きっかけはたまたま描いたエッセイ漫画
―haraさんの現在の活動を聞かせていただいてもよろしいですか。
hara:現在は自主制作中心に、絵を描いてることが多くて関西の創作イベントとかの参加を中心に活動しています。
―絵の活動をしようと決心されたきっかけとか理由などを教えていただけますか。
hara:元々は自主制作だけしてSNSに投稿していたんですけど、ある時SNSでたまたまエッセイ漫画を描いたタイミングに『書籍化に向けてもっと描いてみませんか』というお声掛けをいただいたのがきっかけでした。
それまでパートをしながらお休みの日に絵を描くような形で活動をしてたんですけど、そのときの職場が副業禁止だったので、書籍を出版するときに『さすがにどうなんだろう・・・』と思いつつ、でも絵を仕事にしてみる方向に舵を切るきっかけになるかもと思い、そのタイミングで仕事を辞めて絵の仕事をやってみることにしました。
それまでは絵だけ投稿していて、プラスサイズの女の子を描いたりしてるんですけど、『自分が何でそれを描くに至ったか』みたいなことを特に説明せずに描いていたんですね。
気恥ずかしさというか、あまり自分の裏側の話をすることに少し抵抗があったのもあって、絵だけ投稿してたんですけど、ある時こういう絵をなぜ描いているかを説明しないと伝わらない部分も多いんじゃないかって思ったんです。
そこから、『こういうきっかけがありました』『自分にはコンプレックスがあって』みたいなものを3ページくらいの短い漫画を描いて投稿しました。投稿した日はもう恥ずかしくて、反応がくるのが怖いとか、友達にも読まれるんだろうなとか色々考えながら寝て起きたら、翌日結構反応がありまして。
でも、その漫画をきっかけに出版社の方からメッセージをいただいたので、絵以外にもこうして伝える形があるんだなと思い、裏側を伝えていくのも頑張ってみようかなと思いましたね。

―絵の投稿をする前も絵を描かれていたんですか。
hara:そうですね。絵は幼い頃からずっと描いてました。大学も美術系のところに進学していました。
―エッセイの話は大学出られてすぐのお話だったんですか。
hara:そうですね。それこそ大学で絵を描いていたころがコンプレックスのピークでした。絵を描いて発表している人を山ほど見かけるんですよ。大学でもそうですし、就職活動をしていても、やっぱり自分より上手い人もいっぱいいるし、自分より綺麗でかわいい人が自分より上手く描いていてみたいなコンプレックスもどんどん積み重なったりして。
その頃が一番、『私が描かなくてもいいんじゃないか』みたいなことに悩んだ時期で絵をやめようかなと思ったりもしました。
ですが、この頃にプラスサイズモデルさんの存在を知ったのがきっかけで、こんなに楽しい世界があるというか、みんなぽっちゃりしているなかで気にせず自由におしゃれを楽しんだり、『シンプルに楽しく過ごして生きてもいいんだ』みたいなことに衝撃を受けて、そのコンプレックスの解消と、もう1回描いてみようかなっていう想いが合致して、今のスタイルになりました。
前向きな想いをイラストに
― haraさんの作品はタッチが暖かくほんわかした色使いが特徴的ですが、その作品の方向性をどうやって決めていきましたか。
hara:絵柄はあまり自分で意識したことがなかったので、今みたいに周りの方に印象を言っていただいて、自分の作品はそういう特徴があるんだみたいな発見が多いですね。
でも、何色の絵だなとか人物が2人の絵だなとか、見たらパッとわかりやすい作品になるように心がけています。違う体型の女の子2人組を描くことが多いんですけど、マイナスな意味で描いているんじゃないんだよっていうのを伝えたり、描き方によっては誤解されることも多いかなとも思うので、前向きな意味で楽しく描いているんだよというのを1番に伝えたいので、それが絵柄や色に出てるのかも知れないです。

―絵を描くに当たって大切にしていることとか意識をされていることがあれば教えていただけますか。
hara:体型が違う2人を描く上で、2人が仲良く楽しんでいる姿を描くことです。私にとってはそれが当たり前なんですが、まだまだ世間的に変なメッセージがのっけられがちではあるんですよ。
「ダイエットのビフォーアフター」や「コンプレックスや優劣を煽るような構図」として受け取られがちで。でもそうじゃなくて、むしろそうした見方に対する“カウンター”のつもりで描いているんです。
私はただ純粋に楽しんで描いているし、その楽しさが伝わってほしい。見てくれる人にもポジティブな気持ちが届けばいいなと思いながら描いています。

