「漫画家として目指す場所」亀ヰリヨウさん(後編)

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空っぽな自分から生まれるもの

―制作するにあたって苦労されてることってありますか?

亀ヰリヨウ:製作スピードが圧倒的に遅いということぐらいですかね。

―やっぱそれはこだわって気になっちゃうからでしょうか。

亀ヰリヨウ:そうですね。プロの作家さん皆さんそうだと思うんですけど、お仕事として作品を世に出すっていう意味で、やっぱり自分が出したものには責任を取らなきゃいけないなっていう。締切時間までギリギリまで粘っちゃいますね(笑)

―そのギリギリまでっていうのは、もっと作品を完璧に作りたいとかいう気持ちとはまた違う感じですか。

亀ヰリヨウ:完璧にっていうよりかは、ここをもっとこうしたら良くなるんじゃないかということを試してみたいっていう方が近いです。

―試してみたら良くなるかもしれない…。例えば、良くなるかもしれないって描いても、結果ダメで元に戻すということもよくありますか?

亀ヰリヨウ:全然あります。毎回、企業さんからの依頼に対して一番良い表現方法って何だろうみたいなところから結構考えちゃうので。僕の場合、各作品で絵の描き方とかテイストが全部違って、あんまり自分の絵柄に対するこだわりがないっていうか、絶対的なものって自分の絵の中にないんですよね。よりよくしていくために自分の絵を壊すってこともあります。

―さっきお聞きした、ご自身の空っぽな部分というフレーズもこだわりがないところにつながるのかなと思いました。

亀ヰリヨウ:そうですね。だから自分にも、絵に対しても自信は一切ないんですよ。ただそれは相対的に見たときに自信がないのであって、今の自分ができるものを100%120%を出して、限界で仕上げた絵であるっていう意味では自信はあるので責任を持って提出はするんですけど…出した後の自信は全くないんです。そういった意味で、自分の絵に対するこだわりって多分ないんです。良くなっていくのであれば、良い方向に制作していきたいなっていうのがあるので。

―少し意地悪な質問かもしれないんですが、それを提出する時って怖くないですか。

亀ヰリヨウ:怖いです怖いです。出すときめちゃめちゃ怖いです。不安しかない。

―でも、今いろんなお仕事をされてるっていうことは認められてるってことですよね。

亀ヰリヨウ:だから最初にそのお仕事をいただいて良い反応が返ってきた時、すごくほっとしたし、嬉しかったです。それがあるから今も続けさせてもらってるんだなっていうのはあります。

―それが直接のユーザーさんなのか、それとも企業さんなのかは別として、少なくとも納品した方への答えみたいなことで安心していく感じなんですかね。

亀ヰリヨウ:そうですね。あとはやっぱりカードゲームっていう商品になるものなので、Twitterとかで商品情報とか出たときに皆さんの反応を見たりして、よかったとか、もうちょっとここをこうした方が良かったんだなみたいな反省をしています。

漫画家というアイデンティティ

―ありがとうございます。作品を作る上で大事にされてらっしゃることってありますか。

亀ヰリヨウ:今までの話とつながってくるんですけど、カードイラストの仕事をいただいている中で、「自分は漫画家だ」っていうところを一つの軸にして制作している面があって。他のカードはイラストレーターさんが描かれたものが多いのですが、僕は漫画的な絵の描き方をしているので、そのまま漫画的な手法に重きを置いていきたいとは考えてはいますね。

―具体的に、亀ヰさんの中でイラストレーターさんと漫画家さんの描かれる絵の大きな違いはどういったところでしょうか。

亀ヰリヨウ:技術的な話で言うと、純粋に線で描くか塗りで描くかみたいな違いが一番大きいかなと思いますね。僕は気持ちいい線を描くのが好きなので、線画主体のイラストを描くことがかなり多いです。

―今後、作風に関しては、変わってもいいと思われているのでしょうか?

亀ヰリヨウ:むしろ変わっていきたいと思ってます。より良い方向に行きたい。

今は自分の中の軸があんまりないので、その漫画的な表現をアイデンティティにしてるっていうところではあると思うんですけど。今後その作家としてどうなっていきたいかっていう話であれば、漫画的な表現とかイラスト的な表現、アイデンティティとかくくり、全て包括して亀ヰリヨウっていう作家の絵に昇華していければ最高だと思います。

―亀ヰさんは現在のご自身の絵に対してこだわりがないということですが、亀ヰさんにとってのより良い方向ってどのようなものでしょうか。

亀ヰリヨウ:僕はあんまり分析型ではなくて、直感的に「あ、好き」みたいなものを感じて、大切にするタイプなんです。この世の中に存在するものの全てが自分の中で心地いいもの・そうでもないものっていう2つなんですよ。なので、自分の作品を僕の中での「心地良いもの」にしていければ最高だなと思います。

―すてきです。より良いものって人などの評価というよりかは、むしろご自身が心地いいという感覚の方が結構大きいと。

亀ヰリヨウ:そうですね。ただやっぱりそれってアーティスト寄りの思考なんですよ(笑)だからそこがね結構自分の中でも二律背反なところで(笑)

今後の展望

―今後の展望や予定があれば教えてください。

亀ヰリヨウ:一つは商業誌ないしはどっかしらで連載作品を持って、漫画家としての活動をしていきたいです。あとは、リアルでファンの方と交流できる機会を増やしていければいいかなっていうのも思っています。

というのも現在カードゲーム関連の仕事をさせていただいてるので、イベントとかにも呼んでいただくことが多くて。その機会を通じて、他の方から感想をいただけることの貴重さに気がつきました。

―ただ何か作品を作られるわけではなく、他の方のご意見やコミュニケーションなども大事にしているってことですよね。

亀ヰリヨウ:そうですね。人と話すの好きだし外に出て行くのも好きなんですよ。楽しいことしかしたくないですね。

―でもその考え方はアーティスト寄りですよね(笑)

亀ヰリヨウ:そうなんですよ(笑)どこでこんな捻くれたんだろうと思うんですけど。

―ありがとうございます。最後にファンの方へ一言いただいてもよろしいでしょうか?

亀ヰリヨウ:やっぱり自分にファンがいないっていう前提で僕はいるので、この質問は難しいですね(笑)

さっきから言わせてもらってたように、作風が変わっていくっていうのが活動を続けていく限り続いていくと思うんですけど、そんな中でも僕が作る作品とかを楽しんでいただければ大変ありがたいなと思っております。

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