「紆余曲折を経て、見つけ出した夢」亀ヰリヨウさん(前編)

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紆余曲折を経て、見つけ出した夢

―現在のクリエイターとしての主な活動を教えてください。

亀ヰリヨウ:肩書としては、漫画家を名乗らせていただいております。

ちょうど昨年に「マジックザギャザリング」というカードゲームのプロモーション用の漫画の企画をいただき、描かせていただいたのが漫画家としてのデビュー作です。それがきっかけで、現在はカードゲームのイラストなどを描かせていただいております。

―フリーで活動されてから何年くらいですか?

亀ヰリヨウ:どこからが漫画家かという定義付けが難しいですが、自分の作品で漫画家としてデビューしたっていう意味では昨年からです。それまでは、専門学校を出てから週刊連載の雑誌のアシスタントをさせていただいてっていう感じです。

―週刊誌のアシスタントって大変そうですね。

亀ヰリヨウ:僕がお世話になってた先生はすごく真面目な先生で締め切りに遅れるとか一切なかったので、現場としては結構楽な現場だったと思います。

―布団を持ち込んで徹夜で作業するようなイメージでした。

亀ヰリヨウ:今は結構減ってはいると思うんですけど、そういう現場もありますね。

―なくはないんですね(笑) そういうアシスタント活動をデビュー前にされていたと思いますが、漫画家を目指すようになったきっかけはありますか?

亀ヰリヨウ:僕の場合、漫画家を目指すまでの遍歴が変則的なのですが、もともと漫画がすごく好きだったっていうのがあります。親に聞いてみたら絵とかも小さい頃からよく描いてたみたいで、学生の頃とかも美術の授業が一番好きでした。

漫画を好きになったのは、小学校5年生ぐらいの時です。インフルエンザで寝込んでて、1週間学校に行けなくなる期間があるじゃないですか。でも子供だったんで2、3日ですぐに元気になって、あと3日ぐらい暇だなっていうタイミングで、近所のめちゃくちゃオタクな郵便局員のお兄さんが袋にいっぱいいっぱいの漫画をドサッと持ってきてくれたんですよ。ちなみにその漫画は、「寄生獣」と「王ドロボウJING」だったんですよ。

―ボリュームある作品ですね(笑)

亀ヰリヨウ:そうですよね。

小学生に持ってくるタイトルではないんですけど(笑)

やっぱそれまでずっとコロコロコミックとか子ども向けの漫画を読んでいたところに、そういったものを持ってきてもらったので衝撃が走って。こんな漫画ってあるんだみたいな。それから、漠然とやっぱ漫画ってすごいなっていうところから、漫画家になりたいなとは思ってたんです。

でも実際に漫画家を目指し始めたのは、実は24歳。小学生の頃に絵とかを描いてて親に見せるじゃないですか。その時に漫画家になりたいみたいなことを言ったら、すごい何気ない一言で、「いやこんな絵じゃ漫画家って難しいんじゃない」みたいなことを母親に言われたんですね。それで「なるほどそうなんだ、漫画家ってなるの難しいんだ」ってスッと入ってきたんですよ。そこから漫画は好きでずっと読んでたんですけど、漫画家になりたいっていう思いはしばらくなくて。ただ昔から絵を描いたりとか物を作ったりするのがすごく好きで、中学高校とかに上がってくると、服飾とかアクセサリーとかを好きになったので、大学は京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)に行ってファッションデザインを専攻していました。

大学ではもちろん服を作っていたのですが、だんだんと立体制作にもすごく興味が出てきたので、在学中に粘土造形を始めて(笑)

粘土でいわゆるビスクドールという西洋の人形や、それに着せる服を作ってました。学生のときからその立体作品をグループ展や展示会へ出したりしてたので、卒業してからとかも、何となく作家みたいな形では、活動していきたいなと思っていて。でも、卒業後に人形作家って作家としてやっていくってなったときに、「あれ、これ一生食えるのかな」みたいな不安があったり、どういった形で自分が活躍していくかというビジョンがあまり見えなかったんですね。