―影響を受けたクリエイターさんとかっていらっしゃいますか、またどんな点で参考にされてますか。
hara:特定の方に影響を受けたというのは思いつかなかったんですけど、元々小さい頃から漫画を読むのが好きで、漫画の絵の描き方はすごく影響を受けてるかなと思います。シチュエーションをイメージしてひとコマ漫画的に描くのも好きなので、結構漫画チックな人物の描き方になってると思います。
―何か作品のクオリティを上げるために実際やったこととか今から上手くなりたいなっていう、皆さんに向けてこれおすすめだよみたいなものがあれば教えていただけますか。
hara:画力向上に繋がってるかはわからないのですが、模写は小さいときから好きで今でも割と描くので、結構オススメかも知れないです。
好きな漫画の好きなコマを描き写してみるとか、なんかいいなと思ったファッションとか風景の写真、かわいい部屋の画像とか、好きなものを模写してみる。正確なデッサンとかじゃなくてもいいので、自分なりに模写するのはすごくいいかなって思います。
描くこと自体に集中する癖もつくし、自分の線に自分の好きなものを落とし込むと描くこと自体も楽しくなって、引き出しも増えるような気がしますね。
模写は小さい頃からよくやってきましたが、大人になってやってみると、『服の描き方はわかるけど、意外とファスナーの描き方は知らないな』とか気づくことがたくさんあるので、今でも模写は好きですね。
―現在はどうやってお仕事を取られていますか。またお仕事が増えてきたときにどんな基準で優先順位を立てられたり、選ばれたりとかされていますか。
hara:最近は自分の体力とかキャパシティに無理のない形で受けるのを優先しています。
前まで声かけられたら、全部受けるのが誠意だと思って何でもやらせてもらう形をとって、どんどん仕事を受けてたんですけど、そうすると最終的にお互いのためになっていないこともあったので、なるべく無理をしないことを基準にしてます。
SNSを見てるとガンガン描いている人も多いですし、それ見ると焦ることもあるのですが、やっぱり自分に合ったキャパシティがあると思うのでそれを大事にしなきゃなと思っています。

ときには周囲に頼ることも必要
―クリエイターとして活動する上で不安とかってありましたか。もしあればどのように向き合ってこられたのかっていうのを教えていただいてもいいですか。
hara:自分の内面が一番不安というか課題だったかなと思いますね。めちゃくちゃ頑張らなきゃと自分で思い込んでパンクしてしまうこともあるので。
結構クリエイターは1人で何でもできてすごいねみたいなことを言われることが多いんです。確かに1人でやることも多いんですけど、同じぐらい周りに頼ったりとかが大事だなと感じています。
これに関しては私自身もまだどう向き合っていくか模索している途中です。
私は1人で何でもやりたいって思っちゃうタイプなんですけど、それだけじゃできないこともたくさんあるので、描く作業自体は1人で頑張ってみて、それ以外は結構周りに頼ったり、何か聞いたりとかバランスよくやっていくことが課題です。
―絵をお仕事にしていて良かったことと大変なことがあれば教えていただけますか。
hara:仕事にすると自分の発信する範囲外にも作品やメッセージが届く機会が多いのでそれがすごくありがたいことだなって思っています。
SNSでも十分に発信できる時代ですが、それだとアルゴリズム的に自分と似た発信だったり自分と似たものを好んで見てくれてる人以外に届けることが難しいので、仕事で別の媒体を挟んで発信することで、また違う層に広がるのはすごくありがたいことだなと思うのと同時に大変なことでもあるなと思っています。
自分がエッセイを出したときに私の本と『たまたま書店で見つけて出会いました』って言ってくださった方がいて、それがすごく嬉しくて。書籍化には悩んだことや大変なこともあったんですけど、書籍化したからこそ、その方に届いたと思うので、すごく嬉しかったです。

―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
hara:今は自主制作中心ですが、それ以外でも作品をたくさん作りたいなと思っています。
私の作品は自分のメッセージを結構のせていることが多いので、人の目に触れれば触れるほど嬉しいし、もっと見てもらって、それで見た人の考えに何か良い影響があったり、リアルタイムじゃなくても後から思い出して私の作品と出会ってポジティブな気持ちになってもらえるようなことがあったらすごく嬉しいですね。
そういう出会いを少しでも増やせるように作品を見てもらう機会を今までよりも増やしていきたいです。

