「『幼い頃から本当に好きだったこと』を見つめ直した結果」いのうえさぶこさん

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職人の父親を見て、「物作りをするお仕事」に憧れていた

―現在の活動内容について教えてください。

いのうえさぶこ:SNSでイラストレーターをしながら、個人・法人問わずイラストの仕事を受けています。

最近のお仕事としては、個人様ですとVTuberさんからのご依頼が多く、周年グッズイラストなど、グッズ系のイラストを描かせていただいていますね。
法人様は、VRChatワールド内でのアパレルイベント用広告イラストや、法人VTuberさんのグッズやイベントイラスト、他にもチラシや書籍のカットイラストなど、幅広く色々とやらせていただいています。

―イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。

いのうえさぶこ:絵を描くことは、幼少期の頃からずっと続けていました。
元々私は、父親が建築業の職人ですので、「自分で物を作ってお仕事をする」ということに、小さい頃から「格好いいな」と憧れていたんです。
ですので、音楽でも、映像でも、もちろんイラストでも、とにかくクリエイターという職業に就きたいなという夢を、子供の頃から抱いていました。

そんな中、高校までは普通科に通った後、デザインの専門学校に進学したんです。
専門学校では、グラフィックデザインの専攻で、ポスターやパッケージなどを勉強していました。
その時は絵は趣味で描くくらいで、デザインの勉強をメインにしていましたね。
そうして就職活動を始めたのですが、ちょうどコロナ禍の時期とバッティングしてしまい、なかなか決まらず…
だからこそ余計に慌てて、いろんな会社を受けて、とりあえずグラフィックデザイナーにならなければ、と焦っていました。
お陰で何とか、ギリギリ卒業までには進路が決まったのですけど…
実際に働いてみると、自分が思っていた以上にお仕事をうまくこなせない、心の底から楽しめないというジレンマに陥ってしまったんです。
本当に、これがやりたかったことなのかな、と思い始めるようになって。
仕事自体も、やっぱりまだコロナ禍の影響を受けていましたから、波にも上手く乗れずで、そのままちょっと一度、お仕事をお休みすることになりました。

そこで、もっと、自分が本当に幼い頃から好きだったことや、やってみたかったことって何だったんだろうな、というのを見つめ直す時間が生まれたんです。
そうして、やっぱり絵を描くことが好きだった、という部分に立ち返り、趣味じゃなく本気で向き合ってみようと考えたのが、今のお仕事に繋がるきっかけになりました。

初めは友人から依頼を受けて、ちょっとお金をいただいて描く、くらいの活動をしていましたが、本格的にお仕事をいただいて、対外的にもアピールをし始めたのは2022年くらいからですね。
今は一応、Web関係のデザイナーとして、週3くらいでアルバイトをしながらイラストを描く、という形で兼業しています。

 

―ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?

いのうえさぶこ:幼少期から、カートゥーンのアニメが好きだったんです。
中でも、主人公達より、敵サイドにいる子達がとても好きで。
それらのキャラデザや色味もすごく好きでしたから、そういうのを見てきた中で「自分でも描いてみたい」と思うようになり、色々試行錯誤をした結果が今、という感じですね。

カットイラストを100枚描く、という仕事に出会った

―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。

いのうえさぶこ:プライベートもそうなのですが、私は黒がものすごく好きなんです。
自分が着る服もほぼ黒しかない、というぐらい本当に。
なので、もちろんカラフルな色も使いますし好きなのですけど、やっぱり「黒を画面の中にどう綺麗に収めていくか」を意識していますね。

あとは、塗りよりも線画作業のほうが得意ですので、『色を無くして線画だけの状態にしても寂しくならないような絵』を目指して描いています。

―なるほど。そんな中でも、とてもいのうえさんらしい色使いが作品に表れていると思うのですが、黒以外の部分でも何かマイルールなどがあったりするのでしょうか?

いのうえさぶこ:色数をなるべく抑える、という部分は意識しています。
何色まで、と決めているわけではないのですけど、例えば、髪の毛用に作った色を、髪の毛以外の小物とかにも散りばめて、うるさくならないけれど寂しくもならないように、とか。

結構、厚塗りの方やアニメ系の方の絵の場合、写実的であるほど、いろんな色を使っていらっしゃるじゃないですか。
でも私の場合、どちらかというと塗りメインの絵ではありませんので、同じように色数を増やしてしまうと、ごちゃごちゃしてしまうな、と思ったんです。
加えて、私自身が色数を抑えるような作品も好きということもあり、そこを意識するようになっていきましたね。

 

―ありがとうございます。では、影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?

