その時その時の気持ちに寄り添う、心の拠り所
―現在の活動内容について教えてください。
うら:主に透明水彩を使って『月の箱庭』という自創作を描いています。
『月の箱庭』は月が出ている時にだけ現れる妖精の世界で、そこに住むケット・シー(ケルト伝承の猫の妖精や、それらをモチーフとした妖精)を中心に箱庭の世界を描いています。
展示会に出展し原画を展示・販売したり、コミティアなどの対面イベントで作品集やグッズを販売しています。

―では、現在の活動をしようと決心したきっかけを教えてください。
うら:以前はゲーム会社でデザイナーとして働いていましたが、振り返ると仕事をこなすことで精一杯で目標もはっきりしておらず…苦い思い出になっています。
その後展示会に参加するようになって、そこで初めて自分の考えたオリジナル作品を手に取っていただく機会が生まれたんです。
そこから徐々に自分の表現したい世界が明確になり、それが心の拠り所になって現在に至ります。
―なるほど。ちなみに、初めて展示会に出られたのは、いつ頃だったのでしょうか。
うら:2015年くらいだったと思います。
18年くらいまではコンスタントに活動していましたが、その後は環境の変化もあり年に数枚しか描かない時期がありました。今のような制作ペースになったのは昨年の秋頃からですね。

―ありがとうございます。ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?
うら:本当に、気づいたら、という感じですね。
元々、猫や妖精、ラベンダー色や月、夜と言った、自分の好きなものを描くことが多かったんです。
そして最初は、きちんとお話があるものを描こうと思っていたんですよ。
でも描いているうちに、私の場合は自分のその時の気持ちに寄り添ったものしか描けないな…と気付きました。
それで自分にとって心地良いものを描いていたら『月の箱庭』という世界と、そこに住むキャラクター達が自然に動いてくれたというか、本当にいてくれる、イマジナリーフレンドみたいな存在になったんです。
最近はこの世界に癒されたと言ってくださる方も増えてきて、なんだか仲間ができたようで嬉しいです。
安心できる場所を作りたい、という想いが形になっていった世界ですね。
自分を大切にしてくれるからこそ、自分も大切にして守りたい世界
―作品制作にあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。
うら:自分の創作世界と、そこに生きている子達を一番大切にしています。
最近、作品構成を練っていた時に感じたのですが…描いていると、気づかない内に心の暗いところにフォーカスが当たって、ちょっと苦しい絵になってしまうことがありました。
もちろん、そういった作品が悪いわけではありませんし、個人的にもそういう作品は好きなのですが、月の箱庭は自分にとっても見てくださる方にとっても、安心できる場所であって欲しい…苦しい気持ちになるものとは違うな、と思ったんです。
何より、月の箱庭に存在しているキャラクター達が安心できる場所であって欲しいな、と思っているんです。
私にとって自分の創作の世界は、本当に自分を大切にしてくれる存在なので、だからこそ私も同じように箱庭の世界を大切にしたいですし、守ってあげたい気持ちがあるんです。
なので、月の箱庭の世界とキャラクター達を、一番大切にしたいと考えています。

―影響を受けたクリエイターさんなどはいらっしゃいますか?
うら:幼い頃に買ってもらった『ピーターラビット』の絵本の影響は大きかったなあと思います。
動物が洋服を着て、ベッドで寝ていたりとか、テーブルでご飯を食べて人間のように暮らしている様子とか…。そういう世界が好きになったのは、ピーターラビットが原点かなと思います。
ファンタジーが好きになったのは、FFやテイルズといったゲームがきっかけだと思います。
ファンタジー世界の衣装や暮らし、家の中などに置かれているアイテムに惹かれて、自分もそういうものが描きたいと思いました。
―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?
うら:たくさん作品を見て目を肥やし、引き出しを増やすことですかね。
昔はpixivでオリジナル作品を見たり、イベントで作品集を手に取って眺める時間がとても楽しかったです。
その中で、自然と自分の好きな世界感や表現方法が広がっていったと思います。
それと私の場合は、1つの作品にじっくり向き合うことも大事だなと感じています。
描いていて違和感を覚えることが多々ありますが、そう感じたら妥協せず納得できるところまで持っていく。
自分にしかわからないこだわりかもしれないのですが、そのこだわりがクオリティアップはもちろん、作品の個性に繋がっていくんじゃないかなと思います。
音楽なども含めて、1つの空間を月の箱庭の世界で満たしてみたい
―現在は、どのようにお仕事を取っているのでしょうか。
うら:現在はSNSで作品を見てくださった方が、ご自身の活動に使いたいという理由でご依頼をいただいています。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?
うら:作風に関する不安はありますね。
最近になって気づいたのですが、私は他の方から見たら猫を描いている人、じゃないですか。でも、自分では動物を描いているという意識はなくて…。
なので活動場所に対してあまり不思議には思っていなかったのですけど…
最近展示やイベントに出展した際、自分の作品が浮いているように感じてしまったんですね。
「あれ。なんか私だけ猫描いてない?」みたいな。
とはいえ、自分は今のところこれしか描きたいものがないので…今後はより自分に合う活動場所を探してみたいなと思います。
でも逆に、今は浮いてしまっているかもしれないけれど、描き続けていたらこれが強みになるんじゃないかとも思ったりして。
その辺りが、現在抱えている不安であり、模索中の部分でもあります。
―ありがとうございます。では、今の活動をしていて良かったと思うこと、大変なことをそれぞれ教えてください。
うら:大変なことは、なかなかスケジュール通りに進行できないな、というところですね。
すぐにアイディアが浮かんで描ける時もあれば、そうでない時も結構ありまして。
なかなか出ない時は、作品の構成を練るうちに自分の内面に深く潜っていくことも多いものですから、どうしても気持ち的に浮き沈みが生じてしまうんですよ。
なので、作家活動から日常に戻らないといけない時の切り替えが大変だな、と感じます。
それでも、やっぱり自分だけの世界に出会えたことは、本当に良かったなと思いますね。

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。
うら:今後の目標としては、個展をしてみたいなと思っています。
音楽もご依頼して、1つの空間を月の箱庭の世界で満たしてみたいですね。
それから、定期的に作品集を作っていきたいとも思っています。
私の作品集は絵と一緒に、お話や作品構成の際に浮かんだ言葉も載せていまして…。
今年は8年ぶりに本を作ったのですが、過去の作品を載せるため昔のノートを見返していた時に、殴り書きで残されていた言葉をたくさん見つけました。
それらは何年も昔に書いたものですが、今も色褪せないまま、自分にとってすごく共感できる言葉や気持ちばかりだったんですよね。
それを見た時に改めて、この世界は自分にとって救いになるものだなと再認識できたんです。
なので、これからもそういったものを自分のために残していきたいな、と。そういった意味で、これからも作品集を作っていきたいなと考えています。