―活躍していくビジョンが見えないと難しいですね。

亀ヰリヨウ:改めて大学を卒業したタイミングで、僕が今後30年40年間仕事をしていくってなって何がしたかったのかなって考えたときに、やっぱ昔から好きだった漫画に1回挑戦してみたいなって思ったんすよ。

やらずに50歳60歳になってやっときゃよかったなって思うのが一番悔しいなと思ったので。今からでもいいから漫画を描こうと思って、24歳のときに漫画の専門学校に入りなおしたんです。卒業したのが26歳だからかなりスタートは遅かったかなとは思うのですが、そこから漫画家を目指して、今っていう形にはなってます。

バランシングする2つの感覚

―現在は漫画家として活動されていますが、絵、立体、漫画とさまざまなクリエイションを行うにあたって何か共通点ってありますか?

亀ヰリヨウ:基本的には何かを自分で考えて生み出すっていうプロセスは全て一緒だなと思っていて。漫画家になるまでの道のりはかなり遠回りして来たなっていうのは事実としてあるんですけど、漫画って今までの全ての経験を包括して作品を作ることができるので、その回り回ったものが全部無駄にならずに生かされてるなっていうのをすごく実感しています。

―なるほど。そういった豊富なご経験の中で、漫画家さんとして活動して良かったことを教えてください。

亀ヰリヨウ:漫画家として活動した経験年数がすごく短いので、具体的に漫画家としてやって良かったということに直結するかわからないんですけど…制作をしていて、そもそもアーティストとデザイナーってちょっと違うと思うんですけど、僕はどっちかというとデザイナー側だと思っていて。漫画もイラストもそうなんですが、クライアント様から依頼が来たりとか、あとはお客様に向けて何かを作るっていうところがやっぱ根本的に違っていて。自分の表現したいものと先方からのオーダーのバランスを模索して、それがうまくはまった瞬間ってすごく気持ちがいいんですね。やっぱりそういった時って作品に対するお客様やクライアント様の評価も良かったりするので、やっててすごく良かったなって実感します。

―アーティストじゃなくてデザイナーであると認識されているとのことですが、それはお仕事の内容がデザイナー的であるのか、もともと持っている性質がデザイナー向きなのかどちらなのでしょう?

亀ヰリヨウ:どっちの面もあるんですよ。個人的に生来の気質はアーティスト寄りの人間なのかなとは思うんですけど、純粋なアーティストさんのように自分の中から生み出したものを爆発的に広げていって作品を作っていくタイプではなくて。クライアント様などからのアイディアとソースに付随させて、自分ならどう表現できるだろうって転嫁させる方が制作スタイルとしては得意かなっていうのがあります。

というのも、自分の中って空っぽだと思ってるんですよ。だからこそ好きなものがいっぱいあって、その虚無を埋めるために何か集めたり、好きなことに手を出したりするのかなって。だからこそ、制作としてはデザイナー的なアプローチが得意だったり好きだったりすると思うんですけど、生来の気質は好き勝手やってるほうが好きなタイプなんだと思います。

―ありがとうございます。ご経歴とかお聞きしてると、アーティストさんぽいなと思ったんです。なので、どのようにご自身の中でバランスを取られてるのかが疑問になって。

亀ヰリヨウ:そこのバランスは自分でも結構難しいと思っていて(笑)

―何か自己主張したいけど、でもクライアントさんがいるとそれができないじゃないですか。

亀ヰリヨウ:そうですね、現在お仕事をさせていただいてる、先ほど言ったマジックザギャザリングっていうカードゲームは、大元がアメリカの会社なんですね。マジックザギャザリングを運営されてる企業さんって良い意味でアーティストを主体に考えてくださってる会社で。一応、キャラクターのオーダーは来るんですが、そっから枠を取り払って好きに自由に表現させていただけてたりするので、オーダーをこなしつつ、どうやってそれをぶっ壊すかみたいなところを今は楽しんでやらせていただいています。なので仕事のバランスとしては今、最高にちょうどいいですね。

後編へつづく

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