「『一回、かわいくないと思ってみる』不条理でやさしい世界」山田yumさん

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落書きから始まった、”仕事だと思っていない”働き方

―現在の活動内容について教えてください。

山田yum:基本的にはTwitterやInstagramでイラストをメインに投稿していて、その他にも漫画やYouTubeに音楽も投稿しています。

―一番最初はどこからスタートしたんですか?

山田yum:ぶっちぎりで最初は絵です。小さい頃から絵を描いていて、物心つくタイミングくらいで、絵を描くことが好きだと思うようになりました。

―活動をスタートされてどれくらい経っているんですか?

山田yum:Xのアカウント自体は、今の「山田yum」になる以前から引き継いで使っているので、たぶん2021年スタートだと思います。もう5年くらいになりますね。

―お仕事にしようと決心したきっかけや理由を教えてください。

山田yum:正直、今はまだ駆け出しの身かなと思って、仕事になっているとは完全には思いきれない自分がいるんです。自由に、好き勝手にインターネットで絵を描いて暮らしていたら、たまたま見てくださる方が増えて、たまたま声をかけてくださる企業さんが少しずつ増えてきた、という感じで。貴重な出会いが、インターネットや、色んな方々のおかげで生まれて、今がある、という感覚に近いです。

―SNSに投稿を始められたきっかけは何ですか?

山田yum:「インターネットで活動するぞ!」という気持ちで始めたわけではなくて、ただなんとなく、絵を載せたら友達ができないかな?と思って、いろいろ載せていったら、だんだん見てくださる方が増えていった、という感じです。

―ご自身の作品の方向性は、どのように決まっていったんですか?

山田yum:母親の影響がものすごく大きくて、ゆるキャラだったりキャラクター物がもう大好きで。私の家自体がみんなオタクだったので、そこからアニメや映画や音楽など、家族経由でいろいろと触れて、その中で自分がいいなと思うものと、あまり好きじゃないなと思うものを取捨選択していった結果、だんだんまとまっていった感じですね。

―今の猫のキャラクターに至った経緯を教えてください。

山田yum:最初は猫じゃなかったんです。人間を描いてたんですけど、人間よりも人間じゃない方が好きかもと思って、オリジナルのキャラクターを描き出したら、だんだん猫を描く時間が増えていって、いつのまにか猫になった、という感じですね。
猫は本当に大好きで、耳が大きくて顔が丸くてというフォルムが、描いていていいな、楽しいなと思います。

―今の緩く癒されるタッチは、どこから得られているんですか?

山田yum:抽象画がもともと好きで、パウル・クレーがすごく好きなんです。パウル・クレーを見て、ふしぎなタッチの良さを実感したというか。
少年マンガとか、美少女とかって、形がくっきりはっきりしているなと自分の中で感じていて、そのくっきりはっきりさが、自分にとってはたまにしんどいときがあったりもするので、形を一つに留めない、不定形なものの方が好きで、今のゆるい感じになったのかなと思います。

「かわいくない」と思ってみることで見えてくるもの

―絵を描くにあたって大切にしていること、意識していることを教えてください。

山田yum:変かどうかです。
「これ、よくわかんないよね」みたいなものが結構好きで、「なにこれ?、これは何を言ってるんだ?」みたいなのが好きなんです。
例えばキャラクターが喋っていても日本語になっていないとか、うまく言葉になっていないとか、そういった不条理さみたいなものがものすごく好きで、そういう部分を大切にしながら描いています。
揃っているものじゃなくて、1個だけちょっと違う、みんなが向くべき方向を向かないものが、自分の中では好きですね。

中学生の頃、いくら自分が描いても、みんなと同じようには描けないということに、すごくコンプレックスを抱いていた時期があったんです。いわゆるみんなが描くような美少年、美少女みたいなものが描けなくて、友達にからかわれたりもしていたんですけど、今思えばそれってすごい個性の象徴だったなと思っていて。みんなと一緒になれない描き方をすることに、自分はアイデンティティを感じているのかなと思います。

―影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか?

