「実際にあるものを、あるがまま素直に切り取ることに助けられた」スーさん

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創作活動を再開できたのは、コミティアのお陰

―現在の活動内容について教えてください。

スー:現在は東京と関西、名古屋のコミティアを中心に、イベント出展しているのが主な活動となります。
あとはX(旧Twitter)やInstagram、BlueskyなどのSNSを中心に絵を発表しています。

―イラストレーターとして活動しようと決心したきっかけを教えてください。

スー:私は 2023年5月の関西コミティア出展から活動を始めたのですけれど…
それ以前に、昔から絵を描くのが好きだったり、学んだりしていたので、いろんな形で何かしら絵に関わっていたいなとは思っていました。
でも、社会人となってからは、やはり絵を描く時間を取ることがかなり難しくなってしまい、活動や発表の場からは長く離れていたんです。
それこそ趣味では描いていましたし、なるべく腕が鈍らないようにはしていましたが、人に見てもらう、ということがなかったんですよ。

でも、やっぱり見てもらう機会を作らなければ今後描かなくなってしまうな、と思ったところで、コミティアの存在を知りました。
それで、出展の日にちに合わせて絵を描けば、人様に見ていただける機会が作れるんじゃないか、と考えて活動を始めた感じです。
なので、社会人生活の中で揉まれながらも上手く時間を作れるようになったのは、コミティアのお陰みたいなところがありますね。
そこから今ちょうど2年ほどが経って、コンスタントに出す、ということが上手くできるようになってきました。

活動そのもののきっかけとしては…そうですね。
自分の作品を発表する機会を作る、絵を描く楽しみを作る、という部分が、恐らく大きいのではないかなと思います。

―ちなみに学生時代は、美術系の学校に通っておられたのでしょうか?

スー:そうですね。
多摩美術大学にご縁をいただけて…そこで日本画を4年間学ばせていただくことになりました。

―なるほど。では、ご自身の作品スタイルや方向性については、どのように決められましたか?

スー:元々、漫画や児童文学系の挿絵などが好きでした。わかりやすいところで言うと、人物キャラクターや、アイコンになるような絵ですね。
なので、そういった絵を描いていた時期もありました。

ですが、逆に思い入れが強い分、好きだという気持ちが先行しすぎて、画面を最後まで上手く制御できずに終わる、ということが結構あったんです。
だからこそ、しばらく絵の発表から離れていた間に、どういったモチーフならもっと冷静になれるかなとたくさん考えました。
結果、自分の身近にあるものなど、何げないもの、観察していられるものを描くことを試してみたのが始まりです。
自分の頭の中の想像や、資料をかき集める、ということもすごく大切だと思うのですけど、私の場合は、観察や描写を練習させてもらった期間がありますから、そういった下地を活かせないか、と。
それに、『キャラクター』や『アイコンになるもの』に想いが強く向かう一方、「実際にあるものを、あるがまま素直に切り取ることも重要だな」と、自分の中でスッと納得して描くことができたのも、大きいと思います。すごく冷静に描いた上で完成まで持っていく、ということが自然にできたんですよ。

なので「じゃあ、これを続けてみよう」と、コミティアに向けての作品に取り掛かったのが、今の作風になったきっかけですね。

光の当たり方ひとつで、見え方が違ってくる

―作品を描くにあたって大切にしていること、意識していることがあれば教えてください。

スー:『実在感とデフォルメのバランス』は、気をつけるようにしています。

それから、とにかく光が綺麗に見えるように、そのための演出や脚色もある程度はしますね。
とはいえ、やっぱり実際にある状況が一番綺麗なことが多いので、そういったものの取りこぼしがないよう、落ち着いて観察することも大切にしています。

あとは、光の中に出てくる陰影というか、質の差などを綺麗に見えるようにできればいいかな、と。
同じような物質が存在しても、光の当たり方ひとつで見え方が全然違ったり、あるいは、違うように描いたほうがリアルに見えたり、ということがありますよね。
それらが、ひとつの画面の中で綺麗に淀みなく完結するように、見る人が違和感を抱かないように、しっかり観察して見比べて描く、ということを心がけています。

―なるほど。ライティングにとても気を遣っておられるのですね。

スー:活動を始めて1年ほど経ってからは、すごく気をつけるようになりましたね。
特に最近は、そのほうがよく描けるというか、画面に無理なくみどころを作ることができるように感じます。

―ありがとうございます。では、影響を受けたクリエイターさんはいらっしゃいますか? 

