「髪の線と、些細なことで見え方が変わる表情を大切に」

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一般的な働き方も目指してみたものの、自分には合わなかった

―現在の活動内容について教えてください。

まるゐ:個展やグループ展のために作品を制作・発表して、その展示作品をまとめた本やグッズを作り、イベントや通販サイトで販売する、という活動を同時進行で行なっています。
イベントは、関西圏以外にも東京や名古屋の方でも参加したりしており…今年は10回ほど出ていますね。

―イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。

まるゐ:子供の時から絵を描くのが好きで、成安造形大学に進学してイラストの勉強をしていました。

でも、そこで4年生になって就活をする、というような時期になっても、具体的にやりたいことがわからなかったんです。
特にゲームを作りたいわけでもない。アニメを作りたいわけでもない。
さらに言うと、組織の利益のためにみんなで協調していこうという空気にどうも馴染めないな…と思いながらも就活を続け、卒業制作にも取り組んだりしているうちに、卒業の時期になってしまいました。
クリエイター系の会社も受けてみたのですが、「あなたは会社に入って描くというより、 自分の個性でやりたいタイプよね」と言われたりもしました。

結局卒業式の頃にやっと、絵とは全く関係のないところに就職を決めました。
でも、そういった『一般的なルート』をやってみようと試してはみたものの、やっぱり自分には合わなくて…
体調を崩して休職をし、就職して1年で退職することになりました。
そうして休職をしている間に、「もうどうせ辞めるから」と、個人事業主の届けを税務署に提出して、絵を生活の中心に置くことになりました。

仕事を辞めた後は、とりあえずできることが絵を描くことだけだったというか、やりたいことをやってみよう、と決めた形でしたね。
その結果が、今に繋がっています。

―ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?

まるゐ:スタイルや方向性については、今もあまり定まっていない部分もあると思うのですが、現在は特に人物や、その人物の髪の毛を細かく線で描写する、というのがすごく好きで、意識していますね。
あとは植物が好きなので、それを組み込んで描くことが多いです。
実家が自然に囲まれた場所にあったんですよ。
すごく身近に草木が生い茂っている環境でずっと暮らしていたので、それが自分の中に原風景としてあるのだと思います。
そういうふうに自分の中にある「好き」が、現在の方向性に繋がっているように思います。

―髪の毛を細かく描かれるようになったことには、何かきっかけがあったのでしょうか。

まるゐ:きっかけなどは、実は自分でもちょっとわかりません。
ただ高校時代に漫画研究部で描いていたイラストを改めて見返していたら、その時から既にかなり髪の毛に力を入れて描いていたんですよね。 

形を変えつつも、髪の毛をどう描くか、線をどう引くかという部分を、割と作品の真ん中に置いて描いているような感じです。

がむしゃらに練習するより、好きなもので練習をしたほうが続く

―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。

まるゐ:髪の毛や、そういった線画部分のことで言えば、「線を適当に描かない」ということを大事にしていますね。
ガサガサ短く重ねたり、汚い線の交わり方にならないように、描くなら一筆書きで一気に描く、みたいな。
そういった部分に神経を集中させながら描いています。

それから、人の表情。
自分は、思い切り笑っている絵などはあまり描かないのですけど…
だからこそ、微妙な眉尻の角度だとか、眉の真ん中のほうが寄っている、とか。口角のほうに線一本、点一つ足すだけで笑っているふうにも見えることもあれば、すごく怒っているようにも見えたり、とか。
そういったほんの些細な描き込みの違いでも印象が変わってしまうと常に感じているので、試行錯誤と微調整を重ねながら大事に描いています。

―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか? 

まるゐ:漫画家の高橋留美子さんや、芸術家の山口晃さんなどですね。
それから、自分が絵を描く上で精神的な影響を受けているのは、星野源さんです。
自分は、頭の中にある心象風景を形にしたいなという感じで制作しているところが多いのですけど…
星野さんは、昔から好きだということもあり、世界観だとか、本などで読んだ考え方だとかが、結構今の自分の物作りのベースに入ってきているように思います。

あと、絵を描く原点というか…思いのルーツだなと感じるのが、今はなくなってしまった『キャラさがしランド』というまちがいさがしの雑誌でした。
特にデジタルで描く時にそうなのですが、自分はいろんなものが、いろんなところに散りばめられていて、全体的にいろんな要素がある絵、というのを描くのが好きなんです。
幼い頃、『キャラさがしランド』を両親が買い与えてくれていたのですが、それをトレーシングペーパーで写し描いたりしていた時の影響がある気がしていますね。

―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?

まるゐ:大学に入る前は、受験用のデッサンなどをやっていたのですが…
そのデッサンよりも、大学に入ってからやったクロッキーが力になったなと感じています。

それからよく本屋などでも売られている、絵を描く人用に作られたポーズ集を使って、観察して模写するということをよくやりますね。
未だに人体がどうなっているのかわからないと思うことがあるのですが、模写や観察を繰り返してわからない部分を無くしていくことで、かなり柔軟に絵のアイデアが出せるようになっていると感じます。

あと、自分が好きなドラマなどの好きな場面を一時停止して模写して描く、ということもよくしていました。
特に大学1、2年生の時は、自分が好きで見ていたドラマがありましたので、毎週模写をして、同じドラマを好きで見ていた先生に放課後に見てもらっていましたね。
無理に好きでもないものを模写するよりは、好きなものをモチーフにした方が続けやすいと思うのでおすすめです。

壁一面に飾るような、大きな絵を描いてみたい

―現在は、クライアントワークは受けておられるのでしょうか? 

まるゐ:ミュージックビデオ用のイラストなどで、ご依頼をいただくことが多いですね。
今年は個展やグループ展など作業量の多い制作に取り組む期間が長く続いたため、手が回っていなかったのですが、ぜひまたやってみたいです。

―なるほど。ちなみに、クライアントワークが重なってきたり、イベント参加や展示の準備が増えてきた時には、どのような優先順位や基準でお仕事を選ばれているのでしょうか。 

まるゐ:今のところ、特に優先順位などは設けていませんね。
今のところはめちゃくちゃお仕事が重なる、ということがあまり発生していないので、描くスピードを速めて、お受けできるものはお受けする、という感じです。
結局、自分の技術やスピードが向上していればスケジュールに入れられる量や、それを調整する余裕みたいなものにも自由がきいてくると思うので、クロッキーではないですが、速さとクオリティを両立させる訓練も必要だよな、ということは折々思います。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?

まるゐ:自分の場合は、特に先方とのコミュニケーションや事務的な部分で「こんな場合はどう対応したらいいんだろう?」という時に不安を感じますね。完全に個人活動なので上司や先輩のような、すぐ質問できる存在が近くにいるわけもなく…
個々人とのやり取りですから、その内容を公にして「これってどうすればいいですか?」とは聞けないので、何が正解なのだろうと悶々としてしまいます。
できることなら、そういった不安を相談できる場所があれば良いなとは思いつつ…
今はどうにか、似た事例などを自分で探して調べて、解決できるように頑張っている感じです。

―ありがとうございます。では、絵を仕事にしていて良かったことを教えてください。

まるゐ:自分の場合、どこかに出社して誰かと一緒に何かのために作業をする、ということが合わなかったので、家で作業できるという環境がありがたいですね。
あとは、絵を描いたり本を作ったりしている時は1人なので、これがどんなふうに人に届くのかが全然わからないままに作業をしている、ということがほとんどなのですが…
展示やイベントに出たりした時には、直接お声をかけていただいたりして、人と繋がってコミュニケーションを取れる機会をいただけることも、良いなと思いますね。
自分の絵を見て「良い」と言ってくれる人がいるんだなとか、わざわざ足を運んでまで絵を見に来てくれる人がいるんだな、と実感した時に、本当にすごくやっていて良かったなと思います。

―逆に、大変なことはありますか?

まるゐ:やっぱり収入が安定しづらい部分ですね。
それから、アウトプットを続けなければいけない部分も大変です。
それを仕事にしてしまっているからこそ、アウトプットばかりに注目していたら、いつかネタ切れをするというか、厳しい感じがする時がありますので…
仕事としてアウトプットをしないといけないけど、同時にインプットも置き去りにしないようにする、という、仕事と息抜きと勉強のバランスが難しいな、と感じることもあります。

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。

まるゐ:個展の機会を増やして活動できたらいいな、と思いますね。
展示する絵も普段は色紙やA4程のサイズでの制作が多いのですが、いつかは壁いっぱいの大きな画面に緻密な絵を描いてみたいです。
そうやって、自分の描く絵を少しずつ進化させていきたいな、と思っています。
イベントの方も、もっと色々な地域に足を伸ばして活動していきたいです。

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