから、「そもそも私のイラストは受け入れてもらえるのか」とか、「いざ仕事にした時、商業的に使えるんだろうか」という部分で、すごく不安になった時期がありました。
でも、きっと私のイラストを求めてくださる方はいるんだ、ということを信じて描くようにしています。
あと、やっぱり1回きりの人生ですから、何もせずに「何もできなかったな」と打ちひしがれるほうが怖いので、後悔しないように描ききりたいと思います。
―では、活動していて良かったことを教えてください。
おるかみど:自分がイラストを描いた時に、「可愛い」とか「癒される」と言っていただけるのは、本当に嬉しいなと思います。
今も、自分が作ったものを見てもらえて、そういう反応をもらえるとすごく嬉しいので…
SNSやコミティアで声をかけてもらえると、すごく幸せだなと感じます。
―逆に、大変なことはありますか?
おるかみど:私は、自分の脳内にマスコット的なキャラクターが色々と出るタイプなのですけど、自分の健康や精神状態によって、描きたいのに描けない、という時もあるんです。
そこから抜け出すのが、いつも大変ですね。
何を描いても、自分の中にいる本来のキャラクターはこんなじゃないのに、と。
そういう時は、ひたすら外を歩いてみたり、それこそ動物園に行って1周したり…体を動かすことが多いですね。
そうやって、ちょっと汗をかいて疲れ切ったりすると、さっき駄目だと思っていたイラストも、実は結構良かったんじゃないかと思えて、描き直したりできるんです。
毎回大変ですが、そんなふうに、折々やってくる沼みたいな時期を乗り切っていますね。
―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
おるかみど:私のイラストを見てくださる方って、癒されたとか、寂しい気持ちがやわらいだんです、と言ってくださる方が結構いるんです。
なので、先ほど「絵本を描いてみたい」と回答させていただきましたが、子供に対してだけじゃなく、大人が読んで癒されるような絵本を作りたいな、というのが大きな目標としてありますね。
可愛いだけじゃない、可愛い中にも寂しさを埋めるものがあるような、大人も子供も楽しんで喜んでもらえるような、絵本や作品創りをしていきたいです。