スー:幼少期の頃かららくがきなどが好きな子供でしたが、絵をきちんと続けようと思ったきっかけとなったのは、挿絵画家の佐竹美保さんです。
いろいろ描けるようになりたいとか、描けないものを無くしたい、と思ったきっかけになった方なんですよ。

児童文学の挿絵って、実在するものも、実際に見たことのないものも、色々描かなくてはいけないと思うのですけど…
子供の頃、このお二人の描かれている様々な作品を見て、「描けないものはないんだろうな」と感じたんです。
だからこそ、そういった存在になってみたいなと思ったのが、始まりでしたね。
私自身が日本画専攻を選んだことにも、すごく影響していると思います。
まず見たまま描くことをできるようになってから、次に自分の好きなものを描く、という段階を踏むのが良いんじゃないかなと考えたのも、そこからきています。
今の画風には出ていないかと思いますが、お二人の存在はすごく大きいです。
本当に素敵だなと今も変わらず思います。

―画力や作品のクオリティを上げるために意識していること、おすすめの方法などはありますか?

スー:私自身、大学を卒業してからも、描写の難しさと面白さは助けになっていたので、やっぱり『物を見て描く』というのは、おすすめかなと思います。
それが大きな石膏像だったりする必要もなく、食べ物やペットのような身近なものでも、景色のような大きなものでも、、何でも。とにかく、自分が実際に見たものを画面に落とし込んでみることは、どんな規模でもどんな画材でも良いので、やり続けたら面白いかなと思いますね。そのときに正確である必要も特にないかなと思います。

あとは限られた時間でここまでの仕事をやる、という段階を組み立てて、その時々で進捗を確かめ続けるとか。ずっと描きっぱなしではなく、物理的に離れて絵を見てみるとか。

あとは、クオリティを上げるため、自分自身が冷静になるためにも、絵を描き終わった後、数時間から数日ほど時間を空けてから見る、というのは今も大事にしています。

クオリティの保証できる作品を描き続けて、筆を折らずにいたい

―現在は、クライアントワークを受けていらっしゃるのでしょうか?

スー:実は、少し前まで仕事が忙しすぎて…何件かご相談をいただいたのですけど、お断りせざるを得なかったんです。
今は生活のリズムが少し変わりましたから、これからご縁があれば、改めて受けさせていただきたいなと思っているところです。

―クリエイターとして活動する上で、不安などはありましたか?

スー:一番は、締め切りですね。
自主活動ではありますが、東京か関西、季節の中で早いほうのコミティアに新刊を出していましたから、それに間に合うように取材して構成を決めて、そこから絵を描く作業をしているので…
とにかく時間が取れるか取れないか、という部分が大きいです。
対処法としては、時間に追い詰められないようにできる作業からやるとか、iPadですべての作業をしていますから、なるべく持ち歩いて空き時間に作業をする、などしていますね。

逆に精神面に関してはもう、これまで過ごした『絵をあまり描けず発表できない期間』『制作する上で芯に当たっていなかった期間』が、6~7年ほどとあまりにも長すぎたので…

正直、今は「身近にあるものを描く」だとか「好きなものを見て描く」という、表現としては『第一歩』に当たるような方向性でも発表して良いんだ、というところに落ち着いていますので、メンタルが落ちきって不安になる、とかはあまりありません。
「コミティア最高!ありがとうございます!」みたいな感じで、過ごしています。

―ありがとうございます。では、活動していて良かったことを教えてください。

スー:家族や友人などに、「こういうことをやっているよ」「なんとか生きています」と言えることですね。
あとは、私が今まで知らなかった方や出会わなかった方とお話しができたり、逆に一方的に知っていた素敵な作品を描かれる方とお話しをする機会ができたり、という、人と出会える機会が増えたのも、すごく嬉しく思います。

―逆に、大変なことはありますか?

スー:働いている合間に描いていると、やっぱり時間を取れないことがあるので、ジレンマは感じますね。

調子が良い時であれば、平日仕事から帰った後、用事をすべて済ませてから、寝るまでの2~3時間は絵を描く、ということをしていますが…
出来ない日もありますので、難しいですね。
土日は基本的にコミティアに向けて作業していますし、GWや正月休みなどの長期休暇も、取材と制作に充てています。
とはいえ、遊びのお誘いをいただければなるべく行くようにもしていますね。

―それでは最後に、今後の目標や展望を教えてください。

スー:健康第一に、今やっていることを続けていく、というのがまず一番ですね。
少しペースを落とすことになっても良いので、クオリティの保証できる作品を、コミティアへの出展とSNSでコンスタントに発表して、活動を続けていきたいです。
絵の発表を止めていた期間もあるからこそ、なるべく長く描いていけるように、メンタルとフィジカルを整えていきたいなと思います。
筆を折らないことが目標です。

それから、コミティア以外にも、クリエイターズマーケットも昨年出させていただきましたし、まだ出たことのないイベントなどにも出展を増やしていけたら嬉しいです。

あとは、この活動を始める前は透明水彩を使っていた時期が長いので、アナログ面でもお仕事や創作ができれば嬉しいですね。

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