いのうえさぶこ:画面構成やモチーフ選びなどで参考にさせていただいたのは、画家の山本タカトさんですね。
遠近法が独特で、平面的な絵を描く感じとか…
ドクロなどのちょっとダークな要素もありつつ、色気もある、みたいな…
そういうモチーフ選びがすごく衝撃的で、影響を受けていると思います。

あとは先ほどもお伝えした、カートゥーンアニメの敵キャラも、もちろんそうですね。
『キム・ポッシブル』という作品の、シーゴーというキャラクターが本当に好きでした。
元々、母が海外のドラマやアニメがすごく好きで、今でいうサブスクみたいな有料チャンネルに登録していたんです。
それを私が小学生くらいの時に「面白いよ」とおすすめしてくれて、そこからカートゥーンアニメの存在を知りました。
でも、絵として描き始めたのは大人になってからで、それまでは、山本タカトさんの影響によるリアル系とか、綺麗な男性を描く、みたいなことにもチャレンジしていましたね。
そういう時期もあった上で、徐々に今の私自身の作風に変わっていった感じです。

―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?

いのうえさぶこ:とにかく枚数をこなすことが、私の中では一番効果があったかなと思っています。
ここ最近、やっと自分の中で「これはいい絵かも」と思える作品を生み出せるようになったのも、2023年頃に『カットイラストを100枚描く』という仕事を受けたお陰かな、と感じていますね。
100枚それぞれ、必要になってくるイラストの構図なども違いますから、いろんな資料を見ながら、いろんなものを描かなければなりませんでした。
でも、その経験があったからこそ、一気に描ける幅が広がったというか、画力が上がったなと感じましたね。

 

―100枚はなかなか聞かないボリュームですね。ちなみに、そのお仕事依頼が来る前から、数をこなすことに対しては何か意識しておられたのでしょうか?

いのうえさぶこ:いえ、その仕事を受けるまでは、そこまで考えていませんでした。
それまではどちらかといえば、モチベがある時に描こう、気分が乗ったら描こう、くらい
の感じでしたね。
でも、お仕事ではそんなことも言っていられない、という部分もありますから、クオリティを上げるためにも、いっぱい描くのはやっぱり大事なのかなと改めて思います。

多くのイラストレーターさんの中から、私を見つけてくれた嬉しさ

―現在は、どのようにお仕事を取っていらっしゃるのでしょうか。また、忙しくなった際に受けるお仕事の優先順位などもあれば、教えてください。

いのうえさぶこ:基本的には、SNSを見てくださった方から、DMやメールでお仕事をいただいています。

お仕事自体は、私自身、いろんなことをしてみたいなと思っていますので、スケジュールが厳しくない限りは、お受けしている感じですね。

 

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?

いのうえさぶこ:まずは体調管理ですね。
これに関してはとにかく、夜は寝る、ということを大事にしています。
日付はなるべく越さないようにしていますね。

あとは、もちろん収入の面で不安に思う時もあります。
一定の額を毎月もらえるわけではないので、どうやって安定させていくべきなのかなとか、長く活動していくために今できることは何なんだろう、とか、いっぱい考えたりしますね。

私は兼業している分、もう1つ収入源があるお陰で、メンタル的に落ち着いている部分もあるのかなとは思うのですけど…
それでも、とことん不安な要素に向き合う、みたいなことは結構しているんですよ。
私の場合、そうして1人でずっと考えていると、今すぐできることと、もうこれは今考えてもどうしようもないな、ということの両方が出てくるんです。
そうなった時に、営業でも、絵を描いてSNSに上げることでも、今すぐ実行に移せると思うものは、もう片っ端からなるべくやるようにしていますね。

 

―ありがとうございます。では、絵を仕事にしていて良かったことを教えてください。

いのうえさぶこ:イラストを納品して、直接お礼を言っていただけることももちろん嬉しいのですけど…
その手前の段階として、既に今いろんなイラストレーターさんがいる中で、私を見つけてくれて、お仕事を頼みたいと思ってくれているんだな、という部分が、私には一番嬉しいことかもしれませんね。

―逆に、大変なことはありますか?

いのうえさぶこ:先ほどの回答と重なるのですが、体調管理と、収入のバランスの面ですね。
「今この仕事を受けたいけれど、これを受けたら体調を崩すな」みたいなこともありますので…そういう部分の自己管理が、一番大変かなと思いますね。

ただ私の場合、仕事も絵ですが、趣味も絵を描くことが一番好きなんですよ。
なので、例えばお仕事で詰まったり、不安だったりという大変な一面が表に出てきた時は、もうそれとは関係ない、自分が今描きたい絵を描いています。
あとは、漫画でも映画でも、昔から好きな作品などを見返すこともありますね。
そうすると初心に返るというか、1回リセットされる感じがして切り替えられるので、よくやっています。

 

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。

いのうえさぶこ:今もいろんなお仕事をいただいていますけど、もっと幅広くいろいろやってみたいなと思いますね。
アパレルイベント用の広告イラストを描かせていただいたことはありますが、自分の絵がお洋服になって店頭に並ぶ、という経験はまだありませんから、そういうこともしてみたいです。

あとはもう、長くこの仕事を続けていきたいですね。

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