山田yum:アランジアロンゾさんです。姉妹で大阪でキャラクターショップを立ち上げて、そこから全国、さらには海外にもお店を構えてらっしゃる、すごい方々なんですが、ずっと絵が独特というか、モチーフの選び方も含めて、予想のつかないワールドがあるところがすごく好きで。

特に好きなのが、”わるもの”というキャラクターが、浴槽に具の浮いた鍋スープがはられたお風呂に入る漫画があって、その意味不明さに衝撃を受けました。少し不気味さを感じたり、皮肉だったりとか、かわいいけれど、若干「ムム?」となるようなことを言ってくる、みたいな感じがすごく好きで、そのシュールさや理不尽さは自分の作品にも活きていると思います。

―画力を上げるため、作品のクオリティを上げるために、実際にやった工夫はありますか?

山田yum:これはですね、一回「かわいくないな」と思って自分の絵を見ることです。
かわいいと思って見ると、かわいいフィルターがかかってしまっているので、何を見てもかわいく見えて満足してしまうので、一旦「これ、かわいくないんだ」と思うことで、レイアウトだったり、パッと見たときのインパクトだったりを、フラットな目線で見られるので意識しています。

厳密には、生まれた瞬間から絵が上手だった人なんて、一人もいないと思うのですが、その逆に、ピカソは幼少期からものすごく絵のポテンシャルがあったという話を聞いたときに、「じゃあ自分は一旦、うまくないと思って描くか」と、うまくならなきゃとプレッシャーに思わずに描こう、と考えるようになってから「かわいくない」と思う癖がついたような気がします。

あと、SNSで作品を見てくれる人の中には、パッと見て「かわいい」と手放しで言ってくださる人もいれば、ちょっと構えて見ている人もいると思っていて。その、構えて見ている人にどう声をかけるか、どうアプローチをするかというのが、結構重要なのかもなと考えています。
なので、興味のない人の目線で一度自分の作品を見てみる、ということをしています。
その視点がないと、初めて見る人にはわかりにくいままになってしまうので、初めて見た人にもわかりやすく伝えるにはどうしたらいいか、というのは常に考えるようにしていますね。

―クライアントワークはありますか?

山田yum:ありがたいことに、企業さんからお声がけいただく機会がだんだん増えてきていて、最近はグッズなども一緒に作らせていただいています。
最近は、漫画を投稿しているアカウントからもお声がけいただく機会が増えてきました。現在は、今年2月からサイバーエージェントグループのキャラクターレーベル「dot Label」とご一緒しながら、キャラクターの展開にも取り組んでいます。

―お仕事が重なったときは、どんな基準で優先順位をつけたり、選んだりされていますか?

山田yum:自分が本当にやりたいと思えるかどうかが一番の基準になっています。あとは、誠実に向き合ってくださる方かどうか、というところも大事にしていますね。

―クリエイターとして活動する上で、不安はありましたか?

山田yum:漠然とした不安は常にあるんですけど、やはり波はあると思うんですよね。
特にSNSはわかりやすくて、見られるときと見られないとき、フォロワーが増えるとき増えないときがどうしてもあるので、気持ち的にもモチベーション的にも左右されてしまいがちです。
でも、人生もよくよく考えてみれば、波の連続だし、まあいっか、という感じで捉えるようにしています。

私にとって、絵を描くことは、人生の7割くらいだと思っているので、いろんな形に変化しつつ、表現できる環境を、今後も作っていけたらいいなと思っています。

SNSの数字より、個人的な価値観から生まれるクリエイティブを

―SNSの数字との向き合い方を教えてください。

山田yum:これは私も最近ずっと悩んでいることの1つで、答えを出すことは難しいなと思うんですけど、絵って、そもそもSNSのために描くものではないですし、個人の価値観の中でこそクリエイティブが生まれると思うんです。
だから、SNSの数字が全ての答えではないと思っていますし、SNSに届けるために絵を描くのは、私の中では何か違うなと思っていて。

もし、すごくバズりそうなテンプレートがあったとして、それを使おうとしてしまうと、自分の作品ではなく、SNSのための作品になってしまうので、自分がやりたいこと、個人的なものとは別物になってしまうなと。
自分の価値観の中で生まれたものを作品にして、それを見た人が何かを見いだしてくれる方が、自分のスタイルに合っているんだろうと思っています。
そのバランスを取りながら、近すぎず、離れすぎない距離感でSNSと付き合うようにしています。

