人間を描くのが苦しいので、楽しいものを描いていこうと思った
―現在の活動内容について教えてください。
犬井トオル:現在はイラスト制作と漫画制作が主なお仕事になっていて、専業のイラストレーターになってから1年半くらい経ちます。
最初は、いわゆるキャラクターIPのお仕事から始まりましたね。
キャラクターデザインからご依頼をいただいて、イラストと漫画を通してSNSでそのキャラクターを展開させる、というお仕事をいただいていました。
なので、初めからイラストと漫画、適度に両方で活動していた形です。
当時は兼業で活動していたのですが、途中から専業に切り替えました。
―では、イラストレーターとしてお仕事をしようと決心したきっかけを教えてください。
犬井トオル:絵はもちろん、キャラクターを作るのが元々好きだったんです。
なので、自分のキャラクターが日常生活のいろんなところで目に入るようになったら嬉しいな、と考えたのがきっかけで、キャラクターを作り、自分のSNSでの発信を始めました。
その後、自分のキャラクターを世間に出すなら、やっぱり数字は必要かなと意識するようになり、色々テコ入れしたり考えたりして、エッセイを書いてみたんですよ。
絶対に伸びるだろうと思うネタを用意して、それを当時のTwitter(現在のX)で発信したら、見事バズりまして。そこから、お仕事が来るようになりました。
当時はeスポーツ系の会社に勤めていたのですけれど、フルタイムで仕事をしながら毎月20本納品、みたいなことをやっていましたね。

―ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?
犬井トオル:やっぱりキャラクターを描くのが好きですから…
人間も描けると言えば描けるのですけれど、私は人間を描くのが苦しいので、楽しいものを描いていこう、というところで(笑)
私にとって、続けても苦にならないのが、やっぱり可愛い系のキャラクターだったんです。
なので、この方向性でいこうと決めました。
人間を描くと、他のイラストレーターさんがアニメのイラストの仕事がきましたとか発信されていたりするので、いいなと思う時もあるのですけど。
結局「あれもこれもそれも私描けます」だと、「あなたは何の人ですか」となってしまって、逆に仕事が来ない、というイメージがありますから。
やっぱり「こういう系統と言えばこの人」みたいなポジションを自分で作り上げていきたいなと思って、可愛い系のキャラクターで頑張っています。
『犬のきなこ』のデザインは、当初、全くの別物だった
―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。
犬井トオル:可愛いだけだと少しパンチが弱いかなと思いますから、自分の中で『ぽてっとした可愛いキャラクター』というキャッチフレーズを持つことを強く意識して、描いています。
主にお腹と脚を丸っぽい感じにして、頭身も意識して。
今のキャラデザに落ち着くまでは、少しかかりましたね。
特に『犬のきなこ』に関しては、当初のデザインは全く別物でした。
3頭身くらいありましたし、もう少し大きかったですね。細長くて、柴犬ベースで、口が編まれている感じでした。今よりも、ダーク寄りな感じだったんですよ。
元々はそういう系統の絵が好きで、ダーク寄りな『きなこ』を初めに描いたのも、20年ぐらい前でした。
それを、活動を改めて始めるに当たり引っ張り出してきて、今ならこの子はどうなるだろう、と考えたところから別物に生まれ変わった形です。
まずはフォルムから変わりましたね。
人気のキャラクターを色々見ていると、全体的に細くないものが多いイメージがあったので、描き変える上で、丸っこさは特に意識していました。
―では、影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?
犬井トオル:やはりナガノさんですかね。
絵の活動を再開したきっかけもナガノ先生の作品を見て色んな衝撃を受けたからになりますし。
キャラクターたちが”生きてる”って感じがしてたまらないです。

―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?
犬井トオル:SNSで流れてくる『こういうふうに描くと上手くいくよ』みたいなものは、片っ端からブックマークして、試していますね。
それからやっぱり、いろんな作品を見ます。SNSで人気、かつ自分の系統の最前線を走っている方を色々見て、研究しています。
あと、私は日常にキャラクターがいる作品を描くことが多いので、外出時に「この画角いいな」「この日の光いいな」と思うものがあれば、写真に撮ってストックしていますね。
見て描かないと、下手なので。
リアルな資料があればあるほど、精度が上がるかなと思っています。
―なるほど。でも、専業でイラストレーターをしておられると、外に出る機会を作るのもなかなか大変だったりしませんか?
犬井トオル:そうですね。全然家から出ない時もあります。
なので今は、食材は買い溜めしないようにしています。
それによって毎日出る時もありますし、少なくとも3日に1回くらいの頻度で外に出ていますね。
とはいえ、締め切りが近くなると本当に出なくなってしまうので、そこは気をつけています。
―素晴らしい。ちなみに、SNSをしっかり見たりなどの研究時間は、今も取っていらっしゃるのでしょうか。
犬井トオル:ちょっと時間が空いたら、すぐに見ますね。もうSNS中毒みたいになっていますけど(笑)
あと、Xのアナリティクスもめちゃくちゃ見ます。
先月インプレッションがこれだけ高かったのはどうしてだろう、とか。
今月低いから、もうちょっとこういう系統を増やして数字を伸ばそう、とか。
結構、意識していますね。

休みという概念が自分にはなかった
―現在は、どのようにお仕事を取っているのでしょうか。また、お仕事を受ける際の優先順位などもあれば、教えてください。
犬井トオル:私はクリエイターEXPOやOGBS(オーダーグッズビジネスショー)などの展示会に出展しているので、そこで相談に来てくれた企業さんからお仕事を取る、などが多いですね。
あとは、そろそろ仕事がなくなりそうだなという時に、慌てて営業メールを送ります(笑)
過去に関わった企業さんに「新しいポートフォリオです」とメールしてみたり、そういった感じです。
仕事が重なった時などの優先順位に関しては…そうですね。締め切り重視ですね。
受けられたら受けますし、難しそうであれば、まず締め切りの提案をします。「この時期になりそうなのですが、如何でしょうか」とか。
もし、その時期だと遅いんですよとお返事いただいてしまった時は、次に知り合いのイラストレーターさんをご紹介しましょうかと提案して、その場でスパッと切れないようにしていますね。
繋がっていたら、後々何かしらがあるかもしれませんから。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?
犬井トオル:仕事がない時は「マジでやばい」みたいになっていたのですけれど、意地でもバイトをしたくなかったので、どうにかこうにか奇跡的に生き延びていました。
そういった不安は常にありますね。
ただ、『不安を解消するために動く』ということも意識しています。
メンタルはさほど弱くないほうなので、それで何とかなっていますね。
私の場合、1回それをすると甘えてしまいそうなのでまだやっていないのですが、最終手段バイトをする、でもいいとは思っています。
バイトしながら、また仕事が入ったら描けばいいや、と。
生じる不安には、そういった向き合い方をしています。
―ありがとうございます。では、絵を仕事にしていて良かったと思うことを教えてください。
犬井トオル:いろんな人に、自分の絵やキャラクターを褒めてもらえることですかね。
あとは、企業さんのキャラクターを描かせていただいたりもしているので、そういった企業さんのキャラクターを「可愛い」と言って褒めていただけることも、とても嬉しいです。
―逆に、大変なことはありますか。
犬井トオル:もう日常になってしまっていて、実際に自分が大変と思っているのかどうかがわからないのですけど…
先日、親に「お正月は休めるの?」と指摘されまして…休みという概念が自分にはなかった、ということに気づきました。
起きたら仕事をしますし、ご飯の時以外は描きますし、趣味も絵なので、その辺りがまぜこぜになっているのが良くないのかもしれない、と思いましたね。
自分にとってはそれが不満というわけではないのですけれど。
好きな時に休めるといえば休めますし。
ただ、その辺りのバランスが難しいなとは思います。

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。
犬井トオル:自分の描いたキャラクターのグッズ化はしたいですね。
カプセルトイ化したいな、というのがあります。
それから、『犬のきなこ』以外のキャラクターも育てていきたいなと思っているんです。
ライオンとウサギも今、戦略を練っていまして。
数字がある程度取れるようになったら専用アカウントも作って、伸ばしていきたいなと考えています。
グッズ化とキャラクター育成が、目下の目標ですね。

