空間デザインの仕事から、絵の道へ
― 現在の活動について教えてください。
おらひらお:今は作家活動をしながら仕事をしています。自分の好きな作品をつくりつつ、定期的に展示等に出展しています。
もともと、グラフィックデザインや空間デザイン、展示・イベントに関わるデザインの仕事もしてきたので、そういった仕事も並行して行っています。
会社員時代から含めると、数年単位でこの分野に関わり続けています。
―絵を仕事にしようと決めたきっかけは何だったのでしょうか。
おらひらお:小さいころから絵は描いていました。家族もみんなクリエイティブなことをしている環境だったので、絵を描くこと自体はずっと身近にありました。
ただ、最初から「絵で食べていこう」と思っていたわけではなくて、現実的な進路として建築やデザインの道に進んだんです。それはそれで楽しかったですし、学ぶことも多かったです。
でも、やっぱり絵が好きだったんですよね。当時は別の勉強や資格取得にも取り組んでいたのですが、仕事が終わったあとに絵ではなく、そちらの勉強ばかりしている自分に対して、「自分が本当にやりたいことは何なんだろう」と感じるようになりました。資格にも何度か挑戦したものの、うまくいかなかった。その過程で、改めて「やっぱり自分は絵を本気でやりたいんだ」とはっきりしたんです。
結果として、今の道を選んでよかったと思っています。好きなことを仕事にできているので、気持ちの面でもすごく自然です。遠回りに見えて、結局はちゃんと元の場所に戻ってきた、という感じかもしれません。

―現在の作風や作品の方向性は、どのように形づくられていったのでしょうか。
おらひらお:小さいころからアニメや漫画がすごく好きでした。
最初からそういう絵柄や世界観には強く影響を受けています。いわゆる「かわいい」だけの絵というより、漫画っぽさのある絵、キャラクター性のある絵に惹かれてきました。
いろんな人の作品を見ながら描いていく中で、少しずつ自分の好みや方向性が固まっていった感覚があります。
途中までは迷いもありましたが、「自分の作風をある程度定めないといけない」と意識するようになってから、今の方向へ寄っていきました。
昔に好きだった絵柄や感覚がずっと自分の中に残っていて、それが今の表現の土台になっていると思います。
―影響を受けた作品やクリエイターについても教えてください。
おらひらお:小学校のころに特に好きだったのは『ドラゴンボール』ですね。鳥山明さんの影響は大きいです。
それに加えて、ゲームもかなり大きな存在でした。今はあまりやらなくなりましたが、子どものころはいろいろなゲームに触れていて、その世界観に強く想像力を刺激されました。
有名なRPG作品もそうですし、漫画やゲームの中に「入り込む感覚」が昔から好きでした。現実とは違う世界に没入するあの感覚が、自分の絵や発想のベースになっている気がします。

表現のために大事なのは、「体験」を持つこと
―絵を描くうえで、意識していることはありますか。
おらひらお:技術だけではなくて、日常の体験を大切にしています。
どこかに行ったときに感じたこと、人と会ったときの印象、「この人は魅力的だな」と思ったこと、逆に少し引っかかった感情も含めて、気づいたことはメモするようにしています。
そういう体験や感情の蓄積が、あとで作品に落とし込むときの材料になるんです。結局、表現の幅って、絵の技術だけで決まるものではなくて、どれだけいろいろなことを感じ取っているかにも左右されると思っています。
絵の外側にある経験が、絵の中身をつくる。そういう感覚はかなり強いです。

―作品のクオリティや画力を上げるために、実際にやってきたことは何ですか。
おらひらお:やっぱり、とにかくたくさん描くことですね。
SNSに出している作品以外にも、表に出していない絵をかなりの量描いてきました。人に見せているものだけが全てではなくて、その裏にある膨大な試行錯誤の量が、そのまま力になっていると思います。
それに加えて、いろいろな作品やサイトを見て、「この表現はどうやっているんだろう」と調べることも大事です。
デジタルなら機能を調べるし、アナログ的な表現なら実際にどう見えているのかを観察する。そうやって一つずつ理解していくことで、表現の引き出しが増えていきます。
多いときは、1日に10枚、20枚くらい描いていたこともありました。量をこなせば手も早くなるし、仕事としてやっていくならスピードも必要です。結局、描いた枚数は裏切らない。身も蓋もないですが、たぶんそれがいちばん正確です。
フリーで活動するうえで大切にしているのは、「描くこと」と「届けること」
―現在は、どうやって仕事を取っているのでしょうか。
おらひらお:フリーランスとして活動していると、絵を描くだけでは仕事にならないと感じています。もちろん制作のクオリティは大前提ですが、それと同じくらい、自分の作品や考え方をどう知ってもらうか、どう人と出会っていくかも大事だと思っています。最初は展示やイベント、交流の場に自分から足を運ぶことが多かったです。
ただ、続けていく中で「参加するだけではなく、自分で人が集まる場をつくれることも強みになる」と思うようになりました。今は、クリエイターや事業者の方が集まる交流会のような場を自分で企画することもあります。もともと空間づくりや企画に関わる仕事をしていたこともあって、ただ作品を見せるだけではなく、人が集まる場や関係性を設計することにも面白さを感じています。
自分の場合、仕事は一方的に売り込むというより、作品を見てもらったり、人と話したりする中で少しずつ育っていく感覚があります。絵を描くことはもちろんですが、作品を届ける場所をつくること、人とつながるきっかけをつくることも、自分の活動の大事な一部だと思っています。

―フリーで活動する上で、不安はありましたか。
おらひらお:やっぱり一番大きいのは、お金や将来の安定に関する不安です。
会社員と違って保証があるわけではないので、この先40代、50代になったときにどうなるんだろう、という感覚は当然あります。
ただ、その不安に対して自分がやっていることは、ある意味すごくシンプルです。暇な時間をつくらないようにする。制作をする、営業をする、人に会う、展示に出る。止まると不安が大きくなるので、とにかく動き続けるようにしています。
不安を完全になくすことはできないと思うんです。でも、動いていると少しずつ薄まっていく。結局のところ、考え込むより先に手を動かしたほうがいい。その繰り返しで、今の活動を続けています。

―実際に絵を仕事にしてみて、よかったことと大変なことを教えてください。
おらひらお:よかったことは、やっぱり好きなことで仕事ができていることですね。
自分で選んだ仕事を自分の責任でやっている感覚があって、それはすごく充実しています。
会社員のころは、どうしても関わる相手や範囲がある程度決まっていました。でも今は、仕事を通じてもっと広い世界の人と関われる。その意味で、仕事そのものを通して人生を楽しめている感覚があります。
一方で大変なのは、全部を自分で背負わなければいけないことです。仕事が止まれば、そのまま自分に返ってくる。表現だけでなく、営業も調整も判断も、全部まとめて自分の仕事です。
―最後に、今後の目標や展望を教えてください。
おらひらお:今はまだ、良くも悪くもまだ多くの人に「知られていない」感覚があります。もっと成長したいし、もっと活動を広げていきたいです。
SNSも含めて、自分のことを知ってくれる人を増やして、影響力を持てるようになりたいです。その上で、イラストや漫画など、自分がやりたい表現をもっと形にしていきたいと思っています。
遊ぶように楽しみながら生きていける状態をつくること。
表現者としても、仕事人としても、その両方を成立させていくことが今の目標です。