近年、大きい表現の場がSNSになっている以上、「SNSが全て」だと思いがちだと思うんですけど、実際に暮らしてみると、SNSで日の目を見られていなくても、すごく胸を打つ作品ってたくさんあると思っていて。
SNSはあくまで手段にすぎなくて、実際に一番大事なのは、他人にとって印象に残ったり、胸を打つものを作ること。それを心がけているのかなと思います。

―お仕事にしていて良かったことと、大変なことを教えてください。

山田yum:良かったことは、絵を描けば描くほど、見てくださる方が喜んでくださるということですね。小学生の頃、落書きをしていると、周りのクラスメイトに「なんで落書きしてるんだ、やめろ」と、からかわれたりすることもあったんですけど、落書きしまくって描きまくっているほど、今はみんなが喜んでくれる。それが本当に嬉しくて、そんな環境に居れる現状に、良かったなと思います。

大変なことは、他の人に見られる前提で描くということですね。自分の中の基準と、相手が求めるもの、いわゆる一般的なイラストレーションの技術の水準まで自分が達していないな、と思う瞬間が多くあるので、それを改善するためにちゃんと努力したり、勉強しなきゃとか、自分の好きなもの以外の分野での求められる基準を、自分の中にインプットすることは大変かなと思います。

インプットは、SNSも、もちろん見るんですけど、それだけではなくて、自分から遠い立ち位置にあるジャンルのイラスト本やデザイン本を見て、なぜこういう絵が求められるんだろう、こういうところがいいな、私にはないな、と分析したりもしています。あとは、色々な本屋さんや雑貨屋さんに足を運んで、こういうの好きだな、欲しいな、と思うものを探したりしています。

お出かけも大好きで、美術館や博物館、水族館などによく行きます。
出かけたときに見たものって、そのときは特に何も感じなくても、家に帰ってから妙に印象に残っていたり、次の日にじわじわと感動や余韻が蘇ってくることがあって。そういう感覚は外に出ないとなかなか得られないなと思っていて、そういう刺激を求めていつも出かけている感じがします。水族館は特に好きで、夜まで開いているところも多いので、用事が終わった後にふらっと行けるのもいいところです。

―最後に、今後の目標や展望を教えてください。

山田yum:いろんなものを描いて、いろんな表現を自分の中で見つけて、自分の暮らしだけじゃなくて、他の人の暮らしも豊かにするようなものが作れたらいいなと思います。

 

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■山田yumプロフィール

オリジナルキャラクター「やむねこちゃん」を中心に、気ままでユーモラスな世界を描くアーティスト。

絵画やイラスト、個性豊かなキャラクターたちが登場する漫画(@yumyumyamq2)を制作し、近年はキャンバス・油彩による作品も発表。グループ展への参加や、自ら企画する「もちもち・コンプレックス」、COMITIAへの出展など、精力的に作品を発表している。

さらに、作詞・作曲・編曲・打ち込み・歌唱まで自ら手がける音楽活動など、ジャンルを横断して表現。ポップな可愛さやメランコリックなダークな表現など、少し不思議な余韻が共存する独自の世界観は海外からの反響も大きく、国内外にファンを広げている。

「やむねこちゃん」の人気ぬいぐるみは、今回の合同POPUPを機にリニューアルして販売を開始。原画や作品、オリジナルグッズとともに展開し、開催にあわせてオンラインストアもオープン予定。

 

公式X:@yumyumyamq(https://x.com/yumyumyamq

公式Instagram:@yumyumyamq(https://www.instagram.com/yumyumyamq/

 

■合同ポップアップ概要

『NERDOG・もみにん・山田yum 合同POPUP』@銀座 蔦屋書店 ※入場無料

・期間:2026年9月11日(金)~9月23日(水・祝)

・営業時間:11:00~21:00

・会場:銀座 蔦屋書店 ART IN CABINET

・住所:〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F 銀座 蔦屋書店

・特設ページ:https://www.acgateway.com/ex_nmypopup/

 

■山田yum オンラインストア

http://yamadayum-onlinestore.